ルールスを取り巻くヴィンテージ環境

皆さんおはようございます。冬宮みはるです。
皆さんもご存知の通り、5/18の禁止改訂によりヴィンテージで《夢の巣のルールス》が禁止となりました。その直近のVintage Challengeのトップ8が全て《ルールス》だったことは周知の事実かと思いますが、では《ルールス》が出た当初はどうだったのか皆さんはご存知でしょうか。
今回はそんな《ルールス》が生まれた時から、禁止になるまでの歴史を振り返っていこうと思います。

ルールス誕生

日本時間4/16午前4:00。Magic Onlineにて《ルールス》は実装されました。
当時も《ルールス》のカードパワーには注目されていましたが、誰もがこぞって使うような使用率ではありませんでした。というのも、当時のルールスを使用するデッキは「MUD」「ジェスカイアルカニスト」「逆説ストーム」の大体3種類に分かれており、中でも前者2つのデッキが中心となっていたからです。
特にルールスMUDは《ルールス》のためだけに色マナを入れるというMUD界では前代未聞の構築であったために注目され、使用者もそれなりに居ました。
しかし、ルールスMUDはすぐに衰退の一途をたどることとなりました。《ルールス》を採用するためだけに《三なる宝球》や《神秘の炉》、《磁石のゴーレム》といった制限カードを諦めなければならず、その上で色マナもロクに入っていないので安定して《ルールス》を唱えることが出来ないため、リスクに対してリターンが見合っていないというのが理由だったと思われます。後に《彩色の星》を採用することで《ルールス》の色マナを確保しつつ、さらにはこれを《ルールス》の能力で使い回すことでアドバンテージを稼ぐといった形で、ルールスMUDは復活を果たしますが、それも一瞬の出来事でした。後述するデッキ達のパワーに付いていけなくなったからです。

フェアデッキ期

《ルールス》の実装から少し経過し、《ルールス》を使用するデッキは主にフェアデッキである「墓荒らし」と「ジェスカイアルカニスト」の2つが主流となります。この2つのデッキは《ルールス》を使用するためにプレインズウォーカーを手放すことになりましたが、元々プレインズウォーカーはアドバンテージを取るためのものであり、それが《ルールス》にとって変わっただけなので大したリスクを背負うことなく《ルールス》を使用できるといった点が注目されました。
同時に、この時期からメインボード最強と呼ばれた「ドレッジ」は環境から姿を消すことになります。理由は、前述したルールスによるアドバンテージ源として《虚無の呪文爆弾》《魂標ランタン》がメインボードに搭載されるようになったためです。これらのカードはルールスミラーを見越してのカードではありますが、墓地に著しく依存したデッキであるドレッジはメインボードから連打されるこれらの墓地対策に非常に厳しい戦いを強いられたため、第一線から退くこととなりました。
また、この時期には「エスパールールス」という新たなデッキも誕生しました。パーマネントは全て2マナ未満という《ルールス》の条件は必然的にデッキ内の平均マナコストが低くなるため《闇の腹心》と相性が良く、さらには《ルールス》の絆魂も相まって強力なシナジーを発揮していました。さらに《死の重み》や《浄化の印章》、《炎の印章》といった今までヴィンテージでは見かけることのなかった怪しいカード達が《ルールス》で使い回せるがために、平然と採用されるようにもなりました。
既にこの時期には《ルールス》の使用率は50%を越え、Vintage Challengeのトップ8のうち、6人以上は《ルールス》を使用しているといったルールス環境になっていました。

コンボ期

《ルールス》に支配された環境の中で、ついに《ルールス》を利用したコンボデッキが頭角を現します。その名も「ルールスブリーチ」です。《ルールス》を採用したコンボデッキは既に「逆説ストーム」が存在していましたが、あくまでも「逆説ストーム」はコンボ失敗時のリカバリーや、コンボ成立までのアドバンテージ確保として《ルールス》を利用していただけで、直接コンボに組み込んでいるわけではありません。
しかし「ルールスブリーチ」は《思考停止》によって墓地に《死の国からの脱出》を墓地に置き、《ルールス》によってそれを釣り上げてコンボを開始するといった《ルールス》そのものを前提としたコンボデッキとなっています。かつてレガシーで使用されていた《思考停止》+《死の国からの脱出》+《ライオンの瞳のダイアモンド》のコンボをそのまま利用しているだけですが、このコンボは《思考停止》によって墓地が肥えた中に《ライオンの瞳のダイアモンド》が存在していればいいので、実質的に《思考停止》+《死の国からの脱出》の2枚コンボとも言えました。しかし、ここに《ルールス》が加わることによって《死の国からの脱出》を《ルールス》の能力で再利用できるため、実質《思考停止》1枚からコンボが揃ってしまうことも多々あります。さらには《ルールス》はコンボ始動だけでなく、《死の国からの脱出》をカウンターされた後に再度《死の国からの脱出》でコンボを仕掛けるといった、マストカウンターの水増しにもなっており、そのためコンボ成功率が非常に高い強力なデッキでした。
オンライン上で行われた「添削杯」(冬宮が解説を務めました)においても、決勝戦の最終試合にこのデッキが1ターンキルを決めて優勝をするといった場面を見受けられ、さらにはVintage Challengeでも入賞率の高いこのデッキこそ、《ルールス》を最も生かせる最強のデッキといっても過言ではないと思います。

終焉

しかし、そんな《ルールス》も5/18の禁止改訂により相棒というメカニズムの都合上、制限にしても全く意味がないといった特別な事情を踏まえてヴィンテージで禁止カードとなりました。これによって約1ヶ月に渡ったルールス環境は終焉を迎えました。
とはいえ、相棒メカニズムそのものに変更があったりした際はすぐに《ルールス》は禁止から解放されると思うので、未来ではまた《ルールス》の姿を見るかもしれません。しかし、当然その場合は実質的な弱体化を受けている筈なので、ここまで支配的な環境になることは2度とないと思います。
長いヴィンテージの歴史において、たった1枚のカードがここまで環境を支配した前例はないと思うので《ルールス》は間違いなくヴィンテージの歴史に名を刻むカードになりました。

そして伝説へ

そして現在。あまりにも《ルールス》は神格化され、ヴィンテージをやらない方々にまでその噂は轟くこととなりました。そのせいか、絶対にテキストを読んでないであろう方々が雰囲気で《ルールス》を語り、噂話に尾鰭が付き、とてつもない話が流れて少し話題となりました。「《ルールス》+《Black Lotus》で無限マナ」だの「《Time Walk》で無限ターン」だの。
そもそも《ルールス》のテキストを読んでいれば「《ルールス》の能力はターン中1回」であることも「再利用できるのは2マナ以下のパーマネント」であることも理解できる筈なのですが……。

終わりに

このルールス環境でヴィンテージをプレイできたこと、さらには《ルールス》と戦っている様を動画に残せたことは、ヴィンテージプレイヤーとしても動画投稿者としても非常に貴重な体験になりました。
ですけど、どんな事情であってもカードパワーを理由に、ヴィンテージで禁止にしなければならないようなカードは2度と生み出さないでほしいです。どんな闇も受け入れるのがヴィンテージだと思っているので。冬宮個人としては《ルールス》も禁止にしてほしくないんですけど、まぁ冬宮に決定権はないのでただの願望です。

最後に、毎度の事ですけど是非ともチャンネル登録をお願いします。毎日ヴィンテージの動画を投稿してるので、是非ともお願いします。
《ルールス》と戦ってる動画もありますよ。

では、今回はこれで終わりにします。
それでは皆さん、おやすみなさい。冬宮みはるでした。

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