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どこでも、ドア

ドラえもんの便利な道具を3つだけあげるから、好きなの選べと言われたら、タケコプターとタイムマシンに、どこでもドア。だろうか。

3つしか選べないのはつまらないから、いっそのこと4次元ポケットが欲しいと「原寸大の4次元ポケット」を作ったことがあります。フェルトを手芸店で買ってきて、切り抜いてホチキスで縫いわせた簡単なものだったけど、それはそれで楽しかった。いろいろなものが出てきて便利だったけど、仕事で本当に必要なアイディアだけは出てこなかった。

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これでは使いにくいでしょと妻がポケットの口にジッパーをつけてくれて、しばらくペンケースとして使っていた。打ち合わせの席でカバンからさりげなく4次元ポケットを出すのはちょっとしたイタズラみたいで面白かった。どんな反応を示すのかで相手のマインドも分かったりと、それはそれで便利だった記憶がある。

どこでもドアはきわめてマンガ的な道具だと思う。コミックのコマ割りとは実のところ、それ自体が「見えないどこでもドア」だったりする。ストーリーはフレームで分割されていて、隣り合うコマが同じ場所であるという保証はない。もちろん続いている場合もあるけど、離れた場所が並ぶこともある。編集された映画のフィルムも似たようなところがあるけど、マンガのほうがフレームで分割されている分だけ、空間はどこでもドア的。

シーンを飛び越えるだけで誰でも自由に場所と時間を移動できるのだから。

だからと調子に乗って、何の道具も説明もなくコマ割りだけでのび太が自分の部屋からしずかちゃんの家のお風呂にいきなり移動すると、しずかちゃんが怒って水をかけるし読者も混乱してしまうから、ドラえもんは4次元ポケットの中からどこでもドアを出して、不連続の空間をシームレスに繋いでみせる。どこでもドアがあるから、離れた場所に一瞬で移動可能。それはマンガのコマ割りが初めから持っていた機能ではあるけど。

現実のマンガ世界はどんなイメージなのか、どこでもドアの図面を描いてみました。コミックを下敷きにしてドラえもんの身長129.3cmという大きさを頼りに寸法を測って作図してます。実際、コミックの中のどこでもドアのサイズはエピソードや場面によっても微妙に変化するから、どれが決まったサイズということはないのだけど、思った以上に確かなスケール感で描かれていたことが図面を描いて初めて気がついた。

どこでもドア図面

扉の下の土台が真ん中が浮いたような構造になってるとか、生産初期型では土台の浮いた部分はなく上部もドア枠だけとか、何で開閉用のヒンジが見えないのか、いろいろと気になる部分はある。後期型になるとドアノブに時差調整メモリが搭載されていたりするらしいのだが、時差の問題はどこでもドアがタイムマシンの機能を兼ねているらしいことが隠されてたりするのだけど、マンガの世界の話なのでそこは大きな話ではないだろう。

せっかくなので誰でも模型で使いやすいように縮尺を1/24にしてみたから、ダウンロードして自由にどこでもドアの模型を作ってみてください。

面白いことにスケールがなかったらただの空想世界のはずのものが、縮尺を与えてみたとたんに現実世界を縮小した模型世界の「実物」へと変容する。縮尺というのは、どこでもドアみたいなものだ。1/24とか1/35とか、模型の行先を決めるだけで小さな世界の入り口が開く。

プラモデルの車だって所詮は押入れの中の小さなおもちゃと変わりはないのに、縮尺があるから現実世界を写した「模型」になる。扉の先の世界では、プラスチックの人形は人間になり机の引き出しをそっと抜け出して、友達のいるキャンパスに向かって歩き始める。

どこでも大学生


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