高級キャバクラは◯◯◯な人達の集まりだった
「なぁ、君、ブサイクだな〜」
顔をじっくり見られ、そう言われたことがある。
逆に、次に着いた席では「君、すごくタイプ!」と指名を受けることも。
キャバクラで働くのは、いいことばかりではない。
嫌な思いをすることも多かった。
貶されたり、胸がないと言われたり、「タイプじゃない」として指名した子以外とは一切口を利かないお客さんもいた。
今ならそんな言葉、ハラスメントで即アウトだろう。でも、当時はハラスメントという意識がまだ広がっておらず、言われることもよくあった。
ウチのお店は、初回でも最低10万円は必要な高級店。それなのに、どうしてこの人たちはそんな大金を払ってまで来るのか、ましてやただのお喋りで汚い言葉を投げかけるのか、不思議でたまらなかった。
キャバクラに来るお客さんの「本音」
でも、酔っ払ったお客さんの言葉でその理由が少しずつ見えてきた。
「会社じゃ下手なこと言えないし、こういうところでしか心置きなく話せないんだよ」
「家では嫁さんにも娘にも無視され、会社の女にも疎まれてさ、やってらんないよ」
「今の世の中、一言一言に気をつけなきゃならないんだよ」
ポツリポツリとそんな話を聞くようになって、ふと、「この人たちは究極に寂しいんだな」と思った。最高に孤独なのかもしれない。
こんな場所でしか鬱憤を発散できないなんて、可哀想だとさえ感じた。
キャバクラは、そんな昼間の現実で満たされない人たちの逃げ場だった。
私が決めたこと
だから、私は決めた。「自分はこうはならない」と。
昼間の現実世界で満たされない欲求を、大金を払ってまで埋めにくるような人にはならない。昼間の現実世界で大いに認められ、自分の承認欲求を自分の力で満たせる人間になろうと。
キャバクラの煌びやかな世界は、可哀想な人たちの集まりだ。そう気づいた私は、この世界がなんだかバカバカしく思えてきた。
でも、そのバカバカしさの中で、私は自分がどう生きるかを学んだ。
よく、私がキャバ嬢だったことを話すと、「よく金銭感覚が狂わなかったね」とか「よく普通の仕事に就けたね」と驚かれる。
けれど、むしろキャバクラの経験があったからこそ、「ちゃんと昼の世界で実力をつけ、稼いで評価される人になろう」と思えたのだ。
もちろん、たまにあの夜の世界が恋しくなることもあるし、キャバクラに戻ろうかと考えた時もあった。でも、キャバ嬢であり続けなかったことに後悔はしていない。
キャバクラは確かに稼げる仕事かもしれない。けれど、あくまでも「短い時間で」「太く」稼げるだけ。稼げる期間を前倒しして短くしているに過ぎないのだ。