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満員電車

今朝、いつも乗る電車が遅れた。
なんでも2駅手前の駅で〇〇点検のため停止中とのアナウンス。
(○○は何度聞いても聞き取れなかった。)

実質は5、6分遅れただけだったが、普段から満員でやっと乗り込む感じ、
多分かなり混んでいるのだろうなあと覚悟する。
覚悟とは、Kが大丈夫ではないかもという覚悟だ。
絶対ではないけど危ないかもと。

でも、乗り換えの駅まではたった一駅。
乗ってしまえば何とか一駅くらいは頑張れるのではないか?
希望的観測もある。
判断のつかないまま、ホームの先頭に立っていた我々は人々に押されるように電車に乗り込んでしまった。

思った以上にゲキ混みで、我々か乗り込んだ時点でもう満員だったのに、
そこから押されに押されて、ドアが閉まったときには人の塊がドア付近に圧縮されて詰め込まれている。

kは大丈夫だろうか?何とかもちこたえてくれ。(祈る)
有無も言わさず押しこめらたKは眉根を寄せて明らかに不快な感じ。
そして我慢はつい決壊して、あたりの人をガリガリと引っかきはじめる。
他者を攻撃させてはいけない。母は心では慌てて、表面上は穏やか~に「やめよううね」と健人の両手を捕まえる。

攻撃態勢に入ったKは、両手の自由が奪われると、噛みつきが始まる。
頭突きも加わる。使えるものすべてを総動員してくる。

だから普段、Kが切れると、Kの安全を確保しながらとにかく距離を置くことを鉄則にしている。
でも今日はそうはいかない。他者をケガさせてしまうわけにはいかないし、
距離を置くスペースもない。
今は母は噛まれるのが、一番痛くない選択だ。

Kの両手をつかみながら、
「もうつくよ~、すぐだよ~」とのんびりモード全開で話しかける。
Kは言葉によるコミュニケーションは苦手だが、母がどんな心の状態であるか感じるのは敏感である。
ここはピリピリしてしまうと、kもピリピリに共鳴してしまう。
だから母は自分をもだますようにのんびりモードを演じる。

両手を束縛されたKは今はそれが一番不快とばかりに、手を抜こうとする。
kの希望はわかる。離すことが吉と出るか凶と出るか?
母の戸惑いを話すように、「離しても大丈夫かな?他の人引っかいちゃだめだよ」と言ってみる.
Kが「うん、うん」と頷く。
Kの「うん」ほどあてにならないものはないけど、
根拠もなく信じたくなって、離してみる。

自由になった手は多少怪しい動きもあったものの、どうにかこらえて
無事密室満員電車から解放された。

kは開放された勢いそのままにしてスキップして人混みから抜け出そうと急ぐ。
母はホッとしながらKを見失わないように小走りして後を追う。
心臓がもたない!






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