見出し画像

南仏シンジケート

1991年に、ソ連が崩壊して、ロシア、東欧の人達がどっとヨーロッパに流れこんできた。急激に西側の資本主義が入り込んできて、当然貧富の差が生まれた。西側に行って豊かな生活をしたい人々は増加の一方。けれど、言葉の問題もあり、資格や学位の問題もあり、まともな職に就ける可能性は低い。言葉がいらないのは、容姿だけで仕事できるモデル。そうしたモデルなどの東欧特有の美女達が、裕福な男性を求めて押し寄せているのが当時の南仏だった。南仏は、モナコも近く、世界のお金持ちが押し寄せるところだから。私は知らなかったけど、彼は、前は船を持っていたこともあり、離婚してて(正しくは離婚手続き中)、availableな裕福な存在として、彼女たちの有力候補だった。それが、突然現れた自分達と関係ない日本人に奪われそうなのだ。界隈は、密かにざわめきたった。
彼女達の通常のスタンスはこう。
有力な候補の男性を見つけたとする。まず、誰かがアタックしてみる。例えば、ナターシャ。ナターシャがアタックしても、男性のお眼鏡にかなわなかったり、うまくいかなかったら、今度はタチアナがトライしてみる。それでもダメなら、次の誰か。とにかく、仲間の誰かがくっつけば、その恩恵は、他の仲間に回ってくる。男性には友人がいるだろうから、紹介してもらえばよい。それが無理でも、女性2名分の食事代やちょっとしたお小遣い程度なら、そうした男性は出せるだろう。そういう感じで、候補たりえる男性は、逃さないように、グループでがっちり囲い込むのだ。
すっかり彼女達の視界に現れなくなった彼に、電話がかかってくる。
「やあ、ナターシャ元気かい?うん、僕は今最高にハッピーなんだ!やっと僕のレディーに出会えたんだ!」
「え?椅子?ああ、もちろん見に来ていいよ。アンティーブに置いてあるから、僕の秘書に連絡取って、見に行ってくれていいよ!」
知ってか知らずか、彼女達の最後のトライもかわして、電話終わり。
こんなことを繰り返しているうちに、こういう電話はかかってこなくなった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?