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【10分で読める】Jクラブで働きたい人が知っておいた方がいいこと

はじめに

僕は2018年11月から2年弱にわたって、J2クラブの経営に関わり、マネジメント側からクラブを見てきました。2020年8月末にクラブを退職してからは、フロントスタッフ向け・スポーツ選手向け・サポーター向けにNOTEを投稿させていただきましたが、今回は将来「Jクラブで働きたい人が知っておいた方がいいこと」をテーマに書いてみようと思っています。

2018年「サッカーの仕事がしたい」と前職で勤めていた証券会社を辞めて、当時J2昇格を決めたばかりのFC琉球のフロントスタッフの一員として働くことを決めました。

しかし実際には、他の業界からスポーツ界へ来ることはけっこうハードルが高いと思っています。自分自身踏ん切りをつけて、決めるまでに1年以上の時間をかけたところでもあります。

スポーツ界で働く人の話を聞けるチャンスは意外と多く、最近ではスポーツビジネスにまつわるイベントも多く開催されています。しかし、次に直面するのは、そもそもどんな仕事をしているのか想像つかない、どうやって就職していいのかわからないというポイントです。

このNOTEでは、どんな仕事をしているかについては、多少クラブに差はあれど、僕の経験を基にほぼ実際の現場を伝えることができると思います。

一方でどうやって就職するのかについては僕なりの提案を込めて伝えているので、少し今のクラブの状況とは違っています。その辺も考慮して、読み進めてもらえると幸いです。

それでは、本題に入ります。

▼目次
1.どんな仕事をしているのか。
2.新卒で入るべきか。
3.どうやって就職するのか。

1.どんな仕事をしているのか。

まずクラブには大きく分けて、現場とフロントの2種類の仕事があります。現場にもトップチーム、アカデミー(育成年代)、スクールといった部門に分かれますが、簡単に言うとサッカーに直接かかわる仕事です。

そしてまず始めに理解しておくべきことは、「サッカーの仕事ができるのは選手だけ」という事実です。

サッカー界で働きたいと思っている人に対しての注意は、自分がそのスポーツの何が好きなのかを冷静に考えてみることだと思います。サッカーをプレーするのが好きな人が、サッカークラブでスタッフとして働くと実際はほとんどサッカーする機会がないので、描いていた理想との摩擦が起き、「サッカーの仕事がしたかったのに」という葛藤にぶつかることになります。

それでは、僕が従事していたフロントスタッフの仕事について説明していきます。こちらの方がスポーツビジネスにおけるクラブへの関りに近いのではないかと思っています。

フロントスタッフの職種
■財務・経理
■総務
■人事
■営業
■チケット
■物販
■競技運営
■広報
■ホームタウン

もっと細分化されているクラブもありますが、大まかにはこのくらいかなと思います。スポーツクラブの収入の柱は大きく3つあり、スポンサー収入・入場料収入・グッズ収入です。これらを太く強くするために何ができるのかというのが、フロントスタッフの仕事の根源ということになります。

僕は2年間で全ての業務に関わってきました。そしてクラブのフロントスタッフとして働く仲間と必死に汗をかいてきて思うことは、スポーツ業界が変わっていくために選手たちのレベルアップが求められていますが、それ以上にクラブを裏方で支えるフロントスタッフのレベルアップが急務なのではないかということです。

また大きくフロントスタッフの仕事を2つに分けると、「興行と営業」に分類されます。興行とはホームゲームをはじめとするクラブ側が主催するイベントの実行、営業とはそれにまつわる資金を調達する活動とわければわかりやすいと思います。

僕の個人的な印象としては、Jクラブは資金の調達である営業に時間を割かざるを得ない状況で、満足に興行に労力と資金を投資できていない状況が多々あると感じています。

だからこそ、興行チームと営業チームで完全に役割を明確にすることが求められますが、興行を行うのには人手が必要となります。営業で資金を集めてこれれば、人手を外注することもできますが、その資金難もあり、営業チームが興行に時間をとられるという負のスパイラルで回っています。

クラブから従業員である「自分に課せられたミッションは何なのか?」を明確にすることから、始まると思っています。興行チームとして円滑にイベントを執行する人間なのか、イベントを広報する人間なのか。一方で営業チームとして資金を調達することが求められているのか。この責任が中途半端な組織が多いような気がします。

少し話題がズレましたが、フロントスタッフの仕事としては大きく以下の通りです。

■興行(イベント実行部隊)
■営業(稼ぐ部隊)

2.新卒で入るべきか。

次によく聞かれるのは、「新卒でどういう企業に入ったらいいですか?」という質問です。これには色々な要因が複雑に絡んでいると思っています。個人的には本当にやりたいことであれば、すぐにクラブに入ってでもやればいいのでは?という考えを持っています。

一方で僕の場合、新卒でゴールドマンサックスに入社し、6年半の間サラリーマン生活を送っている中で、学んだことも多くあります。社会人としてのマナーであったり、お客様との接し方、コンプライアンスへの取り組みなど金融機関での仕事を経ての経験は実際に多くの場面で生かすことができました。

多くの学生たちは、社会人としてビジネスを学んでから、スポーツ界に行きたいということは言っているものの、根本的なネックになっているのは、新卒で入社して、どういう風にキャリアアップしていくのか、ライフスタイルが年を重ねていくごとに変わっていくのか、実際のところ全く見えないからではないでしょうか。

だから本能的にスポーツ界にいきなり飛び込むことに躊躇している。

はっきり言って、スポーツ界で働くことへの認識は、現状ではその程度だと思っています。それはサッカー選手も同じです。大学まで必死にサッカーをしていたら、家族はみんな応援してくれます。しかしプロになるかの選択を迫られたときに将来のことを家族にいきなり心配され、進学した選手の中には反対されるケースだって考えられます。

話を戻すと、現状のスポーツ界である限り、新卒で入社することのリスクはかなり高いと思います。僕は他の業界から来たからこそ、仕事を選べる感覚をもって働けましたが、「ここでしか働くことはできない」感覚を持ってしまった時が危険信号だと感じています。

特にスポーツクラブの場合、人数がかつかつな状態で走っているので基本的に仕事は属人的になりがちです。仮にその仕事を一手に引き受けている人の感覚が、他に転職する先もできる仕事もないというものだった場合、何が起こるでしょうか。

属人的な仕事が誰にもオープンにならず、その人がいないと成立しないという状態を作ってしまいます。これでは「カイゼン」もできるわけがありません。あえてストレートな物言いでいくと今のJクラブはまさにこの状態です。その人がいないと回らないという状態になっていないか?これに気づけるのはまさに外から来た人間だけです。

だからこそ、別の世界を経験し、目を鍛えた状態でクラブに来ることが望まれているのかもしれません。

そして、もう一つは収入面のハードルです。

クラブによっても、役割によってもたぶん全く違うんだろうなということしかわからないですが、同じ業界で、同じくらいの年齢だと、そこまでの差はおそらく一般社会ではないと思います。

スポーツ界では、特に稼ぐことに対してのアレルギー反応が強く、どっちかというとボランティア精神が評価されるような風潮すらあります。また何故か選手との差は大きく、フロントスタッフが年俸を要求することへの圧力はすごく感じます。

でも僕が思ったのは、選手と同じくらいの水準をもらうフロントスタッフがいてもいいのではないかという発想は自分自身あります。

そのためにクラブに対してどう収益をあげて貢献するのかというイメージができるかどうか。夢の仕事といわれるものが、好きなことをできているが、収入はかつかつ。好きなことなんだから、良しとしよう。これは夢の仕事ではありません。

なので、現状で新卒で入ることに対してのネックは以下の2つ。

■キャリアアップが見えない
■収入面のハードルが高い

3.どうやって就職するのか。

そして最後に、どうやって就職するのか。これは基本的にコネです。しかもタイミングが非常に重要です。誰かが退職し、どうしようもなくなってから人を探すケースが多いような気がしています。

人材に投資し、教育に投資し、時間をかけて、組織を形成するほどの余裕を持ってクラブを経営しているケースはなかなか見かけることがありません。だからこそ、新卒で入った子たちもほぼ独学に近い形で仕事をするしかなく、社会人としての基準が低いままで、社会にもまれるという構図が出来上がっています。

そして、現状で言うと、

Jリーグは28日、2021 シーズンのJリーグクラブライセンスについて緊急募金を実施しているベガルタ仙台など含めて17クラブには特記事項として、「注意喚起を行っておくべき事項を通知」されるとし、Jリーグが予算進捗・編成等につき随時ヒアリングを行う。と発表しました。

ますます、クラブが人材に対して投資できる余裕はありません。

ここからは、「どうやって就職するのかについて」僕の提案です。

クラブ側に自身の市場価値にあうであろう給料を払える体力がないのであれば、クラブとプロ契約を結び、自身の得意分野での積極的な関りが求められるのではないでしょうか。

例えばマーケティングの分野で力をつけ、その脈絡でクラブとのかかわりができるとすると、クラブの収益にどうコミットできるのか。別にクラブに属さずとも、自分に投資してくれる会社を見つけ、そこからの出向者としてクラブに参画することもあり得るかもしれません。

いずれにしても、尖った能力を持たずして、今のタイミングでクラブから求める収入を期待するのには、あまりにもマーケット環境が悪すぎると思います。

正直、そこのイメージを持たずに、クラブへ飛び込むことに対してのおススメはあまりできません。まずは「興行と営業」のどちらで自分が力になれるのか、そして「キャリアアップ」「収入面」についてクラブに頼らず、自ら絵を描けるのか。このあたりがポイントになってくると思います。

おわりに

これまで書いてきたNOTEの中でもフロントスタッフ向けに書いた内容よりも具体的にスポーツクラブで働くこと・就職することについて書いてみました。

「自分だったら、どうするのか」そういう感覚を持っている人間は強いです。誰かが出してきた回答に、ケチをつけるのは正直誰でもできますし、終わったことの良しあしを分析することも誰でもできます。

正直、ここからクラブで働くことのマーケット環境は明るいものではありません。しかし、「自分だったら、どうするのか?」を強く持ち、行動し、前に進むことができれば必ず開けてくる世界はあると信じています。

僕自身は「サッカーの仕事がしたい」という思いでサッカークラブに飛び込みました。描いていた理想とは違う部分、そして想像を超えるだけの充実が行った世界には待っていました。

僕自身、今はクラブの経営というスポーツビジネスの第一線からは退いてはいますが、「批評家」になるつもりはなく、むしろ自分だったらどう経営するのか、どうアクションするのかを常に考えるようにしています。

長文にわたり、お付き合いいただきありがとうございました。それでは。どこかでお会いできることを楽しみにしています。

三上昴

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