MiGちり日記1116

今日もセンサーに反応はなかった。地球より304光年もの旅を続けてきたにも関わらず未だ地球の代わりになる惑星は見つかっていない。またレーション生成器制御装置のタンパク質合成パーツの制御基盤がイカれてしまった。スペアパーツはあと4つしかないので食料は今まで以上に切り詰めなくてはならないだろう。この欠陥装置を設計したやつに文句のひとつでもぶつけてやりたいが、恐らくはもうこの世には居まい。

この広い宇宙船にひとりで居るのも慣れてしまった。おそらくは喜ばしいことではないのだろうが、私にしてみれば気持ちが楽で良い。陰鬱な気持ちになっているとせっかくのレーションも台無しだ。このMiGちり日記というテキストも初代船長の時代からあるらしいが気分転換には良いかもしれない。気持ちを整理するにはやはりテキストに起こすに限る。音声入力ではこうはいかない。そこには音声を吹き込んだときの心の表層にある感情があたかも水面に広がる波のような……私も実際に見たことはないが……役割りを演じ、心の奥底にある本当の自分を見えなくさせるのだ。

そろそろ定期ワープの時間だ。これで私の生まれた日から数えて1500回目の記念すべきワープとなる。エンジンチェックに船体損傷確認、やることは沢山ある。ワープ前は本当に忙しい。それでは職務に戻ろう。以上だ。

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