実家の犬が死んでしまった。

実家の飼い犬が死んだ。
遠く離れて住む実家の母と妹と11年5ヶ月一緒に暮らしていた。
私が実家を出てから飼った犬だったから、帰省の時に遊ぶくらいの犬だった。
彼女が来てから、母が少し明るくなっていった気がした。
クリーム色の毛をした小型犬で、母に甘やかされて育ったから、家族で一番のわがまま娘だった。
彼女の一生はほとんど家の中で過ごしたから、他の犬や人間とも滅多に合わず、少なくとも社交的ではなかった。
新しい人が家に入ってくると、怯えながらも強がって吠えた。
でも、時々ながら帰ってくる私のことは家族とわかっているようで、うれションしながら迎えてくれていた。
あの臭いウンチを片付けてあげたのが功を奏したのか。
朝、犬の死を告げるメールをくれた母に電話をしてみると、第一声はいつも通りに応えたが、「大丈夫?」と聞くと次はもう泣き声になっていた。
妹の悲しむ声も聞こえる。
ビデオ通話で死に顔を見せてもらう。
目が開きっぱなしで、笑ってしまいそうになる。
母と妹は犬に触っているが、私は触れないから彼女の冷たさがわからない。
「どうしていいかわからない」
母が言う。私もわからずに、電話をしながらペット火葬を検索する。 
また連絡する、と言って母が電話を切る。
私は夫に犬の死を伝え、母と妹の悲しみを伝える。
夫は私を抱きしめる。
今度は私が慰められる。

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