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■エピソード3「不安と憔悴に包まれた、ビジネスホテル生活」

ほぼ徹夜で完全に頭がボンヤリしている中で、充電中のスマホから着信音が鳴り響きました。慌てて電話を取ると、地元の消防署さんからでした。慌てて昨日の消火活動のお礼を言うと「いえ、消火活動は我々の義務ですから。……それより、朝早くから申し訳ありませんが、昨日、警察から事情聴取書のコピーが届いていますので、確認を行いたいのですが今からご足労願えませんでしょうか?」という言葉が。徹夜状態・昨日の夜から何も口にしていない極限状態での事情聴取アゲイン……。事前にツイッターで、優しい人から「罹災証明書を貰っておくといいですよ。仮住まいの公営住宅やアパート等、優先的に探して貰えます。」と教えて貰ったので事情聴取がてら、罹災証明書を発行して貰いました。雪の降る寒い中、消防署員さんの出してくれたホットコーヒー、暖かかったなあ……。

……一通り、事情聴取を無事に終えた結果、警察と消防の両方で「タバコの火の不始末ではなく、コンセントからの漏電」という結論に、やっと至ったみたいです。濡れ衣を着せられなくて良かった……。

さて、一息ついてはいられません。まずは、焼失した銀行ふたつの通帳発行、次いで、実印の作成、そして市役所で罹災証明書を提示して、担当の方に住処の手配をしてもらわなければなりません。こちらは、スムーズに不動産屋さんに取り次いで頂き、「次の日に直接来て下さい」とアポを取る事に成功しました。この辺りで、車のガソリン残量がヤバくなって来たので慌てて給油。この時点で午後2時を回りました。ちなみに、食欲ゼロ。朝ごはんは、泊めてもらったビジネスホテルの朝食サービスで、野菜ジュースとパン1個を無理やり詰め込みましたが、不眠と焦燥感で、この後も「ご飯食べられない・眠れない」状態は、ホテルのチェックアウトの日まで続く事となります……。決定打となったのは、通帳を再発行した時の理由を告げると、「この度は、本当にお気の毒様です……」と言いながら、偉い人っぽい人が奥からやって来ました。その偉い人は、銀行の支店長さん。火事で全焼した、ぼくの膨大なゲーム・本、CD等がが全部焼失した旨を告げると支店長さんは沈痛な面持ちになり、「……家財保険、入られていませんよね……? ……お気の毒ですが、それに関しましては、補償致しかねます……」と一言。

目の前が真っ暗になりました。3000本近くあった、大切なゲームコレクション、300枚近くあった音楽CD、そして、外付けハードディスクにパンパンに
詰まっていた、20テラ近くあった大切なデータ達……。その場に倒れそうになるのを必死で堪えながら「か、家財補償に入っていないんじゃ、仕方ありませんよね……」と愛想笑いを返すのが精一杯でした……。

とりあえず、当面の必要品を近所のスーパーで買い込み、夕方まで仮眠を1時間ちょい取った後、離れ離れになってしまった家族たちに電話をかけます。両親は、ぼく程には憔悴しておらず割と元気な様子。幸いにも嫁さんと子供たちは元気な声が聞けてホッとしました。子供達は、通い慣れた嫁さんの実家で、居心地が良いんでしょう。子供たちが「父さん、ニンテンドーswitchの新しいのを買って! 遊べなくてストレスが溜まる!!」と言っていたので、買いに行こうとしたら、嫁さんの弟君が子供たち二人にニンテンドーswitch二台を買い与えてくれたみたいです。有難いなあ……。

そして、日が暮れる前に「焼け落ちてしまった、元我が家」に車を走らせ、スマホで出来る限りの写真を撮りました。撮りまくりました。100枚ほど撮影しながら「ここが、今朝まで過ごしていた場所なんだよなあ……」という思いがこみ上げ……その場で泣いてしまいました……。

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