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[連載:VUCA時代の教育デザイン③】リベラルアーツ教育ってなんだろう

日本リベラルアーツ協会の7アンバサダーを拝命して、3つ目のnote記事を書いている。それがきっかけで、リベラルアーツについて考えるようになったら、あれ、よく目に入ってくるようになったけど、意外と流行ってたりするのかな?それとも、ある特定のものを意識し始める関連のことが自然と目に留まるようになるカラーバス効果かな? 

何れにしても、リベラルアーツという言葉は、大学教員の端くれなので、日本語で話すときも英語で話すときも、世間一般の人よりよく使ってはいるはずだ。その割に意外とよくわかっていないことに気づいたので、自戒の念も込めて、今回はリベラルアーツについて簡単にまとめてみようと思う。 

リベラルアーツってなんだろう

世間一般的に、リベラルアーツといえば、一般教養科目のことだと理解している人が多いのではないだろうか。実際、私もその一人だった。

スーパー大辞林には、リベラルアーツの意味はこんなふうに書いてある。

リベラル-アーツ [5] 〖liberal arts〗
(1)職業や専門に直接結びつかない教養。また,そのための普通教育。
→自由科
(2)大学における一般教養。教養課程

しかし、リベラルアーツは、日本語に直訳すと自由になると芸術や技法という意味だけれど、あえてカタカナでいうのがきっとそれなりの理由があるのではと思う。気になったので、色々と調べてみることにした。

リベラルアーツはいつからあるの

横文字なので、割と新しいのかなと勝手に思っていたが、リベラルアーツの歴史はなんと古代ギリシアまでさかのぼるのだとか。想像をはるかに超える長さの歴史があり奥が深かった。あまり詳しく書くとそれだけで終わってしまうので、極々簡単にまとめると、この時代の人は食べていくために労働する「奴隷」と「自由市民」に分かれていて、奴隷を自由にする学問としてリベラルアーツが生まれている。その後、ローマ時代にはリベラルアーツ7科として、文法、修辞学、弁証法論理学の3学と算術、幾何学、天文学、音楽の4科という形に定義されて、13世紀の中世ヨーロッパで大学が誕生した際、このリベラルアーツ7科をもとにリベラルアーツ教育が始まっている17世紀になると英国の大学の科目として正式に認められ、それを継承した形で現在の米国の「論理的思考力」と「基礎的教養」に重きを置いたリベラルアーツ・カレッジがあるのだ。ちなみに英国植民地時代に米国で最初にできたリベラルアーツカレッジはハーバード大学である。今は大学院もできて総合大学になっているが、世界トップレベルの米国の有名大学のほとんどが元々はリベラルアーツカレッジだった。

日本のリベラルアーツ教育

それでは日本ではどうだろう。日本の大学は文系・理系で分かれていて、広く浅く教養を身につけるより、入学前に選んだ専攻に特化した学習や研究をする狭く深くの教育をしているように思う。とは言っても入学後1〜2年時に教養課程を設けていて、その後3−4年次には専門教育があるという積み上げ式が一般的なように思う。ただ、ここ10年で日本でもリベラルアーツカレッジが日本でも増えてきている。国際基督教大学(ICU)が最も有名だが、上智大学、早稲田大学、国際教養大学、それに続いて国立や公立大学もリベラルアーツのカリキュラムを導入し初めている。私の勤めている地方の国立大学でも、8年ぐらい前に「全学教育」と呼ばれていた初年次教育に「基幹教育」という新たな名前に変え、抜本からカリキュラム内容の見直しをしている。そして、その後に誕生した新しい学部「共創学部」もどちらもリベラルアーツの要素が強い。

なぜ今リベラルアーツ教育なのか

元々日本の学校では「正解」を求める教育が中心になってきたと思う。しかし、時代が大きく変わっていて、環境問題や民族問題など地球規模の問題が起きていて、予測不能で正解不正解だけでは片付けられない複雑なことが世の中には増えている。今の時代に必要なのは多角的な視点で物事を考え、さまざまな意見を受け入れ、柔軟な発想でイノベーションを起こしていくことだ。リベラルアーツ教育では、ただ、知識の習得だけでなくグループによる課題発見と解決のための教育が行われていて、今の時代にうまくマッチングしているのかもしれない。

以上、リベラルアーツについてまとめてみた。実は仕事柄、アジア圏の留学生と授業の内容について話すことが多く、自分は専門を学ぶために日本に留学してるのになぜ哲学や法学など関係のない教養科目を取らされるのかという不満を時々聞いている。これまでは将来社会に出た時に幅広い知識が必要だからぐらいにしか説明をしてこなかったけれど、次回聞かれた時は、もう少し上手に伝えることができるんじゃないかと思っている。

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