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私のチョコラテ

ココアを飲むと必ず思い出す味がある。

メキシコの首都、メキシコシティ南部の世界遺産ソチミルコを訪れた日のこと。

ソチミルコはカラフルな船での遊覧が有名なのだけれど、
なんでも、「ホラースポットがあるらしい」と同じ宿で出会った旅人が教えてくれた。
船をチャーターしないと行けない場所だから
人数を募ってそのホラースポット「人形島」へ行きましょう
と。
日本のテレビでも紹介されたことがあるらしく、声を掛けるとすぐに10人ほど集まった。
みんなでワイワイ電車を乗り継いで船着場へ。

船頭と交渉し、水草に苦戦しながらも
無事人形島に着いてたんと散策。
人形島自体は不気味だったけど人数が多かったこともあり、冷やかし気分で楽しめた。
その不気味さよりも、
そこに辿り着くまでの水草だらけの水路で暮らす人々や自然の美しさに感動。

とても有意義な時間だったのだけれど、予想の倍以上の時間がかかり
船着場に戻ってきた時にはすでに夕方。
運の悪いことに夕立ちに降られてしまった。

誰も雨具なんか持っていなくて
どこか雨宿りできる所を、、と駆け込んだ、食堂らしき場所。

どうやら営業前。にも関わらず快く私たちを受け入れてくれたおばちゃん。
家族営業のようで孫の若い女の子がオーダーを取りに来た。

時間帯的に夕食を取っても良かったのだが、みんな貧乏バックパッカーの身。
夜ご飯を食べて帰る気はない。
(宿でシェア飯を食べた方が安上がりだった)

入店してしまったのだからお茶でもしようと言うことで
ドリンクをオーダーすることに。

誰かが「私はチョコラテにする」と。
涼しくなった夕方、雨に濡れた私たちは次々に
「あ、私も」「そしたら俺も」と結局全員チョコラテをオーダーした。

その時に知ったのだが
メキシコはカカオ発祥の地。
チョコラテと呼ばれるものは日本でいうココアでメキシコではかなり一般的に食堂やレストランのメニューに名を連ねているという。

ふくよかなママン風のおばちゃんが
明るく話しかけてくれて、スペイン語を片言で話せる別の旅人が受け答えし、みんなに訳してくれた。

このおばちゃんがかなりフレンドリーでおもしろくて。
そんなこんなで出来上がったチョコラテは
メキシコ風の大きなマグカップに並々と注がれて登場。

甘い匂いと可愛いルックスに心躍りながら飲んだ、そのひと口目の味が忘れらない。

日本で飲むココアに比べるとチョコレート感が強く甘いのだが、そこにアクセント。
なんとシナモンが入っていた。
このシナモンの香りがクセになりもう一口、もう一口と飲み進め
あっという間にコップが空に。

それはみんなも同じだったようで
口々に「これは美味しい」と。
まぁ雨に濡れて体が冷えていたということも要因かもしれないが。

その日以来、おばちゃんのチョコラテが忘れられずメキシコ滞在中は様々な所でチョコラテの名を見る度にオーダーした。
あの味に敵うチョコラテには出会わなかったけれど、最も手頃で美味しかったのは
xoxo(オクソ)というコンビニで買えるチョコラテ。
50円程だったかな。日本でいうコンビニコーヒーの感覚で、店内に備え付けられたマシンで作るもの。
このチョコラテもシナモン風味で2日に1回は買っていた。
飲みながら街中を散歩するのがとても心地良かった。


日本で生活しているとこのメキシカンココアが時々恋しくなる。
自分で作ろうと試みたことも一度や二度ではない。
でもどうしても現地の味にはできないところが
またメキシコを訪れたい理由になるのだと思う。

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