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2ndオリジナル曲『ファクトリーリセット』について

2022年8月22日、身代亜土夢二曲目のオリジナル楽曲『ファクトリーリセット』をYouTubeにて公開致しました。


制作経緯

私事で恐縮ですが、配信でも度々発言していた通りVTuberとしての活動をもっとおもしろくするためという不純な動機から、これまでの不安定な非正規雇用ではなくもっとしっかりしたフルタイムの仕事を本腰入れて探していたという状況が2021年の夏頃から続いていました。紆余曲折あり2022年2月、ようやくうまいこと話がまとまり翌3月よりとある会社にお世話になる事が決まったわけです。そのへんの事は話が決まった直後の雑談配信でも喋っていますので参考までにどうぞ。

そうして新しい職場で働き始めて一月半ほど経ちGWに差し掛かった頃、生活リズムにも少しずつ慣れ始めたこのタイミングで「二曲目作るぞ」とスイッチを入れた感はあります。新しい仕事を始めたという一つの区切りと、あとは実際に受け取った給与額面を見てそれまでとは金銭的余裕も大きく違うのを実感したというのも大きかったと思います。「これならイケる」と思い前々から二曲目作るなら是非この方に、と目をつけていたコンポーザー様にお話を持って行ったのが5月半ばを過ぎた頃ですね。


制作陣の皆様

まず何をおいてもご紹介しなければならないのが、楽曲を書いてくださった右近香夢楼様とミキシング/マスタリングを担当して頂いた丐様メタルコアバンド『AKRASIA』として活動なさっているガチでその筋の方々です。

1st『スーサイドレター』(※作曲者様意向によりクレジット非公開)に続いてまたしてもとんでもない方々に依頼させて頂けたので、この時点でもう何も楽曲に関する憂いはありませんでした。

毎度の事ながら曲に限らずイラスト等の依頼をさせて頂くクリエイター様を探しているとこんな風に、「こんな凄い方に俺みたいな何の実績にも評価にもならない只のひとり遊び野郎が依頼させてもらっていいのか?」と躊躇してしまうくらいの凄まじい腕を持った方に出逢えてしまったりしてその瞬間のゾクゾク感がたまりません。VTuberやってて知った楽しみのひとつでもあります。最初の依頼文に俺のYouTubeチャンネルを記載させて頂き送信した後で(こんなに凄まじい楽曲をやってらっしゃる方に俺ごときのか細いなんちゃってシャウトなんか聴かせてしまって正直恥ずかしいなあ、鼻で笑われて一蹴されてもおかしくないよなー)と勝手にひとりでモンモンとしていたりしましたが、そんな俺の杞憂など関係なく快く引き受けて下さってどれだけ嬉しかったか想像できます?

そうして好きな楽曲・イメージしている楽曲のヒアリングを経て、程無くしてショート版デモ音源が届いた時の身代亜土夢の様子がこちらになります。

イッちゃってる。

イラストにはあめふらし作品工房様。過去に鬱Pの『ぬる』という楽曲の歌ってみた動画でもお世話になっており、俺はこの方の美麗且つビビッドな画風のファンになっていました。ビジュアル面はこの方しかいない、と楽曲制作の段階でもう完全に決めていました。

そこに動画担当のkota様によるシリアス且つドラマティックなディレクションが加わって、楽曲により深い世界観が与えられていると思います。

どのクリエイター様が欠けたとしても『ファクトリーリセット』は完成し得なかったと間違いなく明言出来ます。素晴らしい技術とセンスを振るっていただいた皆様に今一度心より感謝申し上げます。ありがとうございました。


楽曲解説

楽曲自体のジャンルとしてはDjent+メタルコアといった印象を受けました。
音作りは重々しいメタルでありながら一筋縄ではいかないリズム感覚がとてもおもしろく、デモ段階でこりゃ絶対普通の曲にはならねえぞとニヤニヤが止まりませんでした。歌詞書いて歌うのは自分だというのに。

楽曲制作に関しては俺から「こんなバンド/曲が好きです~」と参照曲を思いつくまま羅列させて頂きお任せ→作編曲・演奏がフル尺完成した段階で身代が歌詞とボーカルパート作成、というのが『スーサイドレター』からの流れになっています。つまりいつも歌詞制作・歌入れで苦しむのは作曲者様にそういう曲を書かせたくなってしまう身代のせいということです。これからもそんな曲を心よりお待ちしています

ボーカルワークに関して。
フル尺オケを頂いてから書き上げた歌詞第一稿時点では実は叫び6:歌4くらいでもっとメロディーのあるパートが多かったんですが、その構成で一度スタジオ入りしてある程度まで録った後に聴き直して「なんか違うな」と思って一回全部破棄しています。その後オケをそれこそ仕事の行き帰りや自分の部屋で聴き続け、その過程で再度作り上げた歌詞と構成を元にもう一度スタジオ録りを敢行し出来上がったのが実際の完成版のものになります。
ボーカルの方向性としては激情系ハードコアをかなり意識しました。具体的にはenvy、ENSLAVEなんかをかなり参考にしてます。参考にしてはいますが身代の再現性の欠如のおかげであまりそう聴こえないかも知れません。と言いつつ激情系ってカテゴリーにそこまで明るいわけではないんですけどね。

余談ですがENSLAVEの男性ボーカル・陸JEEP王氏が今年7月16日に亡くなっていたとのこと。スーサイドレターのボーカル録りに際してもENSLAVEを指標の一つにしていたくらい彼のボーカルスタイルにはとてつもない影響を受けています。この報せに前後してこの楽曲が完成したことに、俺は勝手に何かの意味を感じていたりします。
簡単にR.I.Pとかご冥福をとか言いたくありませんがせめてもの餞として俺はENSLAVEをずっと聴き続けようと思います。

(※CD一曲目の大名曲『BRAVE HEARTS』が各種配信サービスでは未収録なのが俺は悔しくてたまらない。某人物による演説の音源が使われているので権利関係でダメなのかも知れない)


歌詞に関して。
正直今回はスーサイドレター以上に悩んで苦しんでやっと作り上げたという印象が強いです。デモ音源の時点で「こういうことを歌おう」というざっくりした方向性は見えていたのに、いざ言葉にするも「これでいいのか?俺はこれを歌いたいのか?」という自問がどうしても消えず結局一度全て捨てて、そこからが本当に長かった。結局完成した歌詞は捨てる前の歌詞と大きく方向性というかテーマ自体は変わらなかったものの、その悩んで同じところをぐるぐる巡ったその時間分も歌詞に盛り込まれてると思うので結果的にはよかったんじゃないかなと思います。

内容としてはバーチャル北関東のまさに俺が生まれ育った実家周辺の土地に対する、俺の割り切れない得体の知れない感情をとにかく吐き出したかったということに尽きる気がします。イラスト背景のロケーションも俺の実家付近にあるローカル線の無人駅を明確に指定して描いて頂きました。
あの駅に立った時にいつも感じていた「この線路ってどこにも通じてねえんじゃねえか?」という気持ち。スーサイドレターの背景にも描かれている実家そばの川べりを歩きながら「俺ってどこにも行けねえんじゃねえか?」「こんな場所にずっといるから俺は何も出来ねえんじゃねえか?」「俺は何も出来ないまま死ぬのか?」と思っていた、あの漠然とした諦めのような感情。かと言って地元を憎んでいたのかと思えばそうとも言い切れない。そんなカテゴリー分けできない、ガキの頃から抱えているのに誰とも共有できないものをこの楽曲でなら表現できるんじゃないかと思い歌詞にしました。

曲名の『ファクトリーリセット』というのは3月から始めた新しい仕事でたまに使うので覚えた言葉です。ハードウェアの設定や動作を工場出荷時の状態に戻すという意味ですね。単純に語感が良くていいなと思って仮タイトルにしてたんですが、すぐにもうこれ以外あり得ないなって思いました。気に入っています。


最後に歌詞を掲載して終わります。
本当にまたひとつ宝物のような楽曲が出来たなと本気で思っています。
何回でも聴いてください。みんなありがとう


『ファクトリーリセット』


酷い匂い散らして
嘘だと誤魔化して
呪い(まじない)ひとつかけて
鍵を隠して

目隠しさせられ
手の鳴る方へ
どちらが鬼だった?

古した子守唄
靴下を洗って
いつしかこびり付いた

あの川も あの曇天も
今もそこにいて この脚に縋る

何も無い 何も無いここには
誰も居ない 誰も居ないそこには
何も無い 何も無いここには
誰も居ない 誰も居ないそこには

何も無い 何も無い其処には
影も無い 形も無い此処には
何も無い 何も無い此処には
何も無い 何も無い底には

白い黒い日差しで
朝露を照らして
同じ事だと言って
切り傷を擦って
癒えない秘密持って

夜明けなんて二度と来なければいいと思った
過ごして来た実感に未練なんか少しも湧かなかった
くだらない妄想ばかりの俺にその時聞こえてきたのは
全部ぶっ殺せって囁く誰かの声だった

あの川も あの曇天も
あの団地も あの公園も
あの景色も この痛みも
今もそこにいて この脚に縋る

何を求めたところで
決して手に入りはしない
何を望んだところで
決して叶うことは無い
何を叫んだ所で
お前に聞こえる筈もない
もう沢山だ 俺の人生
今すぐ返してくれよ
クソ野郎

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