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ニチアサの話がしたい vol,204


■今週のガッチャード

・集結する仲間たち

 ついに最終回前話となってしまった『ガッチャード』第49話「メタルウォーリアー!白銀のヴァルバラド」。例年通りであれば最終回はOPがカットになることがほとんどなので、私が世界で一番大好きな『ガッチャード』のOPが放送されるのも今回で最後なのかと思うと早くも涙が出てくる。(早いよ)

 今際の際で自分の素直な気持ちに向き合うことができたアトロポスと友情を結び、トワイライトマジェードとなったりんねは見事ガエリヤを撃破。しかし、いまだ残るガエリヤが世に放った悪人は恨みを晴らそうとマルガムになり、宝太郎たちをおびき寄せるべく街で暴れていた。まさに、名実ともに「野生の犯罪者」である。
 
アノマロカリスマルガムとなった男から街の人々を守ろうとする宝太郎一行。だが、人々の様子がどこかおかしい。それもそのはず。世間は命や生活を脅かす怪物になるかもしれないケミーを処分しない錬金術師や仮面ライダーたちに対し、不信感と反発心を強めていたのだ。「何だこの感じ……力が湧いてこない!」ガッチャードは「応援で強くなる仮面ライダー」であることは作品内で度々描かれてきたが、それは概念的なことではなく、逆に敵視される(応援がない)と、まるで顔が濡れたアンパンマンのごとく力が出なくなってしまうという物理的な特性だったらしい。そうなの!?

 人々からの嫌悪の目はアノマロカリスマルガムを倒した後も消えない。「ケミーを処分しろ!処分しろ!」シュプレヒコールが上がり、思わず後ずさる宝太郎たち。そんな彼らの元に駆けつけたのは、これまで宝太郎たちの頑張りを目の当たりにしてきた、かつての仲間たちだった。「ケミーを悪く言わないで!ケミーはただ、人間と仲良くなりたいんだよ!」「ケミーを恐れないでください。私たち親子はケミーに救われたんです」と話すのは、エックスレックスによって家族の絆を取り戻した超常現象ライターと間辺譲と、その娘の爽。「そのケミーと一緒に仮面ライダーは戦ってる。人々を守る正義のヒーローとして!」「私と同じ普通の高校生なのに、命を懸けて……。お願い、信じてあげて。私の大切な親友たちを」それに続く、加治木と九十九静奈。「騙されるな!ケミーは危険だ。錬金術師は俺たちの敵だ!捕まえろ!」と民衆をアジテートするたっちゃんも含め、番組を彩ってきたゲストキャラの再登場と夢の共演に、物語が最終盤である実感が高まる。第47話で旭さんが再登場した段階で、他のゲストキャラも出てくる可能性もあるなとは思っていたが、こうしてピンチの時に間辺父娘や静奈が味方としてやって来てくれるのは、これまでの宝太郎たちの努力や善行が報われるようですごく嬉しいし、前中盤までのケミー回収のエピソードを通じて、縦軸だけではなく横軸もバリエーション豊かに展開させてきた『ガッチャード』の番組構成の強みを生かしたワンシーンでもある。

・グリオン様、来店!

 しかし、仲間たちの呼びかけを以てしてもなかなか騒動は収まらない。物陰に隠れ事態が落ち着くのを待つ一同だが、この規模の騒ぎがあちこちで起きていることを考えると、キッチンいちのせが再び襲われる可能性も高く、急いで家に戻る宝太郎。しかし、そこで彼を待っていたのは母・珠美ではなく、なんと宿敵のグリオンであった。グリオンは穏やかに「少し話をしよう」と言うと、自分はただ単に金を欲しているわけではなく、金の持つ永遠性に価値を見出しているのだと己の美学を語り、(説明をされても尚全くピンと来ていない宝太郎役 本島純政さんのナチュラルなお芝居がまた宝太郎らしくていい)「そういえば、取るに足らない命がひとつ消えたぞ」と宝太郎を最も動揺させる一言を放つグリオン。「嘘だろ……グリオンお前!!」母を手にかけられたと思い、グリオンの胸ぐらを掴んで怒りを爆発させる宝太郎。しかしその時「宝太郎?帰ってたの」と、いつもと変わらぬ様子で珠美が帰宅する。何が起こっているのか分からない宝太郎は慌てふためくが、グリオンはその顔が見たかったとばかりに満足げに微笑むと、「息子さんには色々とお世話になっています」と丁寧な口調で珠美に声をかけ、「では、私はこれで」と、さっさと店を後にしてしまう。もう筆者はこのグリオン様の一連の振る舞いが、演者の鎌苅健太さんの芝居込みで本当に好きだ。あまりにも良すぎる。グリオンはどうやら第27話で自分の夢を宝太郎に「ちっぽけだ」と言われたのを根に持ち、自分の理想がいかに気高く、宝太郎たちが必死に守ろうとしている「日々の幸せ」とやらが逆にどれほど「ちっぽけ」かを証明するために来たようなのだが(もはや軽く半年くらい前のことなのに、なんて執念深い……)そのためにわざわざ珠美の命を奪う必要はなく、むしろ宝太郎には「今の私ならお前の母親などいつでも始末できる」という脅しの方が精神的ダメージを与えられると分かっているところがまずクレバーだし、帰宅した珠美を前にしてとことんにこやかに、「あなたの息子さんの善良な知人」として振る舞ってみせるところも本当に最高だ。あのシーンがもしキッチンいちのせの通常営業中という設定だったら「せっかくなのでお昼を頂いてもよろしいですか?実はこのところ、長年の夢を叶いそうで、もうそのことに夢中になってしまい食事を摂るのも忘れてしまうんですよ。ほんのちっぽけな夢なんですがね、いやはや、いい年してお恥ずかしい限りです。ええと、何にしようかな、どれもおいしそうだ……宝太郎くんのおすすめは何かな?……なるほど。ではそのハンバーグ定食をもらおうかな」とか平気でのたまい、定食屋に似合わぬ美しいテーブルマナーでそれをペロリと完食した上、珠美さんが出してくれたサービスのコーヒーを礼を言って受け取り、賑わう客席を眺めてのんびり過ごすに違いない。いや、違いないかどうかは分からないが、要するにグリオンというのはそういう図々しいほどの余裕に満ちた悪役であり、さらに自分の相貌や振る舞いにはそれを「誠実で優雅で親切」な行いだと周囲に錯覚させる力があると自覚しているところが最高だし、そんな想像を思わずかり立てられるほど、鎌苅さんの演技は素晴らしかったということだ。

・「本当の自分」になる

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