運勢を決める、五つの力

チベット仏教では、「運勢」をどう理論的に考えているのでしょうか？

これから述べる情報は、私たち日本人にも有益でしょう。今の日本の宗教伝統には、運勢や運気についての共通した理論が失われているように思えます。今は新興宗教や特定の個人（占い師や祈祷師など）が独自の理論や見解を述べるものの、それが日本人の共通基盤かというと、そうではありません。

これから述べるのは、チベット文化圏の共通基盤です。
といっても仏教の伝統というよりチベット土着の思想が色濃いので、そこはご理解ください。


チベット占星術では、私たちの人生を左右する重要な要素として「五種類の生命力ソク」があるとしています。

これら五つは現世に強い影響を及ぼすため、無視できません。
そして「運勢」は、この五つの相互作用といえるでしょう。

五種類の生命力ソクは暦法で強弱を算出することができます。
毎年のチベット暦本にも、生まれ年ごとの強弱が記されています（下の写真）。

今回、気吹乃宮ではチャートをチベット語から訳して、皆さまに開示します。おそらく日本で初めての試みでしょう。

上の写真：
チベットの暦本と、五種類の生命力のチャート。

１．ソク（生命力／སྲོག་）

ソクは男女を問わず、五種類の中で最も大切な力です。私たちの生命・活力・気力の本質を表わします。この力は心臓に宿っており、生命を維持し、生命風ソクルン（体を構成する五つの主要な風プラーナの一つ）を維持します。

ソクは体と意識を相互に結び続ける役割を果たします。私たちが転生して色しきを形成すると、ソクは意識を体に結びつけ、それは死への出発点となります。

ソクは個という境界を超越し、生命力を与えてくれる普遍的な原理です。
ソクは弱まったり消滅する可能性があるため、ソクを貯めたり回復する必要があります。チベット暦で自分のソクがマイナスだったり弱い場合、病気や事故のリスクが生じ、場合によっては死に至る可能性があります。

２．ルー（体力／ལུས་）

ルーは、肉体の健康状態といえます。人の幸福は、健康であることと密接に関係しています。チベット暦の年回りでルーがマイナスだったり弱い場合、疾患や健康問題につながる可能性があります。

３．ワンタン（魅力／དབང་ཐང་）

ワンタンはカリスマ性や魅力、威厳、威信といった、人や財を惹きつけたり畏怖させる力です。私たち個人の人望や名声や人気もここに含まれ、富・財産・目標の実現にも影響を与えます。 この力は特に、女性にとって重要とされます。

ワンタンが高いとポジティブな結果をもたらします：

• 自分の能力を最大限に発揮する

• 見た目に関係なく人を惹きつける、ナチュラルな魅力

• 人気、周囲を惹きつける力、天性のリーダーシップ

• チームワークが容易になる；他人はあなたのために働き、あなたの近くにいたいと願う

• 繁栄、富、裕福さにつながる；望ましい結果を自然に引き寄せられる

• 法律や政治の案件での成功

• 適切なタイミングで適切な場所にいるという「ツキの感覚」；事故や危害に巻き込まれることが減り、危険を自然に回避できる

逆にワンタンが低いと、様々なネガティブな結果をもたらします：

• 木に止まって強風に耐えている鳥のような、脆弱さを感じる

• 他人のワンタンのほうが高ければ特に、容易に威圧されたり脅迫されたりする

• いじめ、嫌がらせ、スケープゴート、または非難の対象になる

• 無視される、自分の功績が認められない、功績が他人に横取りされる；昇進やチャンスを逃す

• 無力感

• 影響力の低下；誰もあなたの言うことを聞いていない、聞きたがらない、あなたの言葉に力がなくなる

• 法的案件や訴訟に勝つのが難しくなる

• 重大な損失、災いが発生する可能性がある

４．ルンタ (運力／རླུང་རྟ་)

一般に「風の馬」（wind horse）として知られるルンタ（རླུང་རྟ་）ですが、出生時の運勢またはその年ごとの個人の運勢（年運）と結びついています。 ルンタは悪縁（悪い状況）を回避する力を表わし、あらゆる生命力を調整したり結合する力として機能しています。「回避力」といったほうが近いかもしれません。

ルンタは異なる綴字「ཀླུང་རྟ་」で表記する場合があり（発音は同じ）、そちらだと「河の馬」という意味になります。今の暦本も昔の占星術の解説書も「河の馬」の綴り字を採用しているので、「風の馬」とはちゃんと区別しているようです。

ルンタが良い場合、以下のようなポジティブな結果になります：

• 苦労せずにタスクを達成する

• 最適な時間に最適な場所にいて、シンクロを経験する

• 降りかかる不運を回避する

• ポジティブな見通しと大きな夢が抱ける力が続く

逆に、ルンタが悪かったり弱かったりすると、不幸や不運となります。諸事達成が難しくなり、自分の評判が低下し危うくなることもあります。 起業などの新しい事業は失敗する可能性が高いです。

ルンタの力が低いと、以下のようなネガティブな結果になります：

• 脆弱さが増し、ささいな出来事でも重大な事態に発展する可能性がある

• もう少しで成功というときに、数多くの予期せぬ障害が生じる

• エネルギーレベルが低下し、疲労や枯渇へと陥る

• 気分が落ち込んだり、無関心になる

５．ラー(霊力／བླ་)

5番目のラーはソク（1番目）の母と考えられており、互いが密にからみ合い、同じ本質を共有し合っています。 これはソクが自身を表現する方法でもあり、体内の至高のエネルギーにとって最重要です。 ラーは私たちの活力や内的強度のベースにあるもので、人生に明確な目的意識を与えたり、自身のアイデンティティを掘り下げるものです。

「ラーを奪う悪霊」というのがチベットの仏典に登場しますが、ラーを奪われた人は意識が朦朧とし、もぬけの殻のようになると書かれています。
ラーを中国語で「魄はく」と訳しているケースがありますが、日本語では「魂こん」のほうが妥当でしょう。

ラーは、内的な霊的体験と外的なエレメントのエネルギーとの間を取り持つ、リンクとして機能します。それは私たちの生命エネルギーを反映していて、様々な内的感覚を経験する際に重要な役割を果たします。
さらにラーは、私たちを人間たらしめている業カルマの痕跡と関連して、私たちがどのような存在であるかを決定します。

ラーは私たちが生存する形態を特徴づけるもので、人類以外にもさまざまな生き物が独自のラーの特徴を持っています。このエネルギーは、目に見える存在であろうと見えない存在であろうと、他のラーの力と常にやりとりをしています。自然界に住まう精霊たちは自分たちのラーをエレメントに吹き込み、別のラーの力との間に、調和のとれた相互作用を生み出しています。

ラーの力は、たとえば貴石、山、湖などの物体を擬人化することにより、物質的なサポートを受けながら住まうことまで及びます。 私たちのラーと精霊のラーとが相互に作用するには、環境と調和する関係を維持することが重要です。 たとえばエレメントの家を汚染したり破壊するなどの混乱は、私たちのラーと生命力であるソクの両方を危険にさらす可能性があります。

精神や感情の安定と関連するラーは、保護する力として機能しています。 場合によってはラーが断ち切られてしまい、儀式を通じて元に戻す必要があります。

邪霊によってラーが盗まれると、病気を引き起こすことがあります。
ラーが低下したりネガティブだと、精神障害や精神の不安定を引き起こし、心の平安が奪われます。ラーが健全でない人が悪霊や亡霊が生息する空間に入ると、彼らに感知されてしまいがちで、潜在的な危険に直面する可能性があります。

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以上の五種類の生命力ソクの状態を判断するには、出生図ネイタルを利用したり、暦本を参照することで得られます。とはいえ自分で計算するのはとても複雑ですので、暦本を参照することで、より簡単に知ることができます。

チベット占星術では古くから、136個の白と黒の小石を布の上に並べて出生図を作るという伝統があり、現代でも、こうした吉凶には「石」の色と数でもって表します。

伝統的に「0」は白石、「X」は黒石を意味します。

• 000：　大大吉（最高によい）
• 00：　大吉（非常によい）
• 0：　吉（よい）
• 0X：　小吉・末吉（ニュートラル）
• X：　凶（悪い）
• XX：　大凶（最悪）

暦のチャートを見ることで、2024年のあなたの 五種類の生命力ソクの状態を理解することができます。

もし自分が凶や大凶の場合、どうしたらいいのでしょうか？
それに対して、きちんと暦本にはアドバイスが書かれています：