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春夏秋生の生えてきたインタビュー第8話

【聞き手:春夏秋生×自然栽培お茶農家 加茂自然農園 山﨑徳哉】

秋生:"みかのはら~と"にどうして出展しようと思いましたか?
とくちゃん:木津川アートの影響が大きいです。
"みかのはら~と"がなくても自分でやろうとは思っていました。皆同じように感じていてそれぞれの発信が始まってめっちゃ面白いなと思っています。
秋生:木津川アートから広がっていきましたよね。

とくちゃん:作家名に入っているように自然栽培という農薬も肥料も使わないやり方でお茶づくりを行っているのですが、業界では無農薬では無理だと言われています。
秋生:全く農薬を使わない事は難しいのですね。​
とくちゃん:ある意味では難しい農法ではあるのですが、ちゃんと理論があって、実現は可能です。
僕は単にお茶を生産だけをしていればいいとは思っていなくて、お茶の生命力をいかに引き出すかという手法は、その事はそのまま体に活かすと、どうすれば免疫力や力を引き出せるかということになります。
そういったことをお伝えする事も大切な仕事の一つと考えています。
そして出来上がったお茶は確かに商品ではあるのですが一つの作品みたいに昔から思っています。

みかのはラジオで筋肉魔法学校という名前でお馴染みですが、僕自身が運営するサロン"Wild Lodge"がありまして、そこではその手法を僕が体づくりという形でお伝えしています。
このように、ただ僕がお茶づくりとして実践するというだけではなく、本来人間の持っている生命力をいかに引き出すかを伝える事が一つの僕の重要な役割だと昔から思っています。

そんな中で木津川アートがみかのはらで開催されて、僕が生まれ育ったずっと馴染みのある風景の中でアートイベントが行われ、昔から知っている場所なのだけれど、これはアート作品なのだという心構えで見ると、今まで見ていた同じ風景が違って見えたり、異なって受け取れたりする、受け取る側の姿勢が変わる事がとても面白いなと感じました。
アートという切り口で見せるのは、伝える手法としては非常に面白いなと思ったので、今年は絶対やってみたいと思っていました。
そして同時に、皆同じように盛り上がって、こうして実際イベントが動き出した。
まさに「生えてきた芸術祭」本当にそんな感じだなと思っています。

秋生:そうですね、まさに生えてきましたよね。
とくちゃん:これ見てどう思います?(とくちゃんの作品会場でには、背が高く伸びたお茶の木の森が広がっている)
秋生:のびのび伸びてるという感じがします。普通はもっと低めに切り揃えられますよね?
とくちゃん:はい、そうです。作業効率の為にあのようになっていてお茶の木って放っておくとぐんぐん伸びるんです。2mを優に越えます。
ここは僕が預かる前は別の方が管理されていた茶畑です。
僕が預かって4年位はそのまま放置というか伸ばしておいたんです。

「おとうさーん。ばあばんとこ行ってくるー。」
とくちゃんそっくりのお顔の少年とその妹が自転車に乗ってやってくる。
前方の茶畑(ずいぶん高いところに農作業真っ最中のじいじ、ばあばの姿が)目指して、急な坂道をよいしょよいしょと軽快に上っていく仲良し兄妹。
はにかんだ表情の兄と愛嬌たっぷりの妹の表情がなんともいえず微笑ましい。

秋生:今回のインスタレーションはどのような感じになるのでしょうか?
とくちゃん:僕のやっている農薬・肥料を使わないやり方について、どのようにしてその手法を成り立たせるのかを敢えて極端な形にして見せようというのがこのインスタレーションです。
まず、本来の木のあり方はどうなんだという所から考えていきます。
原生林は明るくて中には光が入るし、下には草が生える。そして生えて、枯れて、土に還るという流れが繰り返される。
植物は上を刈られると下から発芽させてなんとか伸びようとする。
例えば、人が手を入れて管理していた林は、木を伐採することを辞めて放置すると枝ぶりは乱れるんです。すると乱れた枝で中に光が入らず下草が生えなくなる。
そうなると土をホールドしてくれる草がないから、土が流れる。こういった悪循環が続いていきます。
この茶畑も1回刈られて放置されると循環が絶たれて、僕が作中で言う「自然合理性」が崩れるのでなかなか元の原生林の循環に戻るのは。膨大な時間がかかり困難になる。
自然合理性という言葉は、そういったサイクルが良循環を生み出すサイクルで回っている状態を指した言葉です。その状態や循環を茶畑の中に戻していく。
ここでは本来剪定されなければ1本の茶の木に育ったであろう状態に戻していくようなアプローチで表現しているのが、このインスタレーションです。
農薬や肥料を使わないというのは極表面的な事であって、それを可能にするために行っている事やその考え方を文章にして、この伸びた茶畑の中に散りばめています。
このトトロの森のような木の中を歩いて散策しながら、その言葉を見つけてもらう体験型の空間芸術作品です。
秋生:来た人はこの森を歩きながら入っていくんですね。
とくちゃん:はい。なのでアートとして特別な事をやっているわけではなく、実際茶畑で実践している事です。よりわかりやすい形で表現しているだけなんです。
秋生:見にきた方にこの森を見てここを歩いてもらって、どうやって感じてもらえるかみたいなかんじでしょうか?その道を作っているのですね。
とくちゃん:中に入られますか?
秋生:はい。
(とくちゃんの森の中)
こういうところに入るだけで、お客さんはドキドキすると思います。なかなか自然の茶畑に入る体験ってできないですよね。
とくちゃん:こういう枝とか、枯れたものが土の土壌で分解されて土になる。土というものはそもそも屍というか死体の集まりでできている。
秋生:この下にある木の枝をそのままにしておいて土に還らせるのですね。
とくちゃん:そうですね。この木がどう育つかは土次第なので死んだから終わりじゃなくて、それがどういう状態かによって今生きてるものが変わる、というこの木と土の関係性があります。
秋生:この木はずんずんとどこまで伸びていく感じですか?
とくちゃん:世界では大木になったお茶の木もあって2mどころではなく、もっと高い大木になっているものもあります。
面白いのが、基本的に植物は上から芽を出すので、上が剪定されなければ下からはあまり枝が出ないです。この状態であれば放っておいても実はそんなに乱れないです。
秋生:そうなんですね。この辺りは切っているんですか?
(通り道が出来ている森のトンネルみたいになっている辺り)
とくちゃん:そうなんです。ここは通れない位だったところを、どの枝を残すかを考えながら1本1本切り開いていきました。

秋生:そのとくちゃんが行っている自然農法は師匠さんがいるのですか?
とくちゃん:農業の師匠はあまりいないです。
しかし自分で考えたわけではなく、合気道や日本柔術を学んで自分の体で学んで体験したことをお茶の木に応用しています。
どうしたら体が活きるのかという事は、お茶の木も同じなんですよ。栽培というよりは、野生に返していくみたいなかんじに近いかなと思います。

秋生:本当ですね、歩いてると楽しいです。将来やってみたいことはありますか?
とくちゃん:たぶんこれからも同じような事をするんでしょうけど、伝える手法は色々試していきたいなと思います。マスターと次の企画で来年の冬頃にミカンヌ映画祭(みかのはら映画祭)をやろうと話しています。
みかのはら~とでマスターが映像を撮られていて、その映像作品で協力させてもらったことがとても楽しかったので、僕も1つミカンヌ映画祭に向けて作品を撮ってみようかなと思っています。秋生:素敵ですね。どんどん広がって止まらないですね。
とくちゃん:そこで表現されるようなものも内包されるものは似たようなものになるんでしょうけど、出し方が異なるので楽しんでもらえるのではないでしょうか。

秋生:今何かハマっている事はありますか?
とくちゃん:カトリーヌが昔乗馬のインストラクターをされていて、最近またそのお手伝いをされている事を知って一度乗ってみたくて、和装で乘らせて欲しいとお願いしたんですよ。
秋生:和装で?乗れましたか?足開けられたんですか?
とくちゃん:大丈夫でしたよ。袴はスカートみたいなものじゃなくて、いわばキュロットの長いものなので足は開けますよ。乗馬クラブのオーナーさんが気に入ってくれて、ポスターになるかもしれないんです。(笑)
秋生:初乗馬ですか?
とくちゃん:自分でコントロールして乗るのは今回初めてです。
うまく乗るコツを教わるんですけど、武道の体の使い方と共通する部分が多くて、軸とか重心の感覚が普段立っている時より不安定になり、自分の甘い所が露呈してくるので、まだまだやなという部分を鍛えるのがマイブームですけど、マニュアックすぎでここでお伝えするのはどうかなと思っています(笑)
秋生:面白い!とくちゃんでも弱い部分があるのですね。
とくちゃん:あります、あります。昔慢性中毒で体壊してるのでそんなに体は良くないですよ。
乗馬、カトリーヌは教えるの上手ですよ。
秋生:カトリーヌは説明が上手。すごくわかりやすい。
とくちゃん:指導者が良いからたぶんある程度みんないけると思います。ぜひ一度、楽しいですよ。
秋生:私も昔から一度やってみたいと思ってたんです。
とくちゃん:今回は和装姿を撮ってもらいたくて、イロイロのカメラマン ひーさんを連れていきました。
秋生:そうなんですね、それはそれは良い写真だわ(笑)

 とくちゃんは、体づくりの部屋から囲炉裏から一本歯下駄まで自分で何でも作ってしまうスゴ腕の持ち主。
そんなとくちゃんの手で次は何が形になるのでしょう。もうすでにとくちゃんのイメージの中には、少しずつ形になりつつあるのかもしれないですね。あー楽しみ。

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