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INFPによる仮面ライダー育成計画

ネット上におけるINFPのイメージはメンヘラ一色だ。プロフに「HSP」「繊細さん」「〇〇病」といった単語が入っている人も多い。
優しげな文章で自分がどれだけ生き辛いかを語る、ふんわりとした雰囲気の女性。でもよく見るとそこそこの確率で理解のある彼くんがいる。生き辛いだけで繁殖し辛いわけではなさそうだ。

何らかの苦しみを抱えた女性がエッセイ漫画を描くと、どこからかポコンと優しい彼氏が湧いていることが多々ある。それのどこが生き辛いんだよと叩かれるようになって、最近は彼くんを登場させる前に注意書きが必要になったほどだ。
INFPは会社員として生き辛いだけで、恋愛市場ではそこまで生き辛くないのだろう。

っていうか気が小さくてウジウジしてる女に男が寄ってこないわけないよね。逆の性格の方が彼氏を見つけるのに苦労しそうだし。職場でINFPをイビリまくってるバリキャリお局の方が独身率は高いんじゃなかろうか。いや絶対そうだ。前の職場で私が泣くまで説教してきたお局様に彼氏がいたという話を聞いたことがない。へっへーん! あんたが当時アラフィフだったのにジャニオタだったのも知ってるもんね~~~~! 
ばーかばーか! 万年更年期! 肌しわしわ! 銀歯まみれ!
大体、机に麺つゆ零したくらいでねちっこく叱りすぎでしょ。おかげでトラウマになってしばらくうどん食べられなかったんだけど!?

は~~~スッキリした。
午前中、突然昔の職場で怒られていた時の記憶が蘇り、プチ鬱になったのでこうして憂さ晴らしをしたのである。
どうだ見たか! INFPだって怒る時は怒るんだ! 本人の前では怖くて言えなかったけど。お局様が近くにいるだけで涙目になってたけど。

INFPが全員メンヘラとは思わないが、舐められやすいのは確かだと思う。たとえ体格のいい男性であろうともINFPと診断された人は威圧感が無い。変に話しかけやすいし、圧をかけてこないし。
だからいつの間にか周囲に「こいつは弄っても怒らない奴だ」と見抜かれ、からかわれるようになっている。INFPあるあるだ。私も大抵のコミュニティで気が付くと弄られキャラになっている。外見を弄られないように隙のないファッションで固めても、今度は内面を弄られるようになっている。解せぬ。どうやら他人の弱い部分を本能的に見抜いてくる人間が世の中には多いようだ。
なんなら小さな子供にも舐められる。親戚の集まりに参加すると、なぜかヤンチャな男の子が私によじ登って髪を引っ張ってくる。どうやら私を見た瞬間、「こいつは何をやっても怒らない大人だ」と感じ取ったらしい。
そして君の勘はバッチリ当たっている。私はまだ一度も子供を叱りつけたことがない。
周りの大人もそんな私の生態を見抜いていて、冠婚葬祭のたびに会場の隅っこで目を泳がせている私の元に子供を預けに来る。もはや歩く無認可保育園だ。
まあ、子供のことは嫌いじゃないからいいんだけどさ……。
親戚のおじさんやおばさん達に、

「まだ結婚しないの?」
「ライトノベル作家ってどういう仕事? 官能小説作家みたいなもんか?」
「お前夜の店にいそうな格好してんな」

という答え辛い質問をぶつけられるよりなんぼかマシだ。喜んでちびっこの仮面ライダーごっこに付き合おう。
で、そうやって子守をしていると体によじ登ってくるキッズの一人に、Sという少年がいる。運動神経抜群で端正な顔立ちをしており、自分のことを仮面ライダーと思い込んでいること以外は中々スペックの高い小学生だ。
S君は私の前ではめちゃくちゃ口が悪いのだが、家の中では私のことを大好きだと言っているらしい。可愛いやつめ。なぜ本人の前でそれを言わない。

以下、私とS君が出会った時の典型的な流れ。

「オラァ!」
「や、やめなよ~。頭から落ちたらどうするのぉ……」
「デュクシ! デュクシ!」
「え? 待って? 背中の上でパンチしてる? 今どういう体勢?」
「変身!」
「もうライダーになったの?」

おかしい、INFPには理解のある彼くんが地面から湧いてくるのではないのか。
なぜ背中から理解のない仮面ライダーが生えてくるのだ。
先月、散歩中に彼と出くわした時もこんなやり取りとなった。農道のド真ん中で仮面ライダーごっこに付き合わされる大人の図がこれである。威厳もへったくれもあったもんじゃない。
だが私もやられっぱなしなわけではない。S君の密かな好意をちゃんと感じ取っているので、

うどんを零して泣いてる人を守ってあげる男の子って格好いいな~。そういう人って憧れちゃうな~。


と英才教育を施している。
きっと彼が大人になったら、上司の机に麺つゆをブチ撒けてオロオロしている新人を庇ってくれるような、素敵な男子に育つに違いない。
その有り余る体力と正義の心を、弱き者を守ることに使ってほしいものである。







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