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カーテンの向こうに人間の本性を見る

窓の外は壁だった。

衝撃的な結末で知られる道徳教科書にも載っている小説。このストーリーが伝えようとしていることは人間の善なのか、それとも、人間の悪の部分なのか。

あらすじ

ある国の病室で重病人の2人の男がベッドに横たわっていた。窓際の男は、窓の外を見ることが出来ないもう片方の男に窓の外の風景を話すことで時間を潰して居た。窓際の男が語る公園の風景、美しい花など外の世界の様子にもうひとりの男は心が癒やされていた、その一方で外の風景を独占する窓際の男への憎しみも増していった。内心窓際の男の死すら願うようになってしまう。ある日本当に窓際の男は死んでしまう。いよいよ自分が窓際に移れると喜んだ男だが、窓の外にあったのは窓を覆う冷たいレンガの壁だった。すべては窓際の男が彼を楽しませるために作った作り話だったのだ。 出典:Wikipedia

善悪問題

私の心に引っかかっているのは、善悪問題である。窓際の男がしたことは善なのか、果たして悪なのかという問題である。

確かに毎日のように、窓の外の世界をもう一人の男に話していることは善の行いである。毎日嘘をついて、生活することを考えてみてほしい。とても苦しく、辛いことだ。それを窓際の男は毎日やっていた。それを考えると、窓際の男は善人だ。

ただ、窓際の男が死んでしまうと、状況は一変する。今まで男から聞かされた話が全部嘘だったことを知るのだ。

これは果たして善なのか。むしろ今までのことが嘘だったことを知り、男が落胆することをわかっていて話をしていたとしたら…。

決着

私はあえてここで一つの結論を出すことにする。私の見解では、ここでは善悪の問題として片付けるのは間違いなのだ。善悪ではなく、人間のダークな面を一挙に表すものと解釈する。

すると、窓際の男に毎日話を聞いていた男の姿が見えてくる。この男はどういう人物なのか。

人の話を聞いて全部を鵜呑みにする人物かもしれない

人の善意を悪意にしか捉えられない人物かもしれない

人の死を悲しむことができない独りよがりの人物かもしれない

この男は人間の生々しい裏の顔を映し出す鏡なのだ。


参考




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