乙女ゲーム初心者「CharadeManiacs」をやる・タクミ 白雪編

前回までの初心者

いよいよ最終章となりました。名探偵柑橘のシャレマニ捜査線のお時間です。
ソウタ→メイの流れで若干情緒不安定になっております。
さて最後は廃寺タクミ。自称12歳の小学生とのことで。彼ルートやるに当たって全身のイラストを初めて確認したんですが、ハーフパンツにレギンスなんだね。似合ってて可愛い。全体像いちばん好きかも。
まーしかし、さすがに小学生と恋はいくらヒヨリちゃんが10代とはいえ倫理的にムリよ。どうすんの。

とりあえずここまでの名探偵のメモの変遷。

身長でそんな言う?
上位存在
ファイナルアンサー

倫理の壁を越えるアクロバティックな解法を楽しみにしつつ、スタート。

1.小学生?


タクミはポツポツと喋るかんじのぼんやりした子なのだが、共同生活を始めて少し経ったあたりで12歳であることが自己申告によって判明する。
見た目はヒヨリたちと変わらないくらいで、背はむしろ高いのではないか。その見た目とのギャップに皆驚くのだが、ヒヨリはこれまでの不思議な言動にも納得する。
いやお前弟いるならわかるだろ。こんな小学生はおらん。
小学生男子ってのはな、学年問わずうんこで1時間笑ってられんだよ。すぐゲームとYouTubeの話するし5分に1回ひき肉でーす!言うからな。そんで小5小6くらいでひろゆきにかぶれて論破論破言うてくるからな。令和の現在でもだ。
間違いなくこいつは小学生ではない。何百人と小学生を見てきた私が言うのだからほぼ間違いない。
ただしそれは普通の人間だったらの話ではある。
ソウタは外見や言動に合わない年齢の幼さを疑ったが、年齢に合わない幼さも気になるところ。
序盤からタクミはヒヨリに懐き、彼女を「お姉ちゃん」と呼びそのように振る舞っている。赤の他人をお姉ちゃんと素直に呼ぶ小6、います?
漢字や常識を知らず、基本的な言動は12歳というより5〜7歳くらいが妥当ではないか。
そのくせたまに何でもわかっているような事や大人びた事を言う。
こういうお子様、映画や漫画ではたまに見るよね。タクミの『12歳』の学習元がそこなのではと疑ってしまうな。
まあ現実の幼児・児童もたまに真理ついたような事を偶然言ったりするので、不自然というほどでもないっちゃない。でも頻回にあるならそれはもうね。

ドラマでヒヨリがタクミを2階から突き落とす演技を拒否した時、彼は「こんな風に誰かに心配されたのは初めて」と嬉しそうにする。
これは演技じゃないっぽくて、アレッとなってしまう。
心配する存在がいない子供。
ヒヨリじゃなくても守らなきゃという気持ちになろう。
ていうか、他メンがドラマでのケガは治ると聞いた時に「それなら話は別」って言うのこわすぎんか?
え、普通に無理じゃない?この時点ではみんなタクミのこと12歳と思ってんだよね?
私でも何も対策なしに小学生は2階から突き落とせねえよ。お前なら別だがな、リョウイチ。(突然怒りが蘇ったらしい柑橘)
トモセはヒヨリのやることなら許してくれそうだし、ソウタは突き落とす覚悟があるので突き落とされても良さそうだし、キョウヤはなんかすごい身体能力でヒーロー着地キメてくれそうだし、ミズキも「えっ…羽…?」みたいな身軽さ見せてくれそうだし、ケイトはケイトだし、柑橘的には優しい子かつ運動神経ダメそうなマモルと、お子様と思っているならタクミと、あとメイちゃん以外は突き落としてもいいと思います!
あ、メイに関しては完全に贔屓です。もうどんな些細な不幸な目にも遭わせたくないからねえ!!!

公園へ行くとアイスを食べているタクミに会う。
ヒヨリは異世界人の本当の姿を見てしまった事で、彼らやこの世界の食べ物に忌避感を覚えるようになっていたが、タクミの子供らしいおおらかさを見て思い直す。
2人でアイスを食べていると、ヒヨリの唇についたアイスを指で拭い、自分の口に入れてしまうタクミ。
ヒヨリが照れたのにはちょっと引いたぞ…
いや今この私はタクミが子供だとは思っていないのだが、キャラたちは思ってるわけだよね。それなら普通の反応は照れじゃなくて衛生観念の心配でしょうよ。あ、これ相手が子供じゃなくても他人なら同じか。
まあここはちょっとしたドキドキシーンだろうし、ヒヨリも本能的に、あとは見た目的にタクミを完全に子供とは思えないってことかなーなどと納得しつつ。
ていうか、タクミのこの行動は子供というより逆にお母さんでない?

その後タクミがドラマの再演を申し出る。
奪われたヒヨリの声を取り戻そうという訳だが、出来ないと言うヒヨリに立ってるだけでいいからと、強引に進めてしまう。
タクミは「大丈夫、怖くないよ」と戸惑うヒヨリの手を握り、ヒヨリが突き落としたように見せかけて自ら落下した。
あの、トランポリンのアトラクション施設とかにある、高所から落下する遊びやったことあります?
1〜3メートル程度の台に立って背中から落ちるよう指導されるんだけど、下はふかふかクッションだと分かってても、大人でも、めっ……ちゃくちゃ怖いからね!あれやってたら、タクミお前すげーよヒヨリのために…ってほんと思うから。
タクミの演技は成功し、ヒヨリが声を取り戻したのを見て皆は喜び、ヒヨリの頑張りを讃える。
いやだから怖いって。そこ手放しで喜ぶどころか褒めちゃうの?急に倫理観バグるじゃん。
まあ皆ヒヨリに甘いってことで。ヒヨリの普段の行いもあるだろうしな。
とか思ってたらヒヨリもヒヨリで「私のためにとやってくれたんだし、まあ結果良かったかな」みたいなこと言いだしたのでちょっと待てと。
二度と自分のためにそんな事をしないでほしいとお前だけは言うべきなんじゃないのか…?えっどうしちゃったのヒヨリ。トモセのせいで守られることに慣れきってるんか?それはトモセが悪いね!でもソウタの時も「廃寺くんが平気なら私が気にしてもしょうがない」とか言ってたのこっちはちょっと引っ掛かってたからな。
タクミが自ら選択したとしても、実際どうかわからんが、痛い思いも怖い思いもしたって思うでしょ。それは自分が望んだわけじゃないからと割り切れるなら二度と心配とか抜かすんじゃねえぞ!
いや、分かってます。分かってますし、ケイトにちょっとキツいこと言わせたりしてバランス取ろうとした脚本の意図も感じてます。でもぉ…っていう。
「こいつ(お前ら視点では)子供やぞ?」問題に関してはほんとモヤモヤしたので、そういう部分は全てメタ読みで進めちゃったよね。「ここ深堀りしてる場合じゃねえもんな」「そういうイベントね」みたいな。
実際にはタクミが子供じゃなくても、情緒面が明らかに歪な成長してそうなのがまた私の保護者ヅラを加速させてしまうんよな〜!みんなゴメンな。
もうタクミが12歳とか変な嘘ついた(決めつけ)せいで私のストレスがやばい。早くウソでーすって言ってくれ。
まあこの世界だと段々それどころではなくなりそうだが。

2.恋ってなんでしょうね


リビングでヒヨリに頼まれたメイとトモセが、タクミに漢字を教えることに。
背後のソファにあるディレクターくんクッション笑っちゃったからやめて。何をグッズ化してんだ。
意外とトモセが教えるの上手そうなのニッコリしちまうな。塾講とかのバイトしたらチビッコに人気出そう。「せんせー!彼女いるのー?オレはね、3人いるよ!」とか小学生に言われてクソ動揺するトモセを幻視していると、『恋』と『愛』の違いについてタクミが3人に尋ねる。
「こ、恋っていうのはその……なんだ、あ、あれだな、うん……」
じゃないんだよメイ!!今これ見たら正気ではいられないんだが!?
言えないよね。ヒヨリの前で恋が何かなんて…
陀宰さんちゃんと説明してくださいとシレッと詰め寄るトモセはいい加減にしなさい。
困ったメイは「瀬名はどう思う?」とヒヨリに話を振る。気になったんか…メイ…
ヒヨリは好きな相手に触れたい、自分を好きになってほしいと思うのが恋ではないかと話す。するとタクミが自分がヒヨリを好きなこの気持ちは恋かと聞く。

「だってお姉ちゃんに触れたいって思うし、お姉ちゃんにもボクのこと好きでいてほしいって思うよ」

好きに「なって」ほしいじゃなくて好きで「いて」ほしい。
なかなか自信家だね、タクミ。というよりも、想いの継続を重視しているのかな。タクミがヒヨリにどう思うかよく聞くのも、好きで「いて」ほしいから?
ちょっとタクミの気持ちについて考えていたのだが、この場にはこいつがいたんでした。トモセ、こんなんお前が黙ってるわけねーんだよな。

「違う。ありえない。それは完全な勘違いだ」

子供相手にお前……さすがだぜトモセ。
しかしここでメイが体中にC4を巻き付けて突っ込んでくる。

「気持ちはわかるが、そこまできっぱり否定してやるなよ……」

ここまだタクミルート入ってないのでこのセリフは初見じゃない。だが今となっては完全に印象変わっちまってんだよ。
「気持ちはわかるが」
これが指しているのはタクミの認識のズレがという話ではなく、ヒヨリのことを好きなトモセがそれを否定したいっていう気持ちの方だったんだ……
丁寧にダメージ入れてくるのやめてもらっていいですか?今からタクミルート行くんで。お前以外をヒヨリに選ばせなくてはならない私の気持ちも考えてくれ。

思わぬところで息も絶え絶えになったが、ある日公園の池に落ちてしまうヒヨリをタクミが庇って、一緒にずぶ濡れになってしまう。
水に濡れたヒヨリの髪を払いながら「綺麗だね」と言うタクミ。通りがかったソウタに助けられた後で、ヒヨリの手を取る。

「お姉ちゃんがこの世界を怖がるならボクが怖くない世界にしてあげようか?」

黒幕というより支配者の発言すぎる。タクミは隠す気があるのかないのか…だがヒヨリはヒヨリなので気付かない。

「不安な時はボクを呼んでよ。そしたらずっとそばにいて全てのものからボクが守ってあげる。
だからもう怖がらないで」

じゃあヒヨリ帰してくださいよぉ……メイもお願いします。
しかし言葉だけ見たらなかなかの男気である。こんな状況でなければ作中屈指の頼もし発言では?そりゃソウタも疑うわ。
ソウタの子供らしくないという指摘とこの発言を受けても、ヒヨリは「廃寺くんは廃寺くんらしくしてるのが一番素敵だと思う」と優しい言葉を掛ける。
今の廃寺くんが好きだよ、とヒヨリに言われ、タクミは今までに見たことがないくらい穏やかな笑顔を見せた。
罪な女だぜ、ヒヨリ…

過去配信で命を奪われた友人を思い出し、落ち込んでしまったヒヨリをタクミは倉庫から繋がる草原へと連れ出す。
そこでタクミがモルぺウス計画のために出立する宇宙飛行士の動画を見せると、ヒヨリは何故か頭痛に襲われる。
何に引っ掛かったの?宇宙飛行士は身内か?
タクミは我々にはお馴染みの「痛いの痛いの飛んでいけ」をヒヨリにやってくれるのだが、彼女はそれを知らない。タクミによると古いおまじないらしい。軽いディストピア感お出しされたが、でもちょっと安心したな。タクミにそれを教えてくれた人がいたんだ。
そして「今度はみんなでここにピクニックに来ようか」と提案するヒヨリ。タクミはそれを眉を顰めて嫌がる。

「……ここ、ボクとお姉ちゃんの秘密の場所がいい」

可愛いこと言うね。秘密を作りたがるなんて本物の子供みたいだ。やっぱり、どうあれ情緒は幼いところがあるんじゃ…
それくらいならとヒヨリが頷くと、ずっと秘密が欲しかったとタクミは嬉しそうにする。

「秘密って、一人じゃ作れないから」

アッ……そういう…やめてよぉ…想像が合ってるか分からないけど、私はタクミが30年を月で孤独に過ごしてきたと思ってるんだよ…それが今リアルさを増してしまった…
ここまでタクミの行動の源がよく見えなくて、人外あるある・人間おもしれーなのか憐れなり人間…なのかとか色々可能性考えていたけど、もしそういう事なら。いやムリすぎる。ちょっとゴメン、一旦この件ペンディングで。

3.理由はいらないようでいる、時もある


タクミ、メイ、ソウタの隔離が始まり、ヒヨリは疲弊していく。言い争いや人を疑うことが苦手なヒヨリは、信じる信じないを考えることも投げ出したくなっていた。タクミはヒヨリの手を握って自分の頬に当てる。

「ボクのことは信じて。ボクは、本物だからね」

何をもって『本物』なのか。
意図を測りかねていると、タクミが切なげに続ける。

「ボク、お姉ちゃんのことが好きだよ。
優しくて温かくて、色んなことを思い出す。ボクがここにいてもいいんだってことを思い出して嬉しくなるーー
その優しさが消えないように、ボクは何をしたらいいのかな」

『本物』はヒヨリへの想いか。今ここに確かに『いる』自分。
ここにいてもいいなんて、生きるのに誰かの許可は要らないんだと教えてあげてくれ、ヒヨリ。
そしてお前に出来ることはきっとあるけど、でも、タクミのこれは危うさでもある。

「怖いものは全部見えなくなったはずだよ。このバングルのおかげで。
見えなければ、本物じゃないのと同じだよ」

言うたそばからお前というやつは。違うよ?そういうんじゃないよ?

「お姉ちゃんが『望むところ』へ帰る時まで、ボクが怖いものから守ってあげるね。
何も思い出さなくてもいいんだよ。優しいものだけに囲まれて、楽しく過ごせればーーそれでいいはずだよね、瀬名お姉ちゃん」

出来ることそっちじゃねー!!!
あかん。早くこいつに情操教育を施さないと。しかし施せそうなのがヒヨリしかおらん。ヒヨリが落ちたら終わりなんだが。

ヒヨリはタクミの言葉で、自分の意思を笑顔で取り上げられたようだと感じていた。
その感覚、忘れるな、ヒヨリ…お前にはリョウイチの前科があるからな。感情が高まった時、ヒヨリは自他の境界が曖昧になってしまうところがある。
リョウイチの時まではいかなくても、トモセとのケンカもそうだし、周りがギスギスしていると落ち込んでしまうのもそうだ。こういうとこタイプは違えどキョウヤとも似ている。良い方に作用してる間はいいけど…みたいな。
ただそこがヒヨリの(キョウヤも)良さを作ってもいて、否定はできないつーかしたくないんだけど、見ていて心配にはなる。今みたいに弱ってると特に。

川辺で草船を作るヒヨリとタクミ。タクミははじめ上手く作れなかったが、ヒヨリがやってみせるとすぐに良い出来の船を作った。
「見本があったから」と言うタクミにぐええとなってしまう。
船はメイも上手くできなくて、ソウタは作ることさえしなかったという。上手く教えられたのはヒヨリだけ。
これ本当に草船の話か?そのまま、お前自身のことにも通じてしまうんだが。
正しい見本さえあれば、タクミは正しい選択が出来るのではと思わせられる。少なくとも、それだけの能力や気持ちの土台が彼にはある。
でもそれを今上手く出来ていないのは、多分正しいことを教えてくれる人が、今の今まで、いなかった…から……なんですか…
そりゃメイじゃだめだよね。自分を後回しにしちゃう不器用な人には無理だ。お前はタクミに賭けとかじゃなくて、ただ怒ればよかったんじゃないか。
「お前が勝手に作ったルールなんか知るか。俺は好きな女に会いに帰るからな!不満ならお前がこっち来い!」ってさあ…メイちゃんタクミにも同情してたみたいだから無理だっただろうけど…でもタクミに寄り添える人じゃなきゃ気持ち届かないから、ただ怒りゃいいってことでもねえんだよな…だから例え上手く言えそうでも、ソウタじゃ意味がない。
あれ、これヒヨリも苦手パターンじゃない?周りを優先してしまう子じゃない?なんとか心を強くもって、頼む、ヒヨリ。

私がヒヨリに向かって拝んでいると、ヒヨリは急に「廃寺くんはプロデューサーじゃないよね」と口にする。しかしタクミはそれを穏やかに否定して、楽しそうに笑ってるお姉ちゃんが好きだからそんなことを考えるより遊ぼうと、ヒヨリの手を引いた。

3人の住居で話していると、タクミには姉がいるらしいことがわかる。会いたくないかと聞かれて曖昧な返事をするタクミに、ソウタが「AIみたい」と言う。
あ〜〜〜……そのセン頭から抜けてたな。
AIに宿る感情はプログラムか否かっていうのは未だに映画やなんかのテーマとなってるよね。そこまで絡んでくると、更に問題が複雑に…
でもその『感情』が本物かどうかを決めるのは無理じゃないかなあと柑橘的には思うわ。だって見分けるこっち側に感情があるからね。我々の気持ちひとつで結論変わっちゃうよ、きっと。人は信じたいものを信じる。
でも、AIだとしたら、学習能力アンバランスじゃない? 幼いとかじゃなくて、なんか…なんか抜けてる気がする…なんだろう? あ、タクミが窓から落ちたやつ。
他人のために自分を傷つけられるなら、同じ理由で他人を傷つけることもできるはず。
異世界配信の仕様は多くの人を傷つけて死すら与えながら、環境を整えたりルールを設けて条件達成さえすれば帰したり…悪意もなさそうなのに、悪を為すことに躊躇いがない。善悪の物差しがないんだな。抜けてるのはそれだ。
AI作ろうとなったら、普通は真っ先に禁忌事項を設定しないか?アシモフのロボット三原則みたいに。
だから私も人外ではあろうけど、なにかしらの生命体なんじゃないかなと思ってたんだよな。人の手が入ってるのなら善はともかく悪の基準は備わってなきゃおかしい。
なんでそこが欠けてるんだ?
それがこの一連の出来事の原因なのか?
姉って、本当は姉じゃないよな?
謎が深まる〜…

システムメンテナンスの日、タクミはヒヨリを呼び出した。しばらくは2人きりでいたいと言うタクミのお願いを聞き、草原の奥で並んで座る。
メンテナンスが怖いから一緒にいたいのかと思ったと言うヒヨリに、タクミは寄り添った体を少し預ける。

「誰かと一緒にいることが、こんなに楽しいだなんて知らなかった。
一人はつまらないよ。前はそんなこと思ったことなかったけど、今は違って、ずっと瀬名お姉ちゃんと一緒にいたい。
理由なんてなくても、一緒にいて欲しいって言うのはおかしい?」

ヒヨリは家族にも友達にも然程関心がなさそうなタクミを孤独だと感じる。

4.この魔法が解けるまで


住居に行くと、ソウタが資料を示し、ここは月面基地か、それを模したVRなのではないかと話す。この異世界のシステムはそのままモルぺウス計画が成功していた世界ではないか。
その可能性をヒヨリが感情的に否定した。
人々のために作られた施設と計画を悪用するなどあり得ない、モルぺウス計画は素晴らしいものだと。
いやどしたんヒヨリ。モルぺウス計画とやらに入れ込みすぎてて怖いよ。
そもそも『地球上のデータを集約して月で一元管理する』計画、普通ちょっと警戒しませんか?
世界規模の管理社会一丁上がりってかんじだけど。私だったら嫌だなあ。
ヒヨリがそこまで盲信しているのは、彼女の母親が原因だった。ヒヨリにいつもその素晴らしさを説いていたらしい。ヒヨリママ…やべえやつじゃん。娘に管理社会に馴染みやすい素養を植え付けるな。
ちょっと待ってください。これ、あとで効いてきたりしないよな?タクミが目指すところと同じ気がするけど、大丈夫よな?
ていうか、リョウイチの言う「公平」ってそのレベルだったん?私は嫌だけど、妄信的にそれを善としてしまうことに今初めて納得できた。徹底的な管理下で全ての人から選択肢を奪った上での公平さなら、そりゃ『神様』って思うよねっていう。私は嫌だけど!

メイとソウタの間に何かあったらしいことをヒヨリは気にするが、タクミにはその機微が分からない。
間違ったことも、後悔するようなことも、一度もないと言うタクミ。急な人外ムーブやめて。言っとくけどお前のルート一回もトキメキのドキドキ要素ねーんだよ…ずっとサスペンスのドキドキなの。ヒヨリをどうする気ですか。
その後2人がギクシャクしていたのは、ソウタがメイの右目のレプリカを見つけたためだったと分かる。様々なことを疑わなくてはならない状況に心が折れかけているヒヨリに、タクミが楽しく平和に生きたいならヒヨリが何を選べば良いのかを説く。

「答えを出すのはお姉ちゃんじゃなくていいんだ」
「管理される側になればいい。そうすればいつでも平和で、みんなと仲良く過ごせるよ。何も心配しなくて済むんだ」

モルぺウス計画のように、無駄を省き、正しさで区分けし、管理する。
それが正解だと語るタクミに、ヒヨリの中で今まで漠然と感じていた違和感がはっきりと形を成した。「廃寺くんは本当は小学生じゃないよね?」と尋ねる。

「うん、当たり。ボクは十二歳じゃないよ」

やっと言ってくれたとか吹っ飛んだわ。
急に理知的にスラスラと話し出したの、分かっててもゾワっとした。声優さんてすごーい…
腕を摩りつつ、タクミオンステージを眺める。
タクミが視界情報を書き換えているらしい『クオリアシステム』をオフにすると、そこには壊れたパソコンや割れたコップで出来た廃棄物の山。それをタクミは処分できないものの『おはか』だと言ってヒヨリに見せる。
そして自分はプロデューサーではなく、名前も容姿も奪われて、十二歳から何年もここにいると話す。
墓が山になるほど長い年月いたのは本当だろうが、その他は…ヒヨリは信じたかもしれないけど、まだ本当のことは話さないんだな、タクミ…
処分できないものってなに?思い入れがあるもの?

タクミはお姉ちゃんと呼ぶのをやめて、ヒヨリの名を呼び両手で彼女の頬を包む。
人間は忘却する生き物であり、それは身勝手だと言った時だけ僅かに表情を歪め、しかしヒヨリには大事なものだけをそばに置いて、他は全てを忘れていいと優しげに言う。

「だからみんな『自分のもの』にしたがるんだ。そばに置いておけば……忘れないから。
だから人は、生き物たちは、伴侶を作るんだよね。
永遠を、誓って」

自分もそれが欲しいと言うタクミ。みんなと同じになりたいとヒヨリを求める声は切実だ。

「ボクが守ってあげる。つらいことすべてから。
きみがそばにいてくれるなら、ボクの永遠をきみにあげる。
だからきみの優しさを、きみの愛を……きみの迷いを、悲しみを、寂しさを、輝き淀み瞬くようなきみの心を、ボクにちょうだい」

タクミの孤独に触れて、ヒヨリがどんな気持になったか想像したら無理なのは分かるけど…私もしんどいけど…
でもヒヨリ、思い出せ。自分の意思を取り上げられてしまうことへの抵抗感を。タクミに生きるということの手本を見せてあげるなら、ここしかない。

唇が触れそうになった時、「廃寺!」と叫ぶ声が遮った。
メ、メイ〜〜〜!!!!!
この地獄の瀬戸際に来てくれたんか。でもこれタクミルート…なんだよな…来てしまった見てしまったが正しいのか…?ヤメテ…モウヤメテ…

気まずさからその場を逃げ出したヒヨリだが、様子がおかしい。深く考えることを放棄してしまったようで、問われるままミズキたちにタクミのお墓の話をし、ソウタから聞いたメイについてのことも、上手く処理出来ない様子だ。
昨日のことを話したいというメイに、タクミとの事だと警戒心を強くするヒヨリ。咎められるような事はしていない、メイに止められるようなことは何もないと。
あかん……こいつもうタクミの手に落ちとる……
その警戒心は、ヒヨリが心の底では自覚があるからでしょぉ…話せば咎められる、メイに止められるって…踏み止まれ、ヒヨリ。タクミと幸せになるならいい。でも進むのはそっちでいいのか?タクミを止められるのはお前だけなのに。
出来ないならせめて、メイにそんな態度とるのやめてあげてよぅ…
最後は柑橘おばあちゃんの贔屓だが、でも、このままじゃダメでしょ。え、ちゃんとハッピーエンドになるの、これ?最後の1人なのに?
ヒヨリがメイから距離を取った時、後ろから目を塞がれた。タクミだ。それにホッとしてしまうヒヨリに落胆を感じてしまった私にタクミの容赦ない追い打ちが。
話すくらいはいいだろう、ヒヨリはタクミのものじゃないんだからと釘を刺すメイだが、タクミには響かない。

「『まだ』ね。でも今の、見てなかったの?分からなかった?瀬名お姉ちゃんはね、陀宰お兄ちゃんのことは信用できないんだって」

やめてよー!!!なんでそんなこと言うの!?タクミだけはメイの気持ち知ってるんだよね!?
……知ってるから言ったのか。知ってるからヒヨリの目を塞いだのか。エーン意地悪だよぅあんまりだよぅ そりゃお前にしてみりゃメイはここできっちり埋めとかないとまずいだろうけども。

何も言えないメイとちいかわのごとく震えるばかりの柑橘を、ヒヨリとタクミが去り際に丁寧にぎゅむぎゅむと踏んで行く。
ヒヨリはメイの全てが嘘なのではないか、それなら最初から優しくしてほしくなどなかったとシャットアウトしてしまい、タクミはメイにごめんねと謝る。

「ボクもこの子が欲しくなっちゃった。止めてもいいよ? この子がいいと言ったらね」

じ、自分はヒヨリの心を無視するくせに…
ヒヨリは考えるべきことを忘れつつあるようで、タクミが自分を欲しいと言ったことを嬉しいと感じるばかりだった。2人はタクミの作ったお墓の前に座り、それを眺める。
積み上げられた無機物の死体と孤独で出来た山を見ながら語り合うことってなに?普通に心配しかない。
しかしタクミはこの世界は本当は自由なんだと、手からヒヨリの好きなお菓子や華やかな服にアクセサリー、色とりどりの花を大量に出現させて、笑いながらヒヨリを抱きしめる。

「ずっと一緒にいて。ずっとボクと手を繋いでいて」

タクミは「ゴドーを待ちながら」を模したようなドラマ配信を始めたり、あやふやな事を言ったり、涙を流して見せたりして、ヒヨリを混乱させる。
他の誰かに泣いてもらえばいいから、悲しい事は全部他の人に任せて、ボクらは望むものだけ待ち続けようと言うタクミ。
ヒヨリはようやくこのままではいけないと考える。

「誰かに代わりに泣いてもらうなんて、私は嫌だよ。
みんなで元の世界へ帰って、そしてまたみんなで『仲間』になるの。
私と一緒に帰ろう。大丈夫、ずっと一緒にいるから」

ヒヨリは頑張った。でも今のタクミが欲しいものはもうヒヨリだけなんだ……
寂しそうに、涙を浮かべてヒヨリがどうしても欲しいのだと言い募る。
タクミが好きだと答えるヒヨリ。しかしタクミを信じることはできない。
そりゃそうだよ、タクミ…まだ嘘を残していて、それはさすがに無理よ。
しかしタクミはヒヨリを抱き上げ、逃げないでもっと話そうと迫る。

「ボクを疑って。怒って。悲しんで。そして最後に……ボクを信じて、好きになって」

こっちはもう悲しんでるよ。
お前の分かってなさと、ヒヨリのすべてが欲しいというのが嘘偽りなかったことに。
ヒヨリのどんな感情も自分に向けられるならそれでいいんだね。でもさあ…きっとそれじゃ本当に欲しかった、本当のヒヨリは手に入らないよ…
どうなっちゃうの、これ。全然ハッピーが見えない。ヒヨリもどうしようもなくなってるじゃん。

どうしようもなくなった結果、ヒヨリはタクミを止めるために「プロデューサーに指名するよ」と拙く脅す。タクミは笑ってみんなを集めてしまった。
ヒヨリに出来るわけないとたかを括ってやがる。確かに今回の場合タクミは「プロデューサー」ではないから、指名してもダメなんだよな?
ヒヨリ、その手に乗るかとガツンと言ったれ。そして想いの強さとはこういうことだと教えてやれ。
皆の顔を見たヒヨリは、間違えたら全員を死に追いやることになる決断を下せない。
タクミはそんなヒヨリに笑いかけ、きみが大好きだからと、ヒヨリが引き返すことを許すと言う。
やはり指名はできないと伝えると、タクミは可愛いねと笑う。

「きみはボクのものになるべきだよね。ボクを信じて、ボクにすべてを委ねてよ。
……もう一度、訊くよ。ボクをーー信じるね?」

もうこっからホラー。
疑うことも信じることも出来なくなり、真実が何もわからなくなってしまうヒヨリを翻弄して、タクミはヒヨリを手に入れようとする。ヒヨリがタクミの手を取るまで、何度でも同じ質問が繰り返され、ついにヒヨリはタクミを信じると言わされる。

気付くと夕焼けの教室。
タクミは楽しげにヒヨリに告白しようかな、などと言っている。

「ついポロッと好きって言っちゃってもおかしくないよね。そしてその後誤魔化しちゃったりして」

その思い出まで…とらないで……ッ
柑橘の中から間桐桜が飛び出して泣いた。
メイのことおちょくっとんのか…おめーそれだけは、それだけは、許されねえぞ…

様々なドラマを演じて毎日を過ごし、その中で愛の言葉を繰り返すタクミ。
ヒヨリは元の世界も仲間も辛いことも寂しさも全て取り上げられて、タクミに頷くことしかしない。
やがて帰還に必要なポイントが貯まったと知らされるが、もう何も自分で選ぶことは出来なくなっていた。
そんなヒヨリに二つの月が輝く夜空の下でキスをして、タクミは孤独は二人で分けあえると呟く。

「きみはもう、ボクのもの。二人なら……永遠だって、分け合える。
どれが愛かは分からないけど。きみと一緒なら……いつか、分かる日が来るよね……」

バッドエンドじゃないの、これ?????
え、これハッピーエンドなの???なんもハッピーじゃないが???ホラーじゃん。
えっ怖い。じゃあ用意されてるはずのバッドエンドは…?

・・・回収中・・・

だからこえーって!(号泣)
振り出しに戻る、じゃねーんだわ。
つーかやっぱ普通にやったらバッドエンドなんじゃん!タクミルート見たらBADて書いてあったもん〜!
え、じゃあ…じゃあ…真相ルートってやつしかタクミは救われないんですか?実質そっちがタクミルートなんですか?
えっ…わたし…全員がハッピーになるものと思ってますが、大丈夫ですよね…?主にメイ

だけどこの結末ではさすがにタクミもヒヨリもつらい。つらすぎる。これ他の人はどうなっちゃったの?早く…早く救わねば…
今回タクミがマッドマックスのごとく暴走してしまったのは、ヒヨリはきっと多くの人に愛してもらえるけど、タクミにはヒヨリしかいないから、あまりに孤独が深すぎたから、だから初めて好きになって、初めて好きって言ってくれたヒヨリだけしか必要なくなっちゃったのかな。邪魔なものは全部排除して、二人きりになるしかなかったのかな。
初恋に浮かれるのは誰しもだけど、限度ってもんがある。
それにメイだってお前のこと心配してたんだよ?
好きって気持ちは恋だけじゃないってこと、ヒヨリの中にもメイの中にもある、愛の存在を信じてくれたら…お前さえ受け入れてくれたら…ヒヨリの愛する世界はお前にとっても優しいものになったかもしれないのに。
でもメイのヒヨリへの気持ちを知ってたから、駄目だったかな。ヒヨリを閉じ込めておくにはメイの気持ちは邪魔だもんな。余裕そうでいながら、メイのことはずっと意識してたもんな。
そもそも閉じ込めるな!!!
だって、タクミも幸せそうじゃないよ…こんなの早晩崩壊する。その時、タクミはどうするの…?
無言の死骸で築いた山の傍らでひとり、何十年も、存在をゆるしてくれる、愛してくれる誰かを待っていたやつの結末がこれなんて、あまりに、あまりに……

この気持ちのままでは無理なので、まだまだ残る謎も知りたいし、泣きながらこのまま真相ルート行って参ります。
長くなったので記事は分けますね。ついでに総括したいな。
それでは、ハッピーエンドの世界で会いましょう!

↓ ↓ ↓

続き・真相ルート編 




【名探偵柑橘の今回気になったことメモ】
・ここまできたら探偵もクソもないが、いつものヤツやっとかないとね。
・ヒヨリママさんよぉ!お前やってくれたなあ!水星の魔女のスレッタママ思い出したわ。子供をスポイルすることの害悪を思い知るね。全てが管理された世界が素晴らしいかどうかは私にはわかりませんが、親の思想を植え付けるのはいかんでしょ。それでなくても子供にとって親の影響って強すぎるくらいなんだからさあ。
・宇宙飛行士の映像で頭痛。ヒヨリママの父親とかなのかな?なら「姉」は誰だ?
・忘れてしまう人間を身勝手だと言ったタクミ。彼はおそらく世界規模の管理用AI。ならば、ヒヨリママの親がヒヨリママを事故で忘れたのでも、ヒヨリママの記憶が時間と共に薄れてしまったのでもないよね。多分、誰かが忘れることを望んだんだな。タクミは何も忘れることなどできないのに。孤独が深まってしまう…つらい…でもそれでAIであるタクミの善悪の判断が歪むことってあるかな?それはまた別件なのか。そもそも設定されてないのか。
・メイかわいそうすぎるから何とかして。トモセ?なんか前回最高に元気なトモセ見れたから柑橘もうあいつに関しては心穏やかなんだわ。活きのいいトモセよ永遠なれ…

「白雪」はEveさんの曲ですね。明るいポップな曲調に儚い詞。タクミを見てたら思い出したので。聞いてみてほしい。MVも良いよ。

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