勝手にアニメキャラのセックスを想像してみた

第5回 青山ブルーマウンテン その5

でも、もうそろそろ限界が近づいてきました。
彼は一層激しくわたくしを攻撃してきたのです。
「モウ……ダメ……」
必死の思いで彼の耳元でつぶやくと
「イッチャウ────────────────────────────ッ!!!!」
と絶叫すると……そのまま力尽きてしまいましたわ……

「先生、朝ですよ。起きてください」
上郷さんは私を揺すって、わたくしを起こしてくれました。
「上郷さん、今何時ですか?」
「朝7時をまわったところです」
上郷さんは、すでに浴衣を羽織っています。それと対照的に、私はまだ生まれた姿のままです。
「チェックアウトは10時です。もうそろそろ準備しませんと」
上郷さんはそう言うと、顔を私の耳元に近づけて
「夕べの燃えっぷり、スゴかったですね」
と囁くではありませんか。
わたくしは顔を赤らめると、思わず
「バカッ!!」
と声を上げ、彼をどつくという醜態をさらしてしまいました。
にもかかわらず彼は笑って
「先生、かわいいですよ」
と応じます。続けて
「それじゃ、もうそろそろ準備してくださいね」
といってきました。
「わかりましたわ」
と私は応じると、ゆっくりと上半身を起こします。
乳房を布団で隠すと彼に手招きをして
「わたくしと付き合ってみない?」
と、冗談めかして誘ってみました。
すると彼は急に真面目な顔になり
「先生、本気ですか?」
「上郷さんこそ、夕べは遊びだったのですか?」
いいえ、と彼はクビを横に振ります。
「私は本気ですよ。あなたが大作家になるためなら、私はどんなことだってしますよ」
そして私を抱き寄せると
「先生、愛しています」
といい、私にキスをしたのですわ。
彼の熱意を感じた私は、彼と付き合ってみることにいたしました。
「わたくしを大事にしてくださいね」
「もちろんです」
この機会に、私は一つ彼に真実を話すことにしました。
「私の本名は『翆』と申しますの。だからデートの時は、本名で呼んでくださいね」
「わかりました。みどりさん」
……ここまでが、私と彼のなれそめの話でございます。

しばらくぼーっとしていたら、かなり時間が経っているのに気がつきました。
いけないいけない、仕事に集中しなくては。
2人が帰ってからも、わたくしは甘兎庵で構想を練っておりました。
プロットを練っては消し、書いては消し、書き加えては消しということを繰り返しておりましたら、パソコンにインストールしているLINEが、メッセージ着信の表示をいたしましたの。
「今どこにいるの?」
送り主は彼氏様でございます。
「甘兎庵でお仕事。そっちは?」
「まだ会社だよー(T_T) 世間は土曜日だというのに休日出勤なんて冗談じゃねー」
「何時頃終わりそう?」
「わからん(-_-)なるはやで片付けるようにするけどさ」
「がんばってね。じゃあ、なんかあったら連絡して」
「りょーかい!!」
通信を切り終わると、わたくしはしばらく甘兎庵で仕事を続けたのですの。
区切りがついたところで、わたくしはパソコンをしまい、お会計を済ませましたの。
「先生、今日はお仕事進みました?」
千夜ちゃんが、微笑みながら私に話しかけます。
「ええ、思ったより進みましたわ。収穫も多かったですし、新しい出会いもありましたし」
「それはよかったですわ」
私はお会計を済ませてバッグを手にすると
「それではごきげんよう」
と挨拶し、甘兎庵の外に出ました。

それから15分後、わたくしは「ラビットハウス」というバーにおりました。
このお店は、わたくしが学生時代から足繁く通っていたお店で、昼はオシャレなカフェ、夜はバーになっていますの。
そしてわたくしの処女作に出てくる人物のモデルは、ここの先代マスターなのですわ。
わたくしは学生時代からか決めた文章をマスターに見てもらっては、彼にアドバイスをもらっていましたの。
わたくしが小説家デビューしたのも、マスターに小説投稿サイトに投稿してみてはどうか、と勧めてくれたからですわ。
だからマスターは、わたくしにとっては恩人でありますの。
スランプになったときに、わたくしはここで働いていたことがあるのですが、今もたまに、バータイムのお手伝いをしていますわ。
でも、わたくしが青山ブルーマウンテンだと気づいてくれるお客様は、ほとんどいないのですけれど。
「いらっしゃい」
「こんばんわ、マスター」
今のラビットハウスのマスターは、先代の息子さんですの。娘さんがいて、昼間は彼女が中心になってカフェをやっております。
「いつもの席、あいているから」
マスターはそう言って、カウンターの席を勧めてくれます」
「ありがとうございます。ひょっとしたら後からもう一人来るかも知れませんが、よろしいですか?」
「かまいませんよ」
といって、マスターは「予約席」と書いた立て札を、私の隣の席に置きました。
「何か食べますか?」
わたくしが腕時計を見ると、もう19時半近くになっていました。
そういえば、高校生カップルと一緒にお団子を口にしてから、なにも食べていないことに気がつきました。どうりでお腹がペコペコなはずです。
なにがいいかしら? とメニューを見ていたら、本日のお薦めパスタセットという文字が目に入りました。
「それじゃマスター、今日は『本日のお薦めパスタセット』でお願いします」
「かしこまりました。少しお待ちください」
マスターが準備している間、私はスマホでネットニュースをチェックしていました。
すると少ししてから、メッセージアプリにメッセージ着信の表示が出ました。
「やっと仕事が終わったよー。今どこ?」
「甘兎庵からラビットハウスに移動して、これから遅めの夕食だよー」
「りょーかい! あと20分くらいしたら、そちらに着くと思う」
「オッケー。待っているよん。」
「愛している」
「愛している」
フフフ。この調子では、今夜は長くなりそうでワクワクしますねー。
私がニヤニヤしているのを見て、マスターが話しかけます。
「楽しそうですねー。彼氏さんですか?」
私は若干照れながらも
「ええ、そうです。私の担当でもありますの」
と答えます。
「彼氏さんは編集者なんですか?」
「はい。私の担当になって1年以上になりました」
「付き合うようになったのも、ですか?」
「それは、私の担当になってから少したってからですねー」
「担当編集者と作家が恋人同士ってケースは多いんですかね?」
「どうでしょうかね~。でも私のまわりにも、そういう人はいますねー」
本当は、もっとドロドロした関係になっている人たちも多いんですけどね、あまり私の口からはいえませんね。逆にドン引きされるかもだし。
「プライベートで、時間を合わせるのって難しいでしょうね」とマスターがいいます。
「そうですね。お互いに忙しいですから、最近はデートもままなりませんわ。仕事では始終顔を合わせているのですが」
「恋人同士」としてきちんと付き合うようになってからというもの、一夜を共にするどころか、昼間ですらお茶することもままならない、という悲しい現実。
顔を合わせて悩み事を聞いてもらえない辛さを、LINEやSkypeで紛らわすという日々が多いんですけど、マスターにそんな愚痴をこぼすのもどうかな……と。
「はい、お待たせしました。本日のお薦めパスタセットです」
今日のおすすめメニューは、ミートソースです。
「すいません、お飲み物を聞くのを忘れていました。なにがいいですか?」
「じゃあ、ダージリンでお願いします」
「かしこまりました」
私はセットについているスープをすすると、早速パスタに口を運びます。
「ううん、おいしい!」私は心の中で独りごちるのです。

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