どうしようもなく好きである

試着室に入り服を脱ぐと、悲しくなる。それは自分のせいであるし、いや、自分以外のだれのせいでもないと言い切れるほどに自分のせいなのだけれど。ともかく私は、自分が想像以上に太っていることに気づいて悲しくなる。そして「痩せねば」とひとつ気合を入れて、店を後にする。思い出してみれば、この試着室から始まる減量を、私はもう何年も続けている。

渡辺直美さんが「日本の女性はみんな痩せているのに、どうしてあなたは太っているのか」と海外の記者の方にインタビューされたという話を、笑いながらしているテレビ番組が印象に残っている。当然、渡辺さんは太ってることを魅力の一つとしているし、パフォーマーとしての才能があるから人気なわけなのだが。
それでも、「どうして太っているの?」という疑問が自然とうまれることにたいして、野暮だ、優しくない、人思いでない、と思うのは、私がそう言われたら立ち上がれないと思うからなのだろうか。

私は食べることが好きだ。どうしようもなく好きだ。
どれぐらいどうしようもないかというと、服屋を出た後、
パンを買って食べ歩きしてしまうほどである。それはある意味、意志の弱さとも言えるだろう。そう、分かっている。けれどきっと私の克服するべき弱さは、「どうして太っているの」の質問にこたえられる勇気なのだと思う。そうしないと、好きなことをずっとしていられなくなってしまうからね。



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