NFTプロジェクトへの"不可能な期待"/zeneca氏のニュースレターより

NFTインフルエンサー/コレクターの @zeneca_33 氏、最新ニュースレターの一部を要約してご紹介します。

Letter 29: Impossible Expectations(不可能な期待)
今回はジェネラティブNFTの運営側の気持ちが少しわかる内容となっています。

では、さっそく本文です。
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いまのNFT市場の仕組みとして、2つの問題があります。

①誇大広告や投機がマーケットを活性化していること
ほとんどのNFTのフロアプライスに具体的な根拠は乏しく「次にそのNFTを買う人がそれを買うために支払うであろう金額」で設定されています。NFTを買う理由が投機である場合、自分がそのプロジェクトをどう思うかではなく、他の人がそのプロジェクトをどう思うかで決めているのではないでしょうか。

②どんなコミュニティでも、さまざまな要望や期待を持っていること
当然ですが、ほとんどのホルダーが異なるタイミングと値段でNFTを購入する状況になっています。FreeMintであっても、ある人はで0.1ETHで、別の人は0.7ETHで、人によっては10ETHで買うことになります。
・FreeMINT(0ETH)で手に入れた人の期待
・二次流通で0.7ETHで購入した人の期待
当然ながら、この二人がプロジェクトの今後に対して期待しているものは大きく異なるでしょう。
さらに多くの要素があります。
・24時間以内に転売して利益を上げたい人
・1ヶ月くらいのスパンで売りたい人
・5〜10年間の長期保有が目的の人
もちろん決して売るつもりなく購入する人います。
ホルダーごとのタイムラインによって、コミュニティに求めるものは異なります。居心地のいいコミュニティの一員になることを求める人、また、次の作品のホワイトリストへの期待を求める人、現実世界でおこなわれるイベントやグッズなど現実世界でのユーティリティに価値を求める人もいます。
短いタイムラインでみているホルダーは、トークン発行はいつ?エアドロップは?と直接的に価格に繋がるものを欲しがります。
プロジェクト側が、すべての期待に応えコントロールすることは不可能です。この状態では、プロジェクトの運営側の対応は困難を極めます。

短期的な利益を求める人たちにあわせるべきか、それとも長期的な視点で構築していくべきが。もちろん、ほとんどの人が「長期的な視点で構築する」と言うでしょう。しかしフロアプライスが急落し、プロジェクトへの興味が薄れていってしまう時がきたら運営はどうすべきでしょうか?
短期的な価値をあげるために尽力し、大きな声をあげて宣伝し二次流通を活性化することもあるでしょう。それはうまくいくこともありますが、たいていの場合は応急処置に過ぎません。数日でフロアプライスは崩壊してしまいます。

悲しいことに、マーケットにいる人間の大半は長期的な視点など持ち合わせていない。大多数の人々はNFT/クリプトに投資し過ぎています。彼らはETHをやりくりして、購入したNFTのプロジェクトで可能な限り利益を出して、次のプロジェクトに投資しようとしているのです。

数ヶ月どころか、1ヶ月でも「価値があがっていかない」資産を放置しておくことが、受け入れがたい人もいるのです。他の値上がりしているプロジェクトと比較して焦ってしまう。
他者の成功と比較してしまうのは人間の性です。

比較とは、喜びを奪う存在である - 米国 第26代大統領 セオドア・ルーズベルト


上で話した購入者が手に入れたタイミングごとの期待について。
最近ProofやMoonBirdですら、このようなことが起こりました。ホルダーのためにエアドロップされたNFTに過剰な期待が集まり、Reveal後に急落。二次流通で高額で購入した方から非難の声があがりました。

フロアプライスが3万ドルもの高額のNFTを所有したことで、無料のエアドロップやフィジカルのグッズを「無料でもらうことができた」と話す人たちをみることがあります。このような高額NFTを所有していることで、何らかの権利を持っているという意識を抱いてしまうようです。しかし多くの人が忘れているのは、彼らはセカンダリーで3万ドルを支払ったにすぎず、運営チームが3万ドル受け取った訳ではありません。たしかにチームは数%のロイヤリティを受け取り、1次流通で資金調達しているかもしれませんが、そこには大きな違いがあるのです。

仮に10,000人のホルダー全員に1万円のグッズをプレゼントする施策を実施した場合、送料を除いても総額で1億円がかかります。
こういった施策はホルダーに対してよかれと思ってやったことでも、よかった/悪かったという意見がでてしまい、結果的に中立(やってもやらなくても同じだった)ということもあるでしょう。プロジェクト側は税金、給与、運営費、マーケティング、IRLイベント、その他、もろもろの支出を考慮しているのです。

そして、透明性について。
プロジェクトがコミュニティに対してどのような態度をとるべきか、情報をどれくらいオープンにすべきか、確実な答えはありません。1年前の私は、100%オープンで透明性の高いアプローチがベストだと考えていました。しかし、いまはそう思いません。
このブログの冒頭で「市場は誇大広告と憶測によって活性化している」と書きました。完全な透明性を提供し、今後の計画を詳細に開示することは理想的なことに聞こえますが、それは本当に市場が求めているものではありません。人々はちょっとした謎を楽しみます。驚きや推測が期待を生むのです。私は、プロジェクト側が誠実にすべてをオープンにしているにも関わらず、フロアプライスがで停滞してしまう状況を何度も何度も見てきました。
良くも悪くも、数字がずっと横ばいで推移すると人は飽きるものです。
これは一般的にみると正気の沙汰ではありませんが、年10%のROI(投資収益率)は退屈に思われてしまう。だからサプライズや秘密も必要です。
結果的に、最高のコミュニケーション・スタイルは透明性とサプライズのバランスだと思うようになりました。

NFTを買う人の95%以上は、あとで売るときに利益をあげたいと思っているはずです。ほとんどの人は、お金を稼ぐためにこの世界にいるのです。
これはちょっと嫌なことですが、冷徹な真実です。

プロジェクトの成功を示す指標として、最もよく使われるのがフロアプライス(最低価格)ですが、上に書いたようにホルダーの様々な思惑や外的要素に左右されてしまい、プロジェクト運営側にもコントロールできません。
また、短期的なフロアプライスの上昇には有利でも、長期的なフロアプライスの上昇には不利になる施策というのもよくあります。

このことは、プロジェクト運営側の心に重くのしかかります。何をやっても一部のホルダーを失望させることになってしまう。むしろ、よかれとおもってたった施策が、ほとんどの人を失望させてしまうこともある。

さらに悪いことに、多くの場合において運営側には相談する相手がいません。弱みをみせることでフロアプライスが下がったらどうしよう....そんな考えにも至ります。運営側になるまで、この気持ちを完全に理解するのは難しいでしょう。

では、長い間プロジェクトに取り組み情熱を注いできたのに成功しなかった場合、プロジェクト運営はどうするべきでしょう。
どうしようもなくなった時、卑怯な運営は姿を見せなくなったりdiscordに姿をみせなくなったり...いわゆるソフトラグ(ゆっくりとした詐欺行為/運営の逃亡)とよばれる状況になります。これは誰にとっても最悪であり、ひどいことです。

でも...運営側に立って考えれば、あなたたちにも、そのどうしようもない状況と気持ちを、ある程度は想像することができるのではないでしょうか。

では、どうしたらプロジェクトを終了させることができるのでしょうか?
集めた資金がまだ余っている場合は返金し、コミュニティ内の誰かが引き継ぐことを望んだらファウンダーの権限を渡すというパターン。あるいはファウンダーとコミュニティの間でバランスとりながら「それぞれの人生を歩く」ということになるでしょう。こういった状況の完全な解決策は、今後もしばらくでてくるとは思えません。

プロジェクト運営、コレクター、アーティストすべてに言いたい。

今度、あるプロジェクトが下した決断に腹を立てている自分に気づいたら、少し立ち止まって運営側の気持ちになって置かれている状況を考えてみてください。もちろん、本当にバカな決断をする理解できないプロジェクトもあります。しかし、ほとんどの場合、それが善良な人間が懸命に働いている正当なプロジェクトです。彼らは最善を尽くしているのです。少しの余裕と思いやりが長い道のりには大事なのです。

共感が世界を動かす。

お互いの目をとおして見つめあうこと以上に、奇跡をおこす方法はあるのでしょうか?
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー -米国の作家・思想家・詩人

以上となります。

影響力があるNFTインフルエンサーは多数いますが、私はzenecaの考え方がとても好きです。消費者として、つい運営側に過剰な期待をしてしまいます。不満の声をあげてしまうことも多い。日本のNFTのプロジェクトでは、あまり見かけませんが、海外のSNSでは痛烈な批判もみかけます。ただ、多くの場合、運営側もまだ少数の人間やスタートアップであり殴れば傷つく人間であることを忘れてはいけないな、と思いました。

原文 ▶Letter 29: Impossible Expectations ※一部要約しました
彼は無料のメルマガでこのような記事を発信されています。
twitter :@Zeneca_33

●おまけ:これまで私が書いた、zeneca氏関連の要約記事です


書いた人:miin l NFT情報コレクター


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