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夫婦で歩くプロヴァンス歴史散歩#22/ジゴンダス#01

https://www.youtube.com/watch?v=LMXCHlD1TvM

朝食後、チェックは早めにした。お迎えのVTCはアヴィニョンでお願いした会社に予約してある。
Service VTC / TAXI Avignon +33767101263
http://assildriver-67.webselfsite.net/
予定より30分前に玄関前で待機してくれた。歩きながら買い込んだワインは、フロントにお願いしてヤマトワインダイレクトが到着時に手渡すようにお願いした。荷物が日本へ届くのは2週間後くらいだろう。慌ただしい出発になった。
https://www.yamatoeurope.com/japanese/index.htm
次の目的地はジゴンダスにあるオーベルジュLe Bistrot de l'Oustaletである。およそ30分くらいの時間だ。
「お昼までにホテルへ入りたいんだ。ランチの予約がしてある。そのまえに一か所寄り道がしたい。ダンテル・ド・モンミライユ山Dentelles de Montmirail(1936 D79, 84190 Gigondas)を見に行きたいんだ。徒歩で行くのは完全なハイキングコースになるからな。クルマで行けるとこまで行きたい」
http://www.gigondas-dm.fr/

クルマはD977を走るとラ・ベギュッドLa Bégudeで右折、ゆっくりと登りの道に入った。ジゴンダスの村を迂回する感じでバロレ通りをBarruol上がった。道はChateau de Saint Cosme(126 Rte des Florëts, 84190 Gigondas)の横を抜けた。
「あら!ここ!!来たこと有るわ」嫁さんが言った。 
「サンタ・コスメだよ。ルイ・バルオールLouis Barruolさんの畑だ」

「ええ憶えているわ。とても聡明な方だったわ。なぜグルナッシュを選ぶのかという話と土の話であなたと盛り上がっていた方ね」
「ダンテル・ド・モンミライユ山の陰で、この辺りは日照時間が短いんだ。だから葡萄は遅摘みになる。そのためにタンニンが多くなるんだ。そのキャラクターをきちんと活かせるのはグルナッシュだという話をしてた。それとギゴンダッシエン土壌Sol Gigondassienのことな。非常に特異な地質でね。地上に露出しているのはイタリアのバローロとジゴンダスだけだと云われてる。これはダンテル・ド・モンミライユ山のがけ崩れがこの辺り全体を覆っているためだそうだ。もともと深い地層名部部の土壌で、露出しているところは少ないんだけど、ダンテル・ド・モンミライユ山という隆起がソレをもたらしたんだろうな。
科学者でシャトー・ラパイユChâteau Raspailのオーナーだったウジェーヌ・ラスパイユがこんなことを書いてるよ。
『ジゴンダス地区の地形は、北西を中心とするカーブに沿って、西から北東に走る3つの主要な平行山脈から構成されている。これら3つの山脈の尾根は、ジュラ紀に属する灰色の石灰岩で構成されている。南側は、オックスフォード紀の黒色粘土で覆われている。北側の3本目のラインは、ネオコミア期下部の地形、ゴルト岩、緑色砂岩、クロライトチョークで覆われている。二つの中間渓谷(コル・ダルソー、ラ・ビュイシエール)は、もっぱら新オコーム紀下部の地形に属している。この2つ目の谷、ケイロン地区では、粘土質の泥灰土と青や黄色の石灰岩の土手が交互に見られる』と。
すべての要素はダンテル・ド・モンミライユ山Dentelles de Montmirailが産み出したんだ。今朝はそれを先ず見に行く」
「遠いの・」
「ここからはあまり遠くない。」https://www.youtube.com/watch?v=ZvpcSGUxLcE

クルマが登っていくとフロレ通りRte des Floretsはさらに狭くなった。舗装はされているが状態は良くない。少し行くと壁に囲まれたHôtel Les Florets(1243 Rte des Florëts, 84190 Gigondas)の横を抜けた。
https://www.hotel-lesflorets.com/
「最初、此処に泊ろうかとも思ったんだ。山の精霊を感じたくてね。でも村まで徒歩で行くのはムリだからやめた」
「安心したわ・・ときどきとんでもないこと言うから」
「ん~いまでも迷ってる」
少し先にDomaine des Florets(1467 Rte des Florëts, 84190 Gigondas)がある。
https://www.domainedesflorets.com/
予約はしていなかったが訪ねてみた。オーナーはJérôme Boudierという方だった。唐突にアジア人が訪ねた事で驚いたようだ。しかしドライバーが通訳をかって出てくれたので訪問は快諾してくれた。
畑は4ヘクタールだそうだ。海抜500メートル。ジゴンダスでも最高海抜だそうだ。もともと温泉を利用した療養所だったものをオーナーが買い取ってワイナリーにしたという。2007年とのこと。葡萄は樹齢50年を超えるものばかりでティスティングはGSMベースでとても良質だった。


1ケースほど買い求めた。
クルマに乘るともう少し走った。途中で二つに分かれる。ドライバーは右側に入った。おおきな駐車場/広場になった。
「ここがハイキングコースの始点です」ドライバーが言った。僕らはクルマを下りた。
「30分くらい歩きますね。待っていてください」僕が言うと、ドライバーが笑いながら頷いた。
僕らは少し林道の中を歩いた。切り立った崖の上にRocher du Midiが聳え立っていた。
「荒々しいほど剝き出しなのね」嫁さんが言った。
「欧州を隆起させた造山活動の一番底には地中海の亀裂がある。パンゲアの蠕動だ。太古海底だった欧州大陸はこの隆起で海上に浮き上がったんだよ。その痕跡が石灰岩土壌としてはっきりと残っているんだ」
「なるほどねぇ~それがフランスの色々なところで見られる。岩の塊のような山なのねぇ」
「ん。その奇岩の風景が神秘性を漂わせたんだろうな。多くの所に修道院/教会が建てられているよ。ピュイなどはその典型だ。
ジコンダスもあの「ダンテル・ド・モンミライユ」にインスパイアされた修道院が幾つか建立されている。テー今残っているのはノートルダム・デ・パリエールの礼拝堂とノートルダムドプレバヨン修道院の跡地だな。それと聖カタリナの教会だ」
「ルイ・バルオールさんのお父様が、自分の畑の中にあった聖コスムス&ダミアンの修道院を私財を費やして修復した話、憶えているわ」
「ん。聖コスムス&ダミアンは医者の兄弟だった。さっきのDomaine des FloretsのオーナーだったJérôme Boudierさんが言っていたこと憶えているだろ?あそこは温泉治療所だった。此処の辺りは古くから治療所として知られたんだよ」
「ふうん」
「Gigondasという村の名前だが、古名はJocunditasだった。つまりjoie allegresseだ。「大いなる喜び」だ。その名前の意味は理解できるな。すべてはダンテル・ド・モンミライユのもつ"大いなる気"の霊験だよ」
「なるほどねぇ」



無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました