見出し画像

「新型コロナワクチンの添付文書に『保険給付の対象外』と書いてある」という話を聞いたら見てほしい記事

前回書いた記事に関連するお話です。

「でも、ワクチンの添付文書に『保険給付の対象とならない』と書いてあるけど?」
という意見を見かけます。
結論から言うと、この保険は「生命保険」のことではありません。
ワクチンの費用が「健康保険」の対象外=実費負担ということを言っているだけです。
もちろん今回のワクチンは国が買い上げているので無料です。

詳しくは以下に説明したいと思いますが、結構長いので、今までの説明で納得したという方は無理に読まなくても大丈夫です。

ワクチンの「添付文書」って?

そもそも「添付文書」とは何でしょうか。

公益社団法人日本薬学会の「薬学用語解説」によると

薬事法に規定された医療用医薬品の製品説明書で、医師、歯科医師、薬剤師に対する基本情報を製薬企業が作成し、医薬品の販売包装単位ごとに添付(封入)されることが義務付けられている。組成、用法・用量、薬効薬理、体内薬物動態、副作用、使用上の注意などが記載されている。(2009.1.16 改訂)
https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi/wiki.cgi?%E5%8C%BB%E7%99%82%E7%94%A8%E5%8C%BB%E8%96%AC%E5%93%81%E6%B7%BB%E4%BB%98%E6%96%87%E6%9B%B8

とのことです。
記載内容は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」第五十二条に定義されています。

要は「医療従事者向けに医薬品の製造販売業者が作成した説明書」ということです。医療従事者向けなので、基本的に一般人にわかりやすい表現はされていません。

問題となっている表現について

この「添付文書」にある表現が、今回問題となっています。
よく引用されている「コミナティ筋注(製造販売元/ファイザー株式会社 
技術提携/BIONTECH)」の添付文書を見てみましょう。

25. 保険給付上の注意
本剤は保険給付の対象とならない(薬価基準未収載)。
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/672212_631341DA1025_1_02#HDR_ConditionsOfApproval

確かに「保険給付の対象とならない」と書いてあります。
これだけだと何の保険だかよくわかりませんが、気になるのは「(薬価基準未収載)」の部分です。
薬価って?未収載って?
どうもここから調べた方が良さそうです。

「薬価基準」って?

厚生労働省によると

薬価基準は、医療保険から保険医療機関や保険薬局(保険医療機関等)に支払われる際の医薬品の価格を定めたもの。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000144409.pdf

とのことです。

厚生労働省が薬事承認を行った医薬品に対して、様々なプロセスを経て「薬価」が定められ、その医薬品をいくらで提供するかが決まっています。
医療保険というと生命保険会社が出しているものを想像しがちですが、厚生労働省が定義している「医療保険」は「公的な医療保険」つまり「健康保険」のことです。

日本は「国民皆保険制度」が採用されており、原則全国民が健康保険に加入しています。
3割負担とか、後期高齢者とか言われているあれです。
健康保険のおかげで、病院での診察や薬の処方の際、保険証を出すと実際にかかった費用の一部だけ払えば済むようになっているのです。

薬価基準未収載!それって危ない?

それでは、その「薬価」が定められていないワクチンは厚生労働省に薬事承認されていないのか?というとそうではありません。
「薬事承認されているけれど、健康保険対象外」
な医薬品が存在します。

「健康保険」が対象にしているのは「かかってしまった病気」に関するもので、ワクチンのように「予防する」ものについては原則対象外なのです。
ちなみに妊娠、出産も例外はありますが基本は対象外です。

今回の「新型コロナワクチン」は国が買い上げているため無料で接種できますが、任意接種のワクチンは原則、自己負担になります。
健康診断やワクチン、妊娠出産については自治体や所属健保組合で独自に補助を出しているところもあるので、すべてが自己負担になるとは限りませんが、健康保険は使われていません。

試しに「インフルエンザHAワクチン『第一三共』シリンジ0.5mL(製造販売元/第一三共株式会社)」の添付文書を見てみましょう。

25. 保険給付上の注意
本剤は保険給付の対象とならない(薬価基準未収載)。
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/631340FG1090_1_05/?view=frame&style=XML&lang=ja

一言一句同じ言葉が書いてあるのがわかります。

おわりに

3行で書いたことを詳しく書いたら、思いのほか長くなってしまいました。
個人的には「医療保険」という言葉が一般的に言う「健康保険」と「(主に生命保険会社が提供している)医療保険」の両方に使われているのがちょっと紛らわしいなと思いました。

ワクチン接種は任意のものですが、正しい情報を元に打つ打たないを判断していただければと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?