I pray
重い。辛い。疲れた。
肩に食い込む荷物の重さに心が折れそうになる。
「ふぅ...。」
道に腰をおろし一息ついて、背負ってきた荷物を見つめる。
自分の背丈よりも大きくずっしりと重たい荷物だ。
いつからこの荷物を持ち続けているのだろうか、中身はなんだったろうか、思い出せない。
しかし、置いてはいけない荷物なのだ。私が持ち続けなければならない、私の荷物なのだ。
それだけははっきりと分かっている。
私が余りにも辛そうに見えるのだろう。持つのを手伝おうとしてくれた人もいたが、上手くいかなかった。
「なんだ、あんまり重くないじゃんか。」
そりゃそうだ。だって、君の荷物ではないからね。
やはり、自分で背負っていかなければならないらしい。
まだまだ重い足を無理やり立ち上がらせ、よいしょっと荷物を背負って歩き出す。
一歩一歩をゆっくりと、重い荷物を落とさぬように踏みしめて歩いていると、ぶわっと強い風が背中を押した。
見上げると大きな羽を羽ばたかせて空を飛んでいる男の子がいた。
ぼーっと眺めていると、目が合った。
「抱えなければ羽になるのに」
私に向かってそう一言だけ呟くと少し悲しそうに微笑んだ。
どういうことだ、と聞きたかったのに、彼はもうずっと先まで飛んでいってしまった。
この荷物のことだろうか。私も彼のように飛べるのか?
私を苦しめてきたこの大きな荷物が私を運んでくれる羽になるのか?
嫌な冷や汗が出てくる。
きっと中身を見て確かめてみれば早いのだろう。
私の人生はずっとこの重い荷物と共に行かねばならないのだと、そう思っていた。
捨てても忘れられないだろうし、捨てたことを後悔するだろうから捨てたくはなかった。
でもその重さに両足が潰れてしまうのでは、と不安に思いながら歩き続けてきた。
涙がぼろぼろと溢れてくる。
羽に出来るのなら私だってそうしたい。
止まらない涙を両袖でぬぐいながら、空を見上げて泣いた。去ってゆく大きな羽に届くように大声で泣いた。半ば八つ当たりだ。
泣いても泣いても、やっぱり私の背負った荷物はずっしりと重い。
でもいつか、もしかしたら本当に羽になるのかもしれない。そう思うと今の苦しさにも意味があるように思える。
「今はこんなに重いけど、いつか私を空まで運んでくれよ。」
まだまだずっしり重たいこの荷物と一緒に、私の人生を歩いていこう。
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