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手記 不可視の群島

オズの魔法使いという映画をご存知でしょうか。

1939年にアメリカで、日本では1954年に封切られたファンタジー映画です。

この映画は祖母から母に、母から自分に受け継がれた我が家の大切な映画であります。

この映画の劇中、ドロシー扮するジュディー・ガーランドが歌う『over the rainbow』は誰しも一度は耳にしたことがあるかと思います。

“虹の彼方にはどんな夢も叶う国がある”
“嫌な事はまるでレモンドロップのように溶けてしまう”

そんな日本語訳詞でした。

2019年の早春、自分は夜になると現れる島を探していました…

事の始まりは2018年の晩秋…当時人間関係が拗れてイヤになり、家に籠って居れば良いものの休みの日は横浜駅又は上大岡駅に向かいKIOSKからKIOSKを渡り歩き、その都度宝缶チューハイを買っては呑むを繰り返しておりました。

酒の力を利用しイヤな事から逃げて逃げて逃げまくってオズの国のような理想郷を求めていたのでしょうね。

飲酒中と給料日直後は気が大きくなるものです。
目に留まった書店に入り、何か面白そうな本を衝動買いして帰るか…そこで手にした1冊の本が自分を冒険へと導いたのです…

不可視の群島を辿れ


その言葉に惹かれ…即座に深夜バスの手配をしていました…きっと辿る群島のどれか1つが自分の理想郷なのだと信じて疑わなかったのです。

理想郷に片道四千円で行けてたまるか!

…今となってはそう考えてしまうのですが。



2019年2月25日18時10分

自分は暗闇に光る京都タワーを見上げておりました…

“僕が何千マイルも歩いたら、手のひらから大事なものがこぼれ落ちた”

そんな歌を口ずさみながら四条大橋に向かい、手に持った暗号の手掛かりを探しに。

夜風吹きすさぶ四条大橋に着いたものの、元々地図が読めない馬鹿と言われる自分の事ですのでね、何をどうしたら良いか分からないのでした。

考えるより足で稼ぐクセがある自分、これはもう力技だと軒並み碁盤の目を虱潰しに歩くと決めました。

4時間後、不可視の群島を見付けるに至らず疲れた体で牛丼屋に入り、並盛りを食べて宿に入ったのでした。

京都で散歩しただけじゃないか

そんな言葉を宝缶チューハイと一緒に呑み込み、酒で気の大きくなった自分は宿のラウンジになだれ込み、居合わせた人たちと遅くまで呑み…結果二日酔いで翌朝京都を後にするのでした。

尚、翌朝頭がんがんさせながらもハイライト食堂に行った事を記しておきますね。


2019年3月24日15時

まだ群島が現れるには早いと判断し、出町柳に向かい叡電に乗って鞍馬口まで。

天狗探しも程々に出町柳へUターン…その頃には群島が現れそうな良い夕闇に。

先に群島を発見した方々からのヒントを頼りにしたところ…薄ぼんやりと島が見えました。

そこから先の事は舞い上がってしまってたのでよく覚えてませんが

池内さんと同じものを下さい

そう言ったのは覚えてます。

進々堂の島に辿り着く事が出来ました。

前回手ぶらで京都を後にした分、喜びもひとしおだったと思います…カクテル美味しかった。

素敵な店員さんから差し出された群島のヒントが記されたカードボックス、それを見てまさか全てが解けようとは思いもせず…

自分の閃きに狼狽しながら2杯目のお酒、ニセ電気ブランを呑んでおりました。

進々堂の島を離れ、一路次の島へ向かい…発見に至るのですが島は上陸した冒険家たちでごった返しており、上陸を断念せざるを得ませんでした…あからさまに発見されてるじゃねーか。

しかしながら次の島への航路も万全でありましたので、舵をきり全速前進。

訪れた芳蓮堂の島…

前回島の前を通り過ぎてた事が判明

頭を抱えたのは言うまでもありません。

砂漠をモチーフにしたカクテルと、本にレコード…とても甘美な思いの出来た島でした。

尚、この日もハイライト食堂に行った事を記しておきます‥安くて旨いんだもん。


2019年4月17日10時

自分は大阪道頓堀筋の釣り堀に居ました。

深夜バスの都合上、大阪に着くしか無かったのだと記憶してますが…そんな筈無いだろ!

甲賀流行きたかったんだろ

※アメ村の三角公園前にあるたこ焼き屋さん

十数年ぶりに再会したたこ焼きで腹を満たして道頓堀に戻り、ちょうど開演するタイミングだったのでお笑いライブを600円で観られました…いや、群島探しをだな…

おけいはんで出町柳に到着、鴨川をぶらぶらして時間を潰したのち、前回冒険家たちで溢れ上陸出来なかった美術館の島へ。

島が現れて間もないのに冒険家たちが…不可視だけど人気の島、雰囲気良かったなぁ…

余談ですが、いつか行ってみたいライブハウス、磔磔が近くにあって感激しました。


そして自分はいよいよ最後の島へ…

それは伏見にあるという…満月の島だった訳ですけど、発見した時は「やっと終われる…」と脱力しました。

ダルマ君がモチーフなのだとか

マスターとの距離感が好きな島でした。

ウイスキーの話を沢山して下さりましてね…秩父に行った際は秩父蒸留所を訪ねてみたいなと。

後から同じ志の冒険家さんが現れ、熱帯を紐解く討論を繰り広げたのでした。

冊子のスタンプと共に記念品を受け取りました。

達成感と幸福感に包まれながら満月の島を後にし、帰浜する為の深夜バスの待つ京都駅へ…


出町柳某所に勤める友人亀山君(仮名)と京都駅前喫煙所で待ち合わせ、久し振りの再会を祝し麦酒で乾杯…京都タワーを肴に酔いしれたのでした。

彼が居なければ、自分はあの日深夜バスに乗れなかったと思います…乗り場が分からなかったのです、案内してくれて助かった…

オズ風に言うならば彼は北の魔女でした…「やっぱりお家が一番いい」と唱え、カカトを鳴らし深夜バスに乗り込んだのでした。


横浜に帰ってからは多忙を極めました。

引っ越しやら仕事やら資格試験やら…不可視の群島を巡った冒険が遠い昔のように思え、記憶が曖昧になって行きました…

(酒のせいだろ…とか口が裂けても言わない)

それでもあの時自分が辿った足跡(スタンプ)は今も鞄の中にあります。

足跡を頼りにまた辿ればいい、また何度も何度も迷って迷いまくって辿り着いた島が自分の求める理想郷でありましょう。

辿り着いたら池内さんと同じもので乾杯だ。

そしてハイライト食堂に行くのも忘れずに

このボリュームよ


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