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猫田による猫田のための、レンジ。

レンジでチンッて、
写メを送るとか、
フロッピーの保存マークとか、
下駄箱みたいな、
かつての人工物の焼け残り、
そんなものじゃないだろうか。

レンジがピーと電子音を鳴らして、
そして止まった。

最近のうちの電子レンジはもっぱら、
冷凍のご飯を温めるか、
昨日の残りおかずを温めるか、
冷凍の豚肉を解凍するか、
コーヒーかすを乾かすか。
大体そんなもんだ。

ああでも最近は、
飲み物を温めることも多い。
飲み物を温めだすと、
冬って感じがする。
自動販売機の「あったか~い」と。
同じようなことだ。

だいたい似たようなものばかり温めて、
そろそろレンジも飽きてこないだろうか。

気分転換に何か突飛なものを、
温めなくて良いだろうか。
例えば何かって…
ふと思いついたのはスプーンだったけど、
それではスプーンもレンジも私も、
皆悲しい思いをするからやめよう。

それじゃあ、お酒ならどうだろう。
ワンカップの日本酒はお気に召すだろうか。

それともカップケーキだろうか。
ねむようこさんの短編集の、
あの娘がきれいにした台所を、
すぐ汚してしまったお母さんのように、
突然カップケーキを作ろうか。

どちらにしてもきっと、
レンジと私にとって
win-winの事象になるに違いない。

ものは持ち主に似るという。
そういう話を聞いた覚えが、
うっすらと脳内に存在している。

果たしてこれが現実の記憶か、
はたまた夢の中の記憶か、
空想しただけの記憶か、
まったく思い出せないのが気がかりだが。

お酒も甘いものも好きな私。
お酒も甘いものも好きな私のレンジ。
だったらカップケーキも日本酒も、
気に入るに決まっているのだ。

今晩はあいにくレンジを使う予定はない。
予定はないが、
家に帰るまでの間に予定が、
生まれるかどうかまだ未定。

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