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ベートーヴェンはやっぱり格好いい

「ラ・フォル・ジュネTOKYO 2023」

「ラ・フォル・ジュネTOKYO」は2005年から2019年までゴールデンウィーク期間中に毎年開催されていたクラシックの音楽祭。コロナ禍により2020年に中止されて以来、今年ついに4年ぶりの開催となった。
今まで仕事で行けなかったこのイベントにやっと行くことができた。うれしい。

開催中は会場の有楽町・国際フォーラムのホール、敷地内、その周辺で演奏を気軽に楽しむことができる。
各ホールでの演奏時間は45分〜1時間程(1〜2楽曲)。
チケットもお手頃なので、聴いてみたい楽曲を選んで好きに回ることができる。

このイベントが再開されることを知ったのは、図らずも先月国際フォーラムに立ち寄った時に偶然パンフレットを見かけたから。今年のテーマはあのベートーヴェン。2020年に生誕250周年を記念して開催される予定だったテーマが今年復活したのだ。
開催準備前の閑散とした国際フォーラムの空間でパンフレットを手にし、無意識ながら持つ手に力が入った。
「行かなきゃ!」

ーージャジャジャジャーン。
あの時の自分を思い出すと本当そんな感じだった。

読みすぎてヨレヨレになったパンフレット

ベートーヴェンは音楽史に残る重要な名作曲家であることはもちろん、当時の音楽に新しいものを生み出していった革命的な音楽家(と聞いた)。
クラシックにあまり詳しくない私だけど、個人的にベートーヴェンはロックに感じたりする。魂こもっていて、それを聴けと言われてる感、そして実際に音に身を委ねると感じられる情景と生き様のようなもの。

貴族のための音楽を作曲することが音楽家の仕事とされていた当時を思うと、自分の音楽にこだわったベートーヴェンがとてつもなくかっこいいと感じる。

「田園」と「運命」

当日はお天気も良く、会場は陽気なムード。
相談の末、事前に5/5(金・祝)の2演目のチケットを購入していた。「田園」と「運命」が聴きたかったのだ。
あとで、この全く雰囲気の違う2つの楽曲は、ベートーヴェンが同時期に並行して作曲したものと知る。

購入した演目は以下の通り。
『巨匠は田舎の素朴な自然を歩いた』
東京交響楽団
三ツ橋敬子氏(指揮)
・ベートーヴェン:騎士バレエのための音楽 Wo01
・ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 op.68「田園」
S席3,500円

『ミチヨシはかくベートーヴェン「運命」の扉を叩く』
井上道義氏(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団
・井上道義氏によるトーク
・ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 op.67「運命」
A席2,500円

クラシックでこの内容でこのお値段はお手頃。

会場ではこんな解説ももらえる

「田園」は難聴に苦しんだベートーヴェンが、心の休息に訪れたウィーン郊外のハイリゲンシュタットという田舎町で自然や空気を感じ触発されて作曲された。

くるりの曲に『ハイリゲンシュタット』あったなぁ。
アルバムで次の曲の『ブレーメン』に繋がるあの感じが、旅の始まりみたいで好きだった。

ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 op.68「田園」
Ⅰ.田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め
Ⅱ.小川のほとりの情景
Ⅲ.田舎の人々の楽しい集い
Ⅳ.雷雨、嵐
Ⅴ.牧歌 嵐のあとの喜びと感謝

オーケストラの演奏を直に聴いていると、誇張ぬきで風景や色が湧いてくるようだった。広がる草原、風、鳥の鳴き声、その町で暮らす人たちの踊る姿。
そして指揮棒に沿って川の流れが出現する。(川だ!)
はっと我にかえるとオーケストラが前にあって、でもすぐ雷が鳴って(すごい雨だ!)とまた連れ戻される。
感激を通り越して魔法なんじゃないかと思って聴いた。

演目のあと、田園を鼻歌で合唱しながら付近を散策。
皇居近くのおしゃれなスタバでお茶をして、夜ご飯を食べてから次の演目へ。

スターバックスコーヒー皇居外苑 和田倉噴水公園店

ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 op.67「運命」
Ⅰ.Allegro con brio
Ⅱ.Andante con moto
Ⅲ.Scherzo:Allegro
Ⅳ.Allegro

Allegro、Andante、Scherzo、、ピアノでやったけどなんだっけ、アンダンテは「歩くような速さで、」だったっけ?と話しながら待つ。カジュアルな雰囲気だから、こんな話をしても恥ずかしく感じない。たぶん。

演奏が始まる前に、指揮者の井上道義氏のトークがあった。「運命」という楽曲について、まず「運命」という題名をベートーヴェンがつけたわけではないこと、ベートーヴェンの音楽への試みが詰まった上で無駄を削ぎ落としたすごい曲で、語るには難しい名曲とのお話。
名曲、名画とは一体何か。皆が良いというものなのか?その答えは問いのままだったので、しばらく考える。
私には少し難しかった。

演奏が始まる。
一瞬の緊張感から放たれる迫力と一体感と、強さや恐怖や戸惑いや喜びのようなもの。
楽曲がすごいだけではなくて、指揮者の表情や動きで変わるオーケストラの音のかたち。うまく言えないけれど、別々の楽器が指揮棒にのってどんどんひとつになっていくような。心から感激してしまった。
感じ方としてどうなのかわからないけれど、見ていると私には指揮者がシェフかのように錯覚してきた。シェフの火加減や腕捌きで食材がぐつぐつ煮込まれたり、スープの中で具材が踊りながら良い色に美味しく仕上がっていく様子を感じるようで。いや、シェフが指揮者みたいってことなのかな。とにかくそれらは目の前で生まれて、そのまま体感するはじめての感覚だった。
演奏が終わるとものすごい歓声。
「Bravo!」の声が何度も響いた。

指揮者の井上道義氏は、「運命」と呼ばれるこの楽曲は無色だと感じるとお話しされていた。トーク中ステージ上で出演されていた和太鼓奏者の方は、自分はむしろ色がたくさんあるように感じる、とも。
人や状況によって感じ方が違うけれどなんかすごい、もう一度触れたいと思うのが名曲だったり名画だったりするのかなーと考えながら会場をあとにした。
200年以上も人々を惹きつけるものとは。。

帰りは余韻に浸りすぎて電車を乗り過ごしてしまった。
来年のテーマはなんだろうと楽しみが増えた。
「ラ・フォル・ジュネTOKYO」気軽に体感できるクラシック、来年もありますように。おすすめです。

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