#23 GPIFの話題にモヤるわけ

GPIFの話題が出るたび投資家はマスコミを批判しがちだ。運用成果が赤字なら大きく取り上げるのに、黒字になってもそうはしない、と。事実、2016年にGPIFが年金運用で5.3兆円の損失を出したとき、マスメディアはこれを大きく取り上げた。運用益が100兆円を超えた今、このことを取り上げないマスメディアはどうかしているーーと。

これは半分正しいし、半分間違っている。

「半分正しい」というのは、投資や運用を知っていれば5.3兆円の損失が実は騒ぐほどのことではない、という意味だ。そもそも勝ち続ける運用というものがあり得ない。加えて、5.3兆円と言うと相当な金額に見えるかもしれないが、運用している額がかなり大きいので実はそこまで大きな損失ではないし、適切な運用をしているのであればすぐに取り返せるということだ。私(一般人)が株で44億円の損失を出せば致命傷だ。だが、ZOZOの創業者・前澤氏にとっては多分44億円程度なら案外どうにかして取り返せる。そういう意味だ。

そういうわけで投資家の目線ではマスコミが「投資や運用を分かっていないくせにGPIFの方針を批判するバカ」だということになるのだろう。だが、それでもなおマスコミに本来求められる役割を考えるのであれば、マスコミ批判は「半分間違っている」と言わざるをえない。マスコミの果たすべき役割はあくまで権力の監視だ。権力者を称賛することではない。5.3兆円の損失が不適切な運用方針によるものかもしれない以上、GPIFが含み損を出してるときには「本当に適切な運用をしてるのか」と追及する必要がある。GPIFの運用方針に対するマスコミの分析に批判を向けるのであれば正しい(し、それは確実に必要なことだ)が、マスコミがGPIFが損失を出しているときだけ騒いでいるという批判は正しくない。

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