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緑単に偉大なる進化をもたらしたかった〜チャンピオンズカップファイナルサイクル3参戦記〜

0.はじめに

今回もチャンピオンズカップファイナルサイクル3に参加をした。デッキは《緑単信心》で結果は3-4初日落ち。自身の結果こそは残念だったが、チームマスとん内の緑単信心調整チームからは4人中2人が2日目に進出し、そのうち1人はPT権利も獲得したということで、我々の緑単信心ロケットは無事打ち上がったと言っても良いだろう。我々の《緑単信心》のリストははっきり言って世間のポピュラーなリストと一線を画しており、非常に強力だと確信している。今回は我々の珠玉のリストを紹介出来れば幸いである。

1.現在のパイオニア環境と緑単信心の位置付け

現在のパイオニア環境は《ラクドスミッドレンジ》を中心に回っていることは最早議論すら不要であろう。実際今回のチャンピオンズカップファイナルサイクル3でも《ラクドスミッドレンジ》は実に4人に1人が使用するほどの人気デッキであった。

圧巻の王者デッキ


《ラクドスミッドレンジ》を前提としたメタゲームを設定するとその上段には《ラクドスミッドレンジ》に有利がつく《エニグマ・ファイアーズ》、《異形化》デッキや《新生化》デッキのような《偉大なる統一者アトラクサ》デッキが来るだろう。いわゆる“Big-scale”デッキである。《緑単信心》も古典的にはBig-scaleデッキに分類されると考えられ、他のBig-scaleデッキ相手に比較的有利に立ち回れるというのが利点である。
ただ、《緑単信心》というのはチャンピオンズカップファイナルサイクル1の頃から人気のデッキであり、かつては《ラクドスミッドレンジ》に有利とされていたが、現在は《ラクドスミッドレンジ》も《絶滅の契機》、《苦難の影》、《黙示録、シェオルドレッド》、《ヴェールのリリアナ》といった新戦力を獲得し、



《緑単信心》を克服したというのが世間の見方であり、最大手の《ラクドスミッドレンジ》にマッチ単位で不利がつくのであれば、選択の理はそこまでないと考えられるのは当然のことだ。
また、《白単人間》相手の相性も克服出来ておらず、ここ数週間で台頭してきた《アゾリウススピリット》にも不利であることは向かい風であるのも確かだ。ただ、これらのアグロデッキは《ラクドスミッドレンジ》には不利がつく。
もし、仮に《ラクドスミッドレンジ》を克服出来る《緑単信心》が組めるのであるとすれば、想定されるメタゲームにおいても”ぜひとも使いたいデッキ”になるのではないか?
空想ではあるが、このようなスタート地点から我々は《緑単信心》を検討し始めた。


2.緑単信心の研究

まず、《緑単信心》というデッキがどういうデッキなのか解釈するところからスタートした。《緑単信心》は
①1マナエルフや《狼柳の安息所》により使えるマナを伸ばし、

②大型クリーチャーやPW、それらを盤面に供給する《収穫祭の襲撃》をプレイして盤面を作り上げ、

③コンバットあるいは《修復の噴射》を絡めた無限コンボにより勝利する

ランプコンボ(ハイブリッド)デッキである。ここは昔から変わらない、言わばこのデッキの核となる部分である。

我々は”最強の“緑単信心を組み上げる上でまず、固定枠を考えた。我々が考えた固定枠は以下の通りだ。


厳選されたカードたち

サイドボードについては議論の余地があるとは思うが、メインボードについてはほとんど全ての《緑単信心》のリストにおいて共通する部分であり、納得できることであろう。そのため、メインのフリースロットは4枠ということになる。
機械兵団の進軍以降、《緑単信心》は《ポルクラノスの再誕》や各種《侵攻》バトルカードを獲得した。事実、多くの《緑単信心》はフリースロットにこれらのカードを採用している。ただ、上述の弱点は克服出来ておらず、本当に採用すべきかどうかは疑問が残る。
そもそも《緑単信心》において盤面影響力の高いクリーチャーは《老樹林のトロール》と《茨の騎兵》であり、これらの共通点はPIG能力による“場持ちの良さ”である。これは「除去がしづらい」と言い換えても良いだろう。

こう考えたとき、《ポルクラノスの再誕》は本当に《緑単信心》というデッキにフィットするのかどうかは疑問が残る。

もちろん、1枚で信心カウントを3稼ぎ、4/5到達というスタッツで盤面を持たせることが出来るのは魅力的だ。しかし、相手目線で除去を打ち易いカードであり、“場持ちが悪い”というのは大きなマイナスポイントであろう。
そう考えたとき、《イコリアへの侵攻》は《緑単信心》にすんなりとフィットするカードであると我々は考えた。X=1での運用では1マナエルフをフェッチしてくることで信心を3増やし、使えるマナを1増やしてくれる。また、バトルを除去するカードは環境に少ない。この場合、盤面影響力は低いが、①のマナを増やすという動きには貢献してくれ、《緑単信心》の潤滑油としては《老樹林のトロール》より優れるタイミングも多いだろう。
裏面の《イコリアの頂点、ジローサ》も《領事の旗艦、スカイソブリン》によるアタックで容易に降臨させることができ、アグロデッキ相手のゴールとして申し分ない。

全体スーパートランプル持ち

ただ、《イコリアへの侵攻》は腐らないながらももっさりとした動きになってしまうことも多く、テスト段階で嵩張ることも多かったため、1枚の採用とした。
《イクサランへの侵攻》も非常に優秀なサーチカードだが、信心が1しか増えず、2マナという重さを嫌って、我々は《ニッサの誓い》4枚をしっかり採用することで不採用とした。裏面があまりデッキの方向性と噛んでいないこともマイナスポイントであった。
また、我々は“場持ちの良さ”という点で《ヴォリンクレックス》も優秀なカードと考えた。


本体に除去耐性はないため、一見“場持ちが悪いカード”に見えるが、登場時の「森2枚サーチ」により、カードカウントの優位を得ることが出来る。6/6到達トランプルという環境上位のボディによりコンバット上、盤面を持たせることが可能であり、《収穫祭の襲撃》にアクセス出来ないときも裏面《偉大なる進化》1章の10枚ミルによって無理矢理アクセス出来る可能性があり、



また、上振れで《茨の騎兵》が捲れれば、《ニクスの祭殿、ニクソス》を絡めて、そのターンに無限コンボに入ることも多発する、非常にパワフルなカードである。5枚目の《茨の騎兵》、5枚目の《収穫祭の襲撃》とも呼べるカードであり、我々がまさに求めていたものだが、レジェンダリーであることを重くみて、こちらも1枚採用としている。
残り2枠については我々のチームでも割れたが、私は対《ラクドスミッドレンジ》と《アゾリウスコントロール》を重く見て、この枠は《街並みの地ならし屋》と《龍神、ニコル・ボーラス》とした。

どちらもデメリットはあるが、非常に強力なカードであり、デッキを大きく掘ることが出来るこのデッキにおいて、アクセスはそれなりにし易く、メインの60枚に採用する価値はあると考えた。ただ、これらより優先して《ビヒモスを招く者、キオーラ》4枚目を採用するのももちろんあり得ると考える。
私が実際にチャンピオンズカップファイナルで使用したのは以下のリストだ。

サイドボードのフリースロットには《金線の酒杯》、《王神の立像》、《エシカの戦車》、《マイトストーンとウィークストーン》を採用した。
《金線の酒杯》は《ボロス召集》を想定したカードだが、《アブザンパルヘリオン》に先に《パルヘリオンⅡ》で走られた際に盤面をリセットする目的で使うこともあり、便利なカードだと感じている。


《王神の立像》は最近採用されていなかったカードだが、チームメイトのアゾリウスコントロールマスターであるiskw氏が「リスト公開制なら取る価値はある」「カーンが通った後に最大限の脅威となり得るし、あることがわかると青白側も動かざるを得なくなる」と話していたため、信頼して採用した。

思わず踊り出す


《エシカの戦車》も当初は不要なカードと考えていたが、後述する対《ラクドスミッドレンジ》相手のサイドプランとして使用するカードである。もちろん、《ニクスの祭殿、ニクソス》を引けてないが、《大いなる創造者、カーン》だけある際の攻め手としても強力な選択肢だ。

《マイトストーンとウィークストーン》も《黙示録、シェオルドレッド》を綺麗に処理出来るため、対《ラクドスミッドレンジ》で欲しいカードだ。「《異形化するワンド》でも最低限の役目は果たせるが、《絶滅の契機》を奇数で打たれる都合上、攻め手となるトークンは残らない方が良い」というチームメイトであり、PT権利を獲得した緑単マスターたかし氏の発言を重く見て採用した。同じくチームメイトのソラエク氏も「青白相手に適当に持ってこられるアーティファクト」と発言しており、そのユーティリティの高さは評価出来るものであろう。


3.無限ループについて

詳しい手順は以下のカバレージに乗っているため、そちらを参考にしていただきたいが、

どういう時に無限に入れるかは直感的にわかっておくと勝率にそれなりに寄与するため、分かっておく必要がある。
簡単にまとめて説明すると条件は盤面に起動済みの《ビヒモスを招く者、キオーラ》、起動前の《大いなる創造者、カーン》、タップ状態の《ニクスの祭殿、ニクソス》、墓地に《ビヒモスを招く者、キオーラ》があり、緑の信心(Dとする)が7以上で(《森呼び自動機械》がサイドにあれば信心6のパターンがあるが、この場合は割愛)あり、浮きマナXがX≧30-2Dを満たす時は無限ループに入れる。
最終的に《鎖のヴェール》を3回以上起動出来れば、《大いなる創造者、カーン》は自壊することができ、《石の脳》を無限回起動して、相手をライブラリーアウトさせた上で、手札のカードを指定して強制ドローで敗北させることが出来る。ターンを返すと盤面で負けている時など、無限コンボを知っているとターンを返さずに勝つことが出来るため、覚えておく価値がある。
これらのコンボについてはBobby FortanelyのYouTubeが詳しいので、詳細を知りたい人はぜひチェックしてみて欲しい。
https://youtu.be/cmPX88HtD1o


4.対《ラクドスミッドレンジ》のプラン

何度も述べたように《緑単信心》は《絶滅の契機》が直撃すると負ける。《ラクドスミッドレンジ》も偶数クロック→《絶滅の契機》という動きを再現性のある勝ち筋として目指してくるため、我々もここから逆算してゲームプランを組み立てる必要がある。
我々が練習段階で感じたのは「土地が詰まって負けることが多い」というものであった。これは考えてみると当然で土地は21枚と絞っており、1マナクリーチャーは片っ端から除去されるのだから、大型クリーチャーまで到達出来ないこともしばしばであった。それならば、「1マナクリーチャーを減らして土地を増やし、どっしりとした重めのミッドレンジとして振る舞えれば、《ラクドスミッドレンジ》に対する勝率が改善するのではないか?」と考えた。サイド後、1マナクリーチャーを減らし、《ダークスティールの城塞》と《エシカの戦車》を投入することでこのようなプランをとることが出来るようになった。
相手もサイド後、攻め手の一部がハンデスや除去といったインタラクションに変わるため、速度は当然落ちる。そのため、こちらとしてはゆっくりと立ち回り、PWを比較的安全に着地させることが出来る。盤面のクリーチャーは《ビヒモスを招く者、キオーラ》定着後に出来るだけ損しないように“場持ちの良い”ものを最低限並べ、《大いなる創造者、カーン》から持ってきた《領事の旗艦、スカイソブリン》や《マイトストーンとウィークストーン》を盤面に残し、《大いなる創造者、カーン》の+1能力でクリーチャー化してライフを攻め続けることでこちらが盤面のイニシアチブを握る。このようなPW機体ミッドレンジプランはかなり感触が良く、《絶滅の契機》をケアしながら再現性を持った攻め方が出来るようになった。このプランをとる上でも土地を伸ばすことは重要であり、そういった意味でも《ヴォリンクレックス》は大きな役割を持つ。対《ラクドスミッドレンジ》が安定しない方はぜひこのプランを試してみて欲しい。プレイ感が独特なため、慣れが必要だが、身につけばかなりマッチ相性は改善すると自信を持ってオススメできる。私も本戦全体的にはかなり負けたが、対《ラクドスミッドレンジ》は2-0であった。

5.最後に

今回のチャンピオンズカップファイナルサイクル3は難解な環境であり、結果自体は残念であったが、個人的には満足の行くデッキ選択が出来たと考えている。ほぼ同じくリストをシェアしたたかし氏がPT権利をとってくれたというのは大きな勇気をくれたし、チームメイトのjg氏も世界選手権の権利を獲得してくれたため、チームマスとんとしてはこれ以上ない結果を得たと言っても良いだろう。
優勝は《緑単信心》であり、悔しさがないと言えば嘘になるが、凝り固まった世間のリストに新たな風を吹かせることが出来れば幸いである。
《緑単信心》は非常にパワフルなデッキであり、この豪快さはやみつきになるのでぜひ皆さんも回していただきたい。
皆様の良きパイオニアライフを祈ります!!



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