聞こえない声 / 自作詩

人は皆、すべてが例外なのだ
とある哲学者が語った

深い闇夜の中に聞こえる微かな音
確かな手触りと
そこから得た想いを

誰に知られることがなくとも
あなたにとって確かにあったもの

数えきれないほど立ち上がる言葉の一つ一つも

二人が交わした口づけの味も

誰に知られることもなくとも
確かにあったもの

ばらばらになってかき消されていく

風のような日常の常識という雑音の中で
煩い電子音が撒き散らされながら明滅するモニターの中で

そこには匂いもなく
味わいもなく
湿りを帯びた肌触りもなく

魂を苛つかせる領域だというのに

そこから得たものを武器に
確かなものを嘲笑う愚かしい言葉の空虚さを

押し付けようと躍起になる邪悪なホムンクルスに疲れるより

闇に身を委ね
ゆっくりと呼吸をして目を閉じるとき

聞こえてくる
聞こえない音が

戻ってくる
確かなものたちと
確かなあなたが

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