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予言

昔から、占いやゲンを担ぐと言ったことにあまり興味がなく過ごしてきた私ですが、それでも何かの事の流れで手相を見てもらったり、タロット占いやカラー占いといった類いの本をいただいたことが何度かあります。

取り立ててそれらが嫌いということでもなく、何となく興味がない、ただそれだけの事でした。

しかし、ですね。私はデビューするにあたって、当時の会社の偉い人が有名な姓名判断の先生にお願いをして「神野美伽」という芸名を付けてもらっています。姓名判断と占いを同じくカテゴライズして良いのか否か分かりませんが、とにかく会社の偉い人は「長ーく歌える名前を付けて下さい」とお願いして命名してもらったのだそうです。

本名の「シンノミカ」という名前の音をそのまま残した、「神様の美い伽(はなし)を伝える者」というビックリするような意味を込めたおこがましい芸名は、こうして字画を整えた姓名判断によって生まれたのでした。

余談ですが、本名の「信野美佳」という字画は、歌手としては良くないと言われたということなのですが、もし、その字画のまま歌い手になっていたら、私はどんな人生を歩んでいたのでしょうね。それはそれで興味深いところですが、こんな風に38年近くも歌を歌い続けて来られたのは「神野美伽」という名前をいただいたお蔭なのかも知れません。名前というものは本当に大事なものだと思っています。

私とは違って、母は母の人生の岐路に立つごとに占いの先生を頼り、その助言を道しるべにして生きて来たと、大人になってから聞きました。

まだ10才の私が歌手にスカウトされた時も、「この子は都会にしか住めないヘビだから、東京に出してあげなさい」と背中を押されたのだと言います。

「都会のヘビ」とは大層おもしろいですが、私自身、それを感じていたりします。大きな街に居れば居るほど体の中からエネルギーが湧き出て来るのです。不思議なヘビちゃんですね。

それから、一度だけめずらしく母に強く言われてその占いの先生とお会いしたことがあります。

デビュー以来、20年以上お世話になった会社から独立し、自分の会社を立ち上げた時です。「方角は大事だから、それだけ見てもらって来た方が良い」と。

さすがに一大決心をした時だったので素直に母の言うことを聞いて、会社を構える場所を選びました。

その時に先生は私の名前を紙に書いて、やはりこう言いました。

「あなたはずっと歌って行くね」

心の中で、「だって、そうお願いして付けてもらった名前だもの」と思うと可笑しいけど嬉しくなって、先生のお話をうかがっていました。とりわけ何ということのない穏やかなお喋りを楽しくして、「さあ、おいとましましょ」という時に、「54才くらいからあなたの人生が大きく変わるわよ」と仰ったのです。

ビックリして、それは良くないことなのかと聞くと、そうではないと首を振り、「とにかく、54才から変わるということを覚えておいて。また人生が変わるからね」と微笑んで下さいました。

随分と先の話で、きっと忘れてしまうだろうと思った出来事ですが、忘れるどころか、私はいつも何故か心の中でワクワクしながらその時を待っていたのです。

可笑しなものですね。

神野美伽
MFC196号(2022 夏)



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