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2021年を振り返る

さてさて、年末になったことだし、1年の振り返り記事を書くか…とnoteを開いたところ、前回の記事が「2020年を振り返る」とあります。ああ、1年って早いものですね。
実は、いくつか書き溜めた記事もあるのですが、最近は、芸術や世界について思うことがあっても、それを口にしようとすると、何か大きなものに対する畏れが湧き上がってきてしまって、なかなか公にすることができません。(昔はあんなこんな、青いツイートもしてたなあ…)
今年もたくさんの場所で、たくさんの方々にお世話になりました。感謝の気持ちを持ちながら、振り返ってみたいと思います。

1月

前年の12月に日本で2公演させていただき、ほっと一息ついた後は、第5回シュニトケ国際作曲コンクールに向けて、チェロと2郡の弦楽オーケストラのための作品を書き上げました。
ピアノの方といえば、その2ヶ月後に控えていたシュトックハウゼンピアノ曲I-XI全曲演奏会に向けて、本番をあまり入れずに準備していました。特に、私にとって新しいレパートリーであったピアノ曲VIを集中的にさらっていた時期です。

2月

引き続きシュトックハウゼンをさらう日々でした。
2月上旬には、アンサンブル・アンテルコンテンポラン/モデルン/ルシェルシュのヴィオラ奏者たちで作られたTrio Estaticoさんによる、作曲ワークショップに選んでいただき、初めてのミーティングに参加しました。様々なヴィオラのテクニックや、レパートリーについて学ぶ貴重な機会となりました。

3月

3月14日には、トーキョーコンサーツ・ラボにて、「シュトックハウゼンピアノ曲I-XI全曲演奏会」を開催させていただきました。
シュトックハウゼンのピアノ曲を全て人前に出したいけれど、そんなこと出来るかしら…と思い始めたのが、留学してすぐ、2019年秋頃でした。25歳になる前に、この巨大で、豊かなレパートリーを手の内に入れるのが目標でもあったので、それを日本のお客様に見届けていただけたのは、本当に嬉しいことでした。
メルキュール・デザール誌に秋元陽平さんが載せてくださったレビューがこちらになります。

3月20日と21日には、前年から延期になっていた、「遊空間プロジェクト」の撮影を行いました。3台ピアノのための拙作『環』を、素晴らしい音楽家のお二方、大瀧拓哉さんと廻由美子先生と共に初演させていただいたほか、お二人とのトークも収録いたしました。ぜひご覧くださいませ。

4月

1月に書き上げたチェロと2郡のオーケストラのための作品は、コンクールの本選に残り、4月1日ウクライナにて初演されました。ありがたいことに第2位に入賞することができました。
大きな編成を鳴らすのは、かねてから目標の1つでした。この状況で立ち会うことは叶いませんでしたが、リハーサルや準備を含めて、多くを勉強させていただきました。

4月末には、フランクフルト音楽・舞台芸術大学の現代音楽祭"Neue Musik Nacht"にて2曲演奏させていただく予定でしたが、感染症の影響で中止に…

5月

ヴァイオリンとチェロのための作品を書いていました。様々なきっかけで、日本人として作曲するとはどういうことだろう、と底なしの悩みに身を沈めていた時期でもあります。未だ演奏されていませんが、初演の機会がありますように!

6月

年に一度、オーディションで選ばれた若い世代の音楽家が集まるEnsemble Ulyssesに参加することになりました。
パリでの演奏会は、マニフェスト音楽祭の一環として、ピエール・ブルーズさん(アンサンブル・アンテルコンテンポラン次期音楽監督)の指揮で、Feliz Anne Macahisさんの新曲、グリゼー、センドを演奏しました。
アンテルコンテンポランの方々ともご一緒させていただいたのは、とても貴重な経験となりました。

翌週には、パリから1時間ほどのところにある、ロワイヨモン修道院での演奏会でした。
私が受けた第13回オルレアン国際ピアノコンクールの審査員でもあった、Jean=Philippe Wurzさんの指揮で、Macahisさんの作品、センド、クセナキスを演奏しました。
とても愉快な、しかし刺激をたくさんくれるメンバーでした。


7月

学校の試演会/試験シーズンです。なかでも、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を、ピアノ伴奏ながら初出ししたのは、フランスでの現代音楽漬けの後、バランスを保つためにとても効果的でした。

8月

初旬、イタリアのmdi ensembleが主催する作曲マスタークラスに選んでいただき、メナッジョに行ってきました。フランチェスコ・フィリディさん、マウロ・ランツァさんのレッスンを1回ずつと、アンサンブルのメンバーに、曲を音出ししていただく時間があります。同時期にダルムシュタット夏期現代音楽講習会の作曲クラスも受講していたので慌ただしかったですが、先生方の仰ることや、同世代の作曲家の精巧さは、私の心に何かを鋭く刻みつけました。
(mdi ensembleさんとは、ピアニストとして2018年オルレアン国際ピアノコンクールの本選で共演させていただいた以来でした。作曲家としての姿をお見せできて、嬉しかったです。)

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8月中旬以降は、オーディション用録画のために練習しながら、数ヶ月後に控えていたテッセラ音楽祭の委嘱作品を書き直していました。
下旬には、先のTrio Estaticoさんによる2回目のワークショップがあり、スケッチを音出ししていただきました。

9月

9月上旬には、アンサンブル・モデルン・アカデミー生として、インスブルックのKlangspuren音楽祭にて演奏しました。
湯浅譲二さんの"A winter day"を仲間と、アドリアーナ・ヘルツキーさんの大作"Tragödia"をヨハネス・カリツキーさんの指揮で。

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10月

前月の下旬からバルセロナに入り、Mixtur音楽祭にてベアト・フュラーさんの指揮で演奏しました。これも6月のEnsemble Ulyssesから続いているプロジェクトです。
フュラー2曲、ジョナサン・ハーヴェイ、José Río-Parejaさんの新曲という、なかなかハードなプログラムを短期間で仕上げました。

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10月22日には、ドイツのビーレフェルトで行われた映画音楽祭のオープニングにて、アンサンブル・モデルントロンボーン奏者Uwe Dierksenさんが無声映画"Menschen am Sonntag"に作曲した音楽を演奏しました。

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翌々日の24日には、ストックホルムのMonopiano音楽祭にご招待いただき、シュトックハウゼンピアノ曲I-XI全曲を演奏してきました。様子がYouTubeに載っておりますので、ぜひご覧ください。

11月

11月12日には、小さい頃から勉強させていただいていたテッセラ音楽祭に出演させていただきました。プログラムは自作品のみ!という個展スタイルでしたが、共演の薬師寺典子さん、松岡麻衣子さん含め多くの方々の助けがあり、無事に終えることができました。
特に委嘱作品『あなたとわたし』は難産でしたが、作曲中のあの苦しみは、耐えてよかったなと思います。


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12月

ドイツに戻ってすぐ、フランクフルト音楽・舞台芸術大学の作曲科卒業試験にて、Feng Baoさんのピアノ作品2曲を演奏しました。

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また、Trio Estaticoさんとの1年にわたるワークショップのまとめとして、拙作『こえ』を演奏していただきました。録画されたものが、新年1月1日のオンラインコンサートで初演されますが、その前に、作曲家インタビューしていただいたものをご覧ください。


まとめ

感染症を気にしながらの生活が続きながらも、今年は大きな舞台に立たせていただくことも増えました。
とはいえ、日々これがしたい!あれがしたい!に心身が追いついていかない現実…
最近はバランスをとる、ことに心を配りつつ、来年はいくつか大きな挑戦も控えておりますので、頑張ります。
日本の皆さまにまた聴いていただける日が、近いうちに来ますように!

2020年12月30日 小倉美春


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