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「褒めてのびのび育てましょう〜」を否定する人がしがちな誤解

叱るのNG、軽いリードショックダメ、犬が嫌がることをしない、嫌なことは回避。

こういう指導をするドッグトレーナーに疑問を持つ人がいるようです。

蝶よ花よで育てたら、悪ことを悪いと覚える機会がなく、世間に迷惑をかけるのではないか?失敗から学べるはずのものを、お膳立てして育てたら、学ぶ機会がなくなってしまうではないか!というのが、よくある主張です。

とはいえ、このような疑問を持つ方も、体罰はすべきではないと思っているし、やたらめったら厳しくすればいいというものではない、ということも同時に考えていることが多いようです。

時に叱ることは必要という真実

ダメなことはダメだと教えなければならない

この主張は、たくさん耳にします。それはある意味、当たり前のこと。なぜなら、私たちはそうやって育てられたからです。

人の迷惑となる行為は叱られ、親から見て無駄だと思うことも注意され、怠けているように見えれば、先生に怒られる、というような子供時代を過ごした人も多いはず。

ダメなことをしている時に叱って、それをダメだと言うことをわからなせなければならない、という固定観念が染み付いているのだと思います。

失敗を叱るより、能力向上を褒める方が効果的であることは、科学的に証明されている

実は、随分と昔から、失敗を叱るより、能力向上を褒める方が効果的だということは、科学的にわかっていることなのです。

人も動物も、子供も大人も、みんなです。

この時の褒める対象は、性格などではなく、行動です。

望ましい行動が将来的にもっとたくさん見られるように操作していくことで、その能力が向上し、社会的にも適切な行動が取れるようになっていきます。

ちなみに、心理学者であり行動経済学者のダニエル・カールマン著「ファスト&スロー(上)」で、この事実をイスラエル空軍の訓練教官に力説した際のエピソードが載っています。

力説された訓練教官は、カールマンの力説を聞くと、

「飛行訓練生には当てはまらない。なぜなら、訓練生を褒めた次の日は失敗し、失敗を叱った後は、成功するのだから」と言ったそうです。

このエピソードは、平均への回帰を解説する章の要約ですが、

要は、訓練生の成功と失敗に影響したのは、教官の指導ではなく、平均への回帰だということ。要は偶然であるということ。

叱る方が効果的だと説明する場合、そのほとんどは、体験談であることが多いです。

体験として身についていることは、本当に指導者本人の行動が影響したかどうかは調べていないし、調べようもないのです。

嫌なことを回避することへ誤解

嫌なことから逃げていてばかりでは成長しない!と思うのは理解できます。私たちは、楽な選択肢ばかりを選択していても、成長しません。

かといって、難を選び、一世一代の大勝負に出て、大負けを喰らう必要もありません。

自己成長のためには、適切な現状把握とリスクについて考えて、少しずつ挑戦していくことが大切です。

犬についても同様のことが言えます。

現状で、対応できるスキルを全く持ち合わせていないのなら、回避するのが正解です。

太刀打ちできな状況を回避した上で、基本的なスキル向上を地道に積み上げ、それまで回避せざるを得なかったところまで、少しずつ近づけます。

基本的スキル向上のためには、褒める方法を取る方が効果的だということは、すでに、わかっていることです。

科学を無視して、自己の経験に頼ることの危うさ

私たちは、想像以上に物事を知りません。そして、経験したことを真実だと思い込みます。

情報を調べる際も、確証バイアスが働き、自分が良いと思った情報を集めることで、さらに、自分の考えは確固たるものだと信じ込みます。

自分自身のことだけならば、自分が失敗するだけなのでいいですが、他者に対して影響する物事の場合は、慎重に考えたいものです。

犬たちは、人間の考えによって翻弄されます。

「能力向上のためには、褒める方が効果的である」

これは、事実なので、しっかり勉強して、うまく利用できる飼い主になれば、中途半端な褒めるトレーニングや、根拠のない叱る方法に惑わされずに済むはずです。

多くの場合、知識不足かスキル不足(またはその両方)で、ドッグトレーニングがうまくいきません。

家庭犬のトレーニングは、飼い主にも上手にできるようになります。

叱る練習より褒める練習をすることをお勧めします。









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