地方で生きるメーカーサービスマンの未来を憂う

このノートについて

地方でPCメーカーのサービスマン(保守員)として勤務していた私から見た、サービスマンを取り巻く現状と、今後を考えていきます。

私について

高校卒業後すぐに就職し、2019年夏までサービスマンとし勤務していましたが、クラウドインフラに触発され学習、転職を決意し、現在はクラウド専門のインフラエンジニアをしています。


サービスマンを取り巻く近年の現状

人材の高齢化、不足

高齢化が進んでいます。定年により退職する人がいるのは当然ながら、定年後も嘱託で継続勤務している人もいます。また、新卒で求人を出しても募集が来ないことや、内定を出した人が辞退する割合が増加しています。

皆さんもご存じの通り、現在は募集過多の状況であり、就職を支援するWebサービスなども多く存在することから、新卒の人も目が肥えています。肉体労働も多く、夜間当番もあり得る職を進んで選ぶ人は少ないでしょう。

仮想化ありきのサーバー構成、クラウドサービスの台頭、クライアント装置の低廉化

長年企業を支えてきたサーバーもVM化が進み、10年前とは必要なサーバの数も減少しています。ところが、1台の物理サーバーに複数のサーバーを内包している為、緊急の停止予定を入れられなかったり、24時間稼働が当たり前という状況になっています。

また、近年は各企業でもAWSに代表されるようなクラウドサービス導入標準化が進み、特に大手企業からクラウドへの移行を進めています。今はオンプレミスで運用している企業も、既に移行計画の着手をしているでしょう。

パソコンも各社の機能差は無く、低価格な海外勢がより強みを発揮しています。プリンタに至っては非純正のサプライ品、低価格ペーパーによって故障が多発傾向です。修理する側にとって良くない状況ですが、各社はリサイクル業者との裁判など、不要な対応に追われています。

平日のみ契約の顧客は解約傾向、24時間対応などの顧客だけが残る

SLA(サービス契約内容)が比較的緩い、一般企業向けのPCやプリンタは本体価格が安くなってしまった為、保守契約の意味が失われています。「壊れたら買い替える」という判断をしている企業も多いでしょう。

上記の減少に反し、SLAが厳しめな特定業界向け機器(銀行、スーパー、病院、警察消防等)の契約は残り続ける為、売上は下がり、契約内容は厳しくなる、という傾向に変化しつつあります。


現状から思うこと

様々な面から、取り巻く環境は厳しくなっていると感じます。


今後想定されること

サーバー、インフラのクラウド化推進が加速。クラウド化まで至らない規模でもデータセンターへ集約

着々と移行計画を練ってきた企業から、クラウドサービスへ移行していきます。

規模が小さく、クラウド化の恩恵を受けにくいような構成はオンプレミスのまま残るかもしれませんが、データセンターへの集約はあり得るでしょう。大手企業がクラウド化すると、それまでメジャーだった、人の背ほどもある大きなラックは空きが増え無駄が多くなりますから、ハーフラック(半分の高さのラック)に置き換わり、新たに小さな顧客を沢山収容する流れになると思われます。

サーバがデータセンタへ集約される為、保守会社はデータセンタ近くに事務所を移し、契約を総取りすることが予想されます。うまく総取りできた企業は、対応の容易な顧客の機器をメンテナンスすることに集中できますが、あぶれた保守会社はどうでしょうか。

また、このご時世で新入社員が来ることもあまり期待できませんので、高齢化、減少は今後も進んでいくでしょう。

クライアント機器の保守契約は減り続け、特定業界向け機器の製造を終了する可能性

PCメーカーは契約の総取りなどの関係からプリンタを製造していましたが、割に合わないとなると撤退することも考えるでしょう。

また、業界トップでない限り、ATMやレジなど、特定業界向けの機器製造体制を見直すことも出て来そうです。

保守契約料金の低廉化、5年先の収入の不透明さ

既にそうなっていますが、保守契約料だけで給与を賄うのが厳しくなっていきます。最後まで残っていた特定業界の契約もメーカーが製造撤退を決めた場合、次回リプレースに参加できず、収益を失う可能性があります。


地方のサービスマンができることは?

人材不足の対策

高齢化、減少は避けられず、対応策は新しい社員を入れるしかありません。現在は実施していない会社が殆どかと思いますが、インターンシップなどを積極的に導入する必要があるでしょう。

ここまで良くないことを色々言ってきましたが、給与は比較的良い為、そろそろ新卒だけではなく、給与が低く苦労している中途の方を採用する方向にシフトするのも良い気がします。

保守対象機器についての対策

これはベンダー任せになりますから、どうにもできないと思うのですが、サービスマンは「暇な日は凄く暇」ということもあり、そんな日にオフィス内で出来るような新しい事業も開発していく必要があると思います。Webコーダーのスキルを身につけさせてみるとか。

お金の対策

例えば契約金額の高さが保守契約しない理由なのであれば、ベンダーの保守契約を推進するのは止めて、顧客間で独自の契約を作るのも手でしょう。

修理依頼時、金額を負担するのは保守会社になりますが、顧客が正規にベンダーと契約するより安くすることは可能です。(ただ、PCにコーヒーをこぼして黙って依頼してくる人が多かったり、顧客の質は悪くなるでしょう。)


私は、どうしたのか

正直、この職が生き残ったとしても、「5年後もこの職でいられるのか」「それは、やりたい仕事なのか」を考えると、かなり厳しい状況でした。

色々なことを考え、私はサービスマンを退職しました。正直年収はかなり良い部類だったので、迷いました。ここまで色々言ってきましたが、会社の居心地は良かったです。

AWSを学べるスクール(*)でお金と時間をかけて学習し、生まれて離れたことの無かった地元を出て、現在は東京でクラウドエンジニアとして働いています。

まだ辞める数年前のことですが、同じようなサービスマンをしている他社のある人がネットワークエンジニアに転属していたのを見ましたが、彼は未来が見えていたのかもしれません。

私には先見の明はありませんでしたが、20年弱やりましたので、サービスマンはもういいかなという感じです。


※:学習状況はブログで公開しています。
https://miima17.com/raisetech-aws-feature/