見出し画像

スポーツクラブのフロントスタッフ

2020年8月末でFC琉球を運営する琉球フットボールクラブ株式会社を退社しました。2018年11月にJ3優勝を決め、勢いに乗るクラブの一員として入社してからの2年弱の日々は自分にとってかけがえのない時間となりました。

僕が従事していたのは、いわゆるフロントスタッフとしての業務になります。スポーツクラブに関わる仕事としては、実際にどんなものがあるのかわかっているようで、わかっていなかった部分が多くありました。2年程度とそこまで長い期間ではなかったですが、一担当から代表まで経験した自分にしかわからない世界もあるかなということで、フロントスタッフとはどういう仕事なのか。ということについて書いてみようと思います。

フロントスタッフとは?

サッカークラブにおいて、いわゆる「現場」とは、トップチームの選手たちや監督・コーチを指します。簡単に言うと、フロントスタッフとは現場以外の活動を行う社員を指します。職種については以下のようなものがあります。

■財務・経理
■総務
■人事
■営業
■チケット
■物販
■競技運営
■広報
■ホームタウン
■強化
■育成普及

もっと細分化されているクラブもありますが、大まかにはこのくらいかなと思います。スポーツクラブの収入の柱は大きく3つあり、スポンサー収入・入場料収入・グッズ収入です。これらを太く強くするために何ができるのかというのが、フロントスタッフの仕事の根源ということになります。

僕は2年間で全ての業務に関わってきました。そしてクラブのフロントスタッフとして働く仲間と必死に汗をかいてきて思うことは、スポーツ業界が変わっていくために選手たちのレベルアップが求められていますが、それ以上にクラブを裏方で支えるフロントスタッフのレベルアップが急務なのではないかということです。

少し前では考えられなかったことですが、今では当たり前のように日本人選手が海外でプレーするようになってきています。一方でクラブスタッフとして関わっている人間は、今も同じように海外で働くことは考えられない状態で、止まってしまっています。

フロントスタッフの細かい役割については、いつか詳細を説明させていただこうと思いますが、今回はその心構えについて、僕が考えていたことを書いてみようと思います。

イーブンな関係

これは退社の挨拶の際に、クラブスタッフに伝えた言葉でもあります。

選手たちがクラブの宝であるように、スタッフもクラブの宝です。ピッチの上で躍動し、スタジアムの大衆の前で戦う選手たちと同じように、クラブを支え、闘っているということにプライドを持ってほしい。そして「自分ができることなんてない」と控えめになる必要はないということ。

水を準備しておく、渡すタイミングを考慮する。一つ一つの行動がクラブの未来を作り、クラブの礎となって、地域に育まれていく。選手がピッチの上に立つのと同じ感覚を感じる瞬間があるということです。

選手たちと対等(イーブン)な関係であれば、試合に負けたのは選手や監督のせいにはなりません。ピッチに立つ11人、ベンチ、監督だけがチームとして戦うのではなく、クラブで戦えるようになっていきます。

画像1

先日、沖縄を代表するモンゴル800を裏方で続けているマネジメントの方と話をしていたときに教えてもらったことでもあります。僕はフロントスタッフ側の人間として、ゲームの勝敗に関わらない経営にこだわっていました。だから勝敗にはほとんど感情を左右されないように、割と意識して俯瞰して試合を見ていました。

彼に「どういう気持ちでライブに関わっているのですか?」と質問してみました。すると帰ったきた答えは、「自分もライブしている感覚でいる」というものでした。その感覚でいると舞台に立つアーティストと同じ感覚で、感じているものを瞬時に理解できるそうです。

アーティストのように0から1を生み出すことはできない。でもスタッフとして1から100に作り上げることができるという考えをもって、アーティストに接していると聞き、この話は同じようにフロントスタッフにも当てはまるのではないかと思いました。

だからこそステージの上で脚光を浴びるアーティストと対等な関係で、チームが作られているのです。ライブの世界観はアーティストだけで成立するものではありません。スタッフとの対等な関係があって、はじめてチームになっているのです。

チームとは?

チームは、試合に出ている11人だけではありません。ベンチメンバーや監督スタッフだけでもありません。メンバー外の選手やフロントスタッフ全てを含んで初めてチームになります。それぞれがクラブの描く世界観を共有し、お互いに尊敬しあって、初めてチームになるのです。

しかし、ここでの前提は選手たちとイーブンな関係になるということです。

選手たちは百戦錬磨です。厳しい競争を勝ち抜き、プロになった選手たちと同じ目線になるということは思っているよりも難しいことだと思います。だからこそ、その領域まで自らを高める努力を怠ってはいけません。そして今、フロントスタッフに求められているのは、まさにここだと思っています。

フロントスタッフが休みもなく、必死に働いているのは僕が誰よりも知っています。でもそれが報われていないのも知っています。選手たちと戦うステージが違うだけで、クラブのために戦っているのは同じです。どれだけプライドをもって、自分の仕事に取り組めるかで、フロントスタッフの価値はもっと高まるのです。

スポーツクラブのフロントスタッフという仕事が、夢の仕事になる日はきっと来ると思っています。でも「いつかくる」と思っているだけでは絶対に来ません。この世界を変えていかなければいけません。そして変えていけるのは、今クラブで必死に働いているフロントスタッフの皆様です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?