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星と風と海流の民#30/ミランコビッチ・サイクル

最終氷期が終わったのは1万2000年ほど前だった。氷期の終了で、地球全体が温暖化にした。氷床は後退し、海面が上昇した。動植物の分布が変わり、多様な生態系が生まれた。現在は"完新世Holocene"と呼ばれる間氷期にある。
そしてヒトだ。地球の温暖化はヒトに農業の機会を与え、ヒトの数を増やし、都市文明を育ませた。これを"人新世Anthropocene"と呼ぶ人がいる。地球の温暖化によって、ヒトらは膨大な恩恵を授かったわけである。

しかし・・何故、地球は寒暖を繰り返すのか?
セルビアの学者ミランコビッチは、地球の自転軸や公転軌道の変化が太陽からの日射量を変化させ、それが氷期の原因になると仮設した。1920年代である。
地球の自転軸は歳差運動と呼ばれる首振りのような動きをしている。この周期は約26,000年だと云われている。地球の公転軌道はだ円で、その長軸の向きが22,000年周期で変わる。太陽からの距離が数万キロ単位で変わるのだ。そのため、日射量は周期をもって変化する。変動幅は、23,000年と19,000年と云われている。
そして。地球の自転軸である。地軸は公転面に対して23.4°(現在)傾いている。この傾きは41,000年周期で22°から23.5°の間で変わる。この傾斜角の変動が、地域の天候に大きな変動をもたらすのだ。同時に、地球の公転軌道の離心率(だ円の度合い)も変動する。10万年と40万年の周期で0.005から0.0543の間で動く(現在の離心率は0.0167)。
こうした地球の周期的な"揺らぎ"が、気候に大きな影響を与え、氷期や間氷期を生み出すのだとミランコビッチは提唱した。

まだコンピュータが無かった時代だ。彼は膨大な計算を手作業で繰り返して、この仮説を立てだ。しかし彼の説を受け入れる傍証はなかった。彼の仮つ説は仮説のままで終わてしまった。
ところが、1970年代になって海洋底のボーリング調査が行われるようになると、そこで採取された有孔虫の化石から彼の仮説が傍証されたた。そしてこれに続く幾つもの発見が、半ば忘れされていたミランコビッチ・サイクル仮説を復活させたのである。
もちろん矛盾はある。ミランコビッチ・サイクルは氷河時代の中の氷期-間氷期という数万年~数十万年というスケールでは有効だが、大規模な氷河時代が訪れたり、また無氷河時代(極地方にも氷床がない時代)に戻ったりという変化の説明には有効でない。
こうした矛盾が現れる要因は、おそらく地球内部(火山活動、プレートテクトニクスなど)の活動。そして太陽そのものの特有な活動も大きな影響力を持っている。太陽活動が周期的に変わることによって、地球に到達する放射量に追加的な変動が原因ではないかと云われている。

その大きな地祇の蠕動の中でヒトはその羽を伸ばそうとしてきた。この一万年の人の進化はまさにヒトなるものの進化に神の見えらざる意図を僕は感じてならない。


無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました