豆苗
日の当たらない狭いキッチンの端っこで、豆苗がヒョロヒョロに育っていた。
1回目を料理に使ってから、3日目か、4日目か、もしかしたらそれ以上かもしれない。「ああ、使わなきゃな」と思いつつ、料理する時になると忘れて他のものを食べていて、気がついたらやけに長く伸びていた。
99円の値をつけられてスーパーの棚に並んでいた時に比べて、白くて、細くて、弱々しい。そりゃそうだ。一度切り取られた後に残った体力を振り絞って、この暗いキッチンの隅っこで孤独に伸びたのだ。
「できるだけ長く伸びる」という目的のために、太さを諦めて、濃度を薄めて耐え忍んでいる(ようにみえる)豆苗をながめて、「わたしかよ」なんて呟いていた。元々ない体力をどうにか長持ちさせながら、毎日、1日を乗り切るために一生懸命。一気にギアを上げると折れてしまうので、濃度を薄めて耐え忍ぶ。働かなきゃいけない平日に元気がなくなることが心配で、休日もできるだけ何もしない。
ひょろひょろ伸びて、伸びた先にどうなるのかも分からず、いつか報われることを期待して、とりあえず伸び続けようとしている。
心の中で「君も大変だね。」なんて話しかけて、「明日絶対、美味しく食べるよ。」と約束をしておいた。
もう力を振り絞って伸びたりなんかしなくて良いからね。
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