「メゾン・ケンポクの何かはある2021」のこと

現在、茨城県北地域で行っている、私の小さなアート・プロジェクト「メゾン・ケンポクの何かはある2021」と、その中で展示している新作「小さなミエコたちのはなし」の構想は、昨年、ジョルジュ・ディディ・ユベルマンが書いた、ホロコーストとそこで撮られた4枚の写真についての論文を、「メゾン・ケンポクの読書会」で一年かけて読んだことから始まっている。

ホロコースト下、自分たちが死ぬことがよく分かっていても、それでもなお希望を託して写真を撮影した囚われのユダヤ人たちについて、その人たちが撮った写真の可能性について、友人たちとディスカッションを重ねたことが、自分の住む地域の同時期の歴史を、いま一度調べなおしてみよう、という気持ちに駆り立てた。

昨年の3月ごろから、日立市郷土博物館の学芸員、大森潤也さんに伺いながら、日立市の75年前の地図や資料、証言を集め調べ始めた。調べれば調べるほど、いかにアメリカ軍が、海の向こうの日本のすべての情報を手に入れ、精緻に攻撃していたか、そして日本は全くの丸裸で戦っていたのか、この小都市の地図や資料を通して、改めてよくわかった。無駄な抵抗を長く続けることで、この地域の、どれほどのものが失われたのであろうか。想像すると頭がクラクラする。

いろいろな人たちの話を聞く中で、ひとつの出会いがあり、自然と新作のタイトルが決まっていった。

長期に渡るリサーチを、読書会を一緒にやってきた海野輝雄さんと佐々木恭子さんが手伝ってくれた。「メゾン・ケンポク」の3Fで現在公開されている「アートガストロノミー 記憶の食事」は、海野さんたちが中心になって、このリサーチをもう一つの視点でまとめた、いわば派生作品のようなものである。こちらも私の作品と合わせてぜひ見てほしい。

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「メゾン・ケンポクの何かはある2021 記憶を頼りに進む」
は、3/14(日)まで、2会場で行っています。(10−17時まで、残りの会期中、休みなし)

◎日立シビックセンター 地下1階 日立市視聴覚センター映像セミナー室
(日立市幸町1−21−1、JR常磐線日立駅から徒歩1分)
◎メゾン・ケンポク(常陸太田市西一町2326)

https://maisonkenpoku.com/nanikawaaru-2021/835/
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