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Electronicなトラックにコンプは必要か

Electronic musicにおいて、コンプレッサーがどこまで必要なのか?
バスやマスターに挿すコンプは、音圧感やまとまり感を出すために必要だが、各トラックにまで、コンプが必要なのか? 検証。

コンプの役割

1:ダイナミクスのコントロール(ピークを抑える、音量の均質化)
2:奥行きのコントロール
3:グルーヴのコントロール
4:圧縮された周波数帯域による音色の変化

これらは、ボーカルやギターなど、アナログ録音を整えるためには必要だが、サンプリング音源やソフトシンセは、すでにコントロールされており、コンプでもうひと手間かける必要がないのではないか、と思っている。実例とともに考えたい。

キック

キックはUVIのdrumdesignerを利用している。アタック部とボディ部の波形が選べて、それぞれのアタック、ディケイもコントロールできるので、コンプの出番はないように思える。
検証の結果、奥行きのコントロールで、コンプの出番。奥行きは、アタック後の音量が肝。キックについては、ファット(リリースやや長く、アタック後を持ち上げる)とタイト(アタック後、若干持ち上げてリリース短く)の2択となり、キックの形をコンプでヤスリがけする感覚。

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コンプは、4種類のタイプを切り替え可能なmaterial comp。

1:Modern=素材を選ぶことなく使用できるモダンな質感のコンプ。強くかけるとわずかな歪みを発生。
2:Luxe VCA=VCAコンプレッサーのモデリングで全タイプの中で一番クリア。 トランジェントに対するレスポンスが速くさまざまなソースに使用できる。

キックには上の2択。Modernはサンプリングっぽいキックで、VCAはシンセっぽいキック向き。
アタックは40msから下げて、リリースは150msから下げて調整。レシオは20:1から下げて調整。微妙に良くなったところがポイント。オートゲインにして、トラックフェーダーで音量補正しつつ作業。

material compは通常のパラメータに加え

*サイドチェインフィルター:20Hzから800Hzの間でゲインリダクションの検知から低域をスルー。帯域を狙い撃ち。
*Lookahead:アタックの検出漏れを回避するタイム(Off - 20ms)を調整。 設定した値のレイテンシー(0ms - 20ms)が発生。アタックをしっかり叩きたい時に。
○入力音レベル検出をPEAKタイプとRMSタイプの選択:PEAKタイプが瞬間的な大音量、RMSタイプがVUメーターのように人間の聴覚に近い。PEAK側は、アタック側のコントロールで、RMS側は、太さのコントロール重視か。基本50%にしている。
○Knee可変:アナログエミュレーション系は、Kneeが固定されており、それが特色の一端になっているが、調整可能。ハード寄りは「パツン」としたコンプ感が出る。
*レンジ:ゲインチェンジの上限を調整できる。
*ノイズ:英国製スタジオコンソールからサンプリングしたノイズを追加。

という機能が付いている。
タイプ選択→スレッショルド、レシオ選択→アタック、リリース選択→Knee、Peak・RMS選択→という流れで、キックの最適解を導き出せる。

スネア・クラップ・タム

コンプの効果が一番分かりやすいのは、中域の打楽器。音が前に出て聴き取りやすくなる。

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PEAK→RMSは、アタックの検知を優先するためPEAK側。
Kneeは、音を柔らかくしたいならソフトニー寄りに。
アタック、リリースタイムは仮でオートにしておいて、コンプの種類を選ぶ。固さを強調したいならModern。形を残したいならVCA(微妙なコントロール)。

60’s FET:FETコンプレッサーのモデリング。 「非常に早いアタックと粘り気のあるリリースが特徴」 アタックが早い(0.02ms - 0.8ms)ため、打楽器の細かいコントロールに適している。形は若干丸くなる。

TUBE:真空管コンプレッサーのモデリング。「通しただけでごくわずかな真空管の歪みを発生」形は丸くなる。

OPTO:オプティカルコンプレッサーのモデリング。 「オリジナルのハードウェア特有の暖かさと緩やかなアタック。 ボーカルやベースやバスに最適」とのことだが、アタックタイムを5msあたりで、ハードニー、高レシオにすると、パツンとした音が得られた。サチュレーション効果?

今回の実験は、ソロトラックと曲に混ぜながらを交互に繰り返して行ったが、単音で良くても、曲に混ぜると聴こえにくくなることも多く、コンプの効果というより、単に音が大きくなっているだけで、フェーダーで音量を調整すると、「地味な処理に聴こえていたほうが、実は音が立っていた」ということもしばしば。最初に柔か硬か、持っていく方向をはっきりさせる必要がある。なかなか、分かりやすい定石が見つからないが
ニー→コンプのタイプ選択→アタック・リリース調整という流れ。

ハイハット

余韻が長いハイハットは別として、細かいハイハットはFETが最適。アタックの細かい調整で音がコントロールできる。アタックタイムは0.02~0.8msという範囲なので、手探りの調整。リリースは100ms以下を手探り。Knee、Peakも微調整で音が変幻自在。レシオも最大から下げて探っていく。

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スペシャルセクションの3つの効果で、もうひと押し可能。
「Punch」VoosteQ独自の技術を駆使した機能で、入力信号を検出してより強いアタックを付加。 ボーカル、ドラム、ピアノなどに効果的。「Groove」VoosteQ独自の技術を駆使した機能で、入力信号を検出して最適なグルーヴを付加。マスター以外にドラムやギターにも効果的。
「Imager」低域に影響を与えず中域以上をステレオに広げる。
ハイハットへのコンプは、今回の大発見。

打楽器編終了。

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