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「もちよ~る」〜食と実践知を持ち寄る学びの場づくり in石山緑地〜と地域ブランドのお話

今日の地域ブランド構築の授業内にてお話ししたので、先頃投稿したノートから「もちよ〜る」を取り上げて詳しく書きます。そして、その地域ブランドでのお話も最後に書いておきます。


事の発端はこちらに詳しく書いてありますので、併せてご覧ください。


「もちよ〜る」というのは、一人一品、テーマに沿って、その場で食べるといい感じの具材を考えて用意して持ち寄り、具をミックスして味わい、対話しながら、互いの個性やその場のという世界をみんなで理解し合う活動です。


以前には、八戸で「南部せんべいにのっけるorはさむトッピン具」をもちよることをしました。詳しくは横溝先生のログをご覧ください。

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予定では今度は厚真で春ごろに鍋をテーマにもちよ〜るをできたら…いいな…と企画中でございます。


そして、先日は、石山緑地を舞台に「パニーノ」をやってみましたが、これが、美味しかった。

一つのバゲットに、みんなで持ち寄った具が乗っかる。乗っかり合う。この未知数のコラボレーションが面白く、おいしい。そしてどんなものを掛け合わせても、おいしい。不思議。


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みんなで具を持ち寄るとき、特に打ち合わせはせずとも、いい感じにかぶらない。かぶらないからこそ、コラボレーションができる。この時点で、阿吽の呼吸ではないが、ある種の小さな社会が生まれているのかもしれないと思う。

そして、単純においしい。やはりおいしいものは豊かにしてくれると思う。発想力もそうだし、感受性も、人生の余白も、全てを豊かにするきっかけになりうると思う。


もちよ〜る


「もちよ〜る」の主宰である、横溝先生からの提案で、後日談ではあるがこのようにお話いただけた。


 石山緑地に行って、平べったくて丸い石の真ん中が部分的に磨かれているのをみて餃子の醤油皿みたいと誰かが言ったり、子供の頃のおにぎり選手権の話をしたり…。

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 ラボの学生は、フィールドワークの経験を語るなかに食の思い出や記憶の話がちらほら出ていた。これはすごいぞ!と思った。現場を頭で考えないで、胃袋で考えている。
 そこで、『もちよ~る』をやってみようと。

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 普段われわれの教育や仕事の現場は、ゴールを決めてから工程を考え、工程通り進めることを優先しますね。
 しかし、それだと未知の状況にやってみてわかることを繰り返す活動が生まれにくいので、そんなこと考えなくてもなんとかうまくやれるんだよ~というのを活動しながら学ぶ授業として『もちよ~る』をやったんです。

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 誰が何を作るかなんて事前に決めなくても、みんながその場で食べ方を想像して、食べ物を自分で作って楽しめる。また、自分がなんでその組み合わせにしたのかの知恵を語り合える。
 そこにある物を工夫して、共同でなんとかうまく社会活動ができるのが人間が本来持っている能力でしょう。

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 『もちよ~る』はゴールを決めなくても、うまくやれる能力が備わっているんじゃないか?ということを学びあう為の活動なのです。

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なるほど、確かに未知の状況というものに出会うことは、年を重ねるごとに少なくなり、大学の学びではさらに少なく感じる。既知のものをどうにかする、というパターンが圧倒的に多いのだ。

そうでなくとも、リサーチを懇切丁寧にしてから考えるとか、KJ法とかブレストとかのある種の証拠づくり的アイデア生成方法を余計にやったりとか、そういう手順を踏んで、予め未知を既知にしてから現場に乗り込むことも多い。

ただ、そういった既知にする方法というのは、間違った既知を創りかねないと思う。既知の状態で体験することは、ただの経験であり、そこには実践の知は含まれようがない。

何も知らない状態で現場に赴き、からっからのスポンジにじわりと水を染み込ませるように、その現場で実践された知をたっぷり蓄えていく。こういったことが本当なら必要なのではないだろうか。


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そして、在り物をいかに工夫して使えるか、という視点も大切だと思う。

リノベーションすることは容易だが、伝統建築の保守保管は容易くはない。だから、多くの機会では、ガラッとイメージを変えてしまうような、課題解決型の提案になるプロジェクトが多い。(特にうちの大学では)

そうではなく、プラスをプラスにするようなことは、下調べなくともできるのではないか、と感じたパニーノでもあった。


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一見すると行き当たりばったりな行動で、デザインっぽくないよね、と言われても当然のように思う。

だが、逆にデザイン手法に依存しない状況を作るために、デザインする対象はモノではなく、多様な知覚・情感を生起させる食を対象として、胃袋に体験の意味を問いながら考えることで、今までのデザイナーっぽい視点、少し鼻につくような視点を脱する一つの方法になり得るのではないかとも思う。


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未知のまま飛び込んで、気ままに場を見て、知覚して、振り返って、その場に在るであろう物語に想いを馳せ、また新たなことを知覚する。そうして実践して、当事者になって考えてみることで新しい価値の発見に至る可能性がこの活動にはあるのではないかと思う。


最後に、気ままに活動した「もちよ〜る」の振り返りの際にみんなで書き留めたグラフィックもあるので、ここに残しておく。

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ここまでが「もちよ〜る」の活動内容で、これを活かして考えたのが、今日の地域ブランド構築のお話し。


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現在推し進めているブランド戦略は、主に移住促進・定住促進や農産物のPRであって、これらが外部要因に頼りきっていて、外から人が来るからいいだろうと、ある種の投げやりになっているのではないかと考えた。


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経験を生起させることで、当事者意識の芽生と町民同士の新たな協働が生まれる可能性もあるのではないか。


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つまり、食を通してコミュニケーションを形づくることで、その人を理解することができる。「私のモチーフ」としての食をもちよる場をつくることが今回のプロジェクトの核となりそう…!


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食には、それぞれのストーリーがあって、その物語はその人によっても違うし、一緒に食べる人によっても変わるかもしれない。それらの食をもちよることで、間接的に「私」という存在をもちよることができるのではないか。


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その食を通して物語を語らうことで、その人の好きな味から、どんな生き方をしてきたのかまで、さらにはそれらの関係性から新しい発見に至るかもしれない。


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その語りあったことを元にみんなで料理を作って食べる。新たな協働の可能性が生まれ、次の活動へとつながるかもしれない。


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そうした一連の「もちよる」ことを通して、みんなの暮らしを知ることとなり、「あなたの暮らしも素敵だね!」となってほしい。その積み重ねによって、自他実現欲求が高まり、それによって自らの営みを自らでつくるという意識の芽生につながるのではないか。


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まずは、胃袋から町民を動かす。食から営みへと昇華させることで、もちよる文化の自走が始まり、手のかからない暮らしの向上とブランディングができる可能性があるのではないか。


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そして、もちよることは、食とその人の個性だけではなく、暮らしも持ち寄っている。ということは、持ち寄った場は厚真に住んでいる人の「願うくらしの欠片がもちよられる場」にもなる。


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最初はコレクティブに食をデザイナーがデザインすることで町民にインストールするする。そしておいしい未来にしていくことで、コミュニティが豊かになる。やがて胃を通して町民がコレクティブに食に立ち向かっていくようになる。

そのような流れと、ここまでの内容は、イリイチが言うような「地産地消の自立的な営みを基盤とした共生社会」が実現できるのではないか。さらに言えば、共生社会は理想の田舎像ではないだろうか。つまり、これは願うくらしをより具現化し、ブランドを強化する方策になりうると考える。


というような感じで、いろいろ考えながら構想してみたのだが、理論的にも少し甘いし、プロジェクト的には甘々だなーって感じです…。ご興味ありましたら気軽にご連絡ください。

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