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豚生姜焼き690円

 いつもは入らない定食チェーン店に入った。口は完全にラーメンを欲していたけど、最近は不健康な食事続きだったから、少しでも野菜が多く摂れそうなお店をチョイスした。米がおかわり自由なのも高ポイント。

 ここに来るのは二回目でメニューも把握していなかったから、店の前のメニュー表を見た。しばらく悩んだ風でいたけど、実際は一目見た瞬間に「豚生姜焼き定食」以外を選ぶつもりはなかった。こういう店の生姜焼きは外れない。ちゃんと塁に出てくれる。来店二回目で尖ったメニューを選べるほど遊びゴコロのある教育を俺は受けてきていない。

 食券持ってカウンター席に座ると、店員さんがお茶を持ってきた。俺の食券を手に取ると「豚汁……あっ、豚生姜焼きですね」とまごまごしながら店の奥へと消えていった。こういうのに出くわした時、俺は本当に嬉しくなってしまう。ラーメン屋なんかに行かなくてよかった。ラーメン屋の店員はまごつかないから。ラーメン屋にはテニス部とバスケ部しかいない。アイツらは俺のことを馬鹿にしている。インスタに個人情報を載せる。カラオケ屋にマクドナルドを持ち込む。店員が男性であろうと女性であろうと、おぼつかない接客で対応されると心が温かくなる。明確な理由はないけれど、良い。これが性癖なんだと思う。

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 美味しそう。いい感じの豚感。“かさ増し風”にもやしが盛られているけど、俺はもやしが大好きだからむしろ最高。でも、もっと盛っていいかと言われるとすこし違う。何と言うか、ありすぎたらそれはそれで、もういい。

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 当然のようにマヨネーズの袋が皿に置いてあるけど何?何用のキユーピー?消去法で生姜焼き用なんだとは思うけど、生姜焼きにマヨネーズをかける感覚が全くわからないから放置することにした。小皿に乗っている袋マヨネーズは少し可愛い。

 食べ始めて1分くらいすると、子供とその両親、そしてその親の三世代家族が入店してきた。何やら騒がしいので聞き耳を立てると、券売機をタップしていないのに勝手に発券されたらしい。災難だ。「もー、何やのこの機械意味わからん~」と騒ぐおばあちゃん。それを聞いてさっきの不慣れな店員さんが対応に向かっていった。頑張れ。店員さんはおばあちゃんから事情を聞いた後、すぐに返金対応をしていた。やるじゃん!

 そんなことを聞きながら食べ進めていると茶碗の米がなくなったので、おかわりをすることにした。セルフサービス。こんなご時世だから、不特定多数の人が同じ釜から米をよそうタイプのおかわりは少しためらってしまう部分もあるけど、背に腹は代えられない。むしろ、空腹に背は代えられない。

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 なんだそれは!

 茶碗を中に入れて、ボタンを押すと勝手にお米が盛られる機械らしい。しかも盛り具合は4種類。人間より優秀だ…。

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 ご飯が止まらなくなる機械が見たすぎる。あんまり気になることを書かないでくれ。

 席に戻る時にさっきのお騒がせおばあちゃんの顔を見たら、所ジョージと全く同じメガネのかけ方をしていた。ハツラツすぎる。今度は騒ぐ孫に対して怒っていた。怒りをコラえて!

 ついでに両親の顔を見たらバキバキのヤンママ・ヤンパパだった。あの親にしてこの子ありだな、と思った。悪い人ではなさそうだった。俗に言う『ヤンキーの子はヤンキー理論』は実際によくある。もしも自分の親がヤンキーだったら自分がいくら抗ってもグレてしまう(むしろ抗うことでグレる)ことを考えると、家系図を写真付きで見た時にめちゃくちゃ面白いんじゃないかと思う。みんな髪色が明るくて、みんなジャージを着ている家系図。良すぎる。

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 こんなにもミチミチに胡麻が入ってるとめちゃくちゃ気持ちが悪い。そういう虫みたいに見えてしまう。一瞬ペペローションの入れ物かと思ったけど、恐らく違う。定食屋にペペローションは基本無い。

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 味噌汁に100周年を記念したネギが入っていた。何の100周年なんだろう。そういえば昔、東京駅の100周年を記念したSuicaが発売されたいたのを思い出した。「そんなに前からあるの!?」とも思うし、「結構最近だな」とも「そんなものだよね」とも思う。見る度・聞く度に感想が変わる。騙し絵みたいな駅。

 お茶を飲んでごちそうさま。いつもは人前で手を合わせたりしないけど、周りが騒がしかったりした時に自分の中の正義を自分自身に刻み付けるために、わざわざ見せつけるかのように手を合わせてしまう嫌な癖がある。こういう嫌な癖が本当に癖になって、人前でもきちんと食前・食後の挨拶が徹底できたらいいな。大人を目前にしてそう思う。それがちゃんとできるトリコは大人だ…。



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おわり。

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