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2020のElectronic music11枚

今年の11枚

選んでみました。ジャンル感のない音楽が好きです。

Pasocom Music Club / AMBIENCE

「アンビエントテクノ」という概念が、90年代にありました。いわゆるアンビエントというよりは、「リスニングテクノミュージック」だったと記憶しています。Aphex Twinの「SELECTED AMBIENT WORKS 85-92」のイメージで、「2」じゃない方です。このアルバムは、その香りがします。現代の「ジャンル」は、曲を探すための商品棚名という感じですが、当時は次々と出てくる新しいものに「名前を付けてやる!」という感じで、うまく付いていないなぁと思うものも多かったです。「アンビエントテクノ」も、定着していなかったように思います。このアルバムは商品棚に並ぶようなアルバムではないと思います。とても私的で、とても素敵です。


Oneohtrix point never / magic oneohtrix point never

「ひとつのラジオ局を聴くという体験を模した」アルバムとなっています。元々、リサイクルショップで購入したニューエイジのカセットテープを使って、コラージュ的なものを作ったいたOPNが、その名義の起源を見つめ直したということだそうです。そういった前提を踏まえずに聴くと、とてもフリーキーで、この新譜は何なんだという感じですが、メロディー的にグッと来るものも多く、音の処理も不思議な感じが満載で素晴らしい体験です。静と動、荒々しさと美しさの行き来が絶妙なんだと思います。ノスタルジックなんですが、故郷から異郷を懐かしむような感覚です。


THE TWILITE TONE / The Clearing

シンセとサンプリングの絶妙なバランスが好きです。ベースはMOOG一択のようで、アルバムを通しての曲の一体感もあります。サンプリングを核とした音楽でインストというのは、ボイスサンプルの使い方や上モノとして足す音のバランスが難しいと考えています。メロディー感が強すぎると、サンプル素材の雰囲気を壊してしまいます。そのサジ加減が適切で、あとは、PANでかなり振っているので、散らすことで邪魔していないのかもしれません。もっと、積極的にPANした方が格好いいのかもしれません。


machine drum/ A View of U

この人のアルバムは、毎回、その音の強度に驚かされます。キックやシンセの音が刺さるし、ベースが点ではなく、面で襲ってきます。音楽なんだけれど、音の波動で刺激することに重きをおいているのではないかと思います。KICKの音が、一応TRAPということなんだと思いますが、HIPHOPとTECHNOの香りが少しするのが好きです。様々なジャンルに接近して、その要素を取り込んでいるものの、どの作品からも、根の音響職人の部分が垣間見えて、追い続けています。


DJ Python / Mas Amable

NYで活躍するプロデューサーです。リズムは違いますが、ウワモノが前述の「アンビエントテクノ」で、好きになりました。調べてみたところ、私と音楽体験が同じでした。リズムはちょっとラテンな感じで、上モノとの温度差が面白いです。「リスニングテクノ」は、LOFI HIPHOPほど、BGMとしては機能しないと思いますが、歌ものほど主張してこないので、私としてはちょうど良くて好きです。


CLAP! CLAP! / Liquid Portraits 

ファースト・アルバム『Tayi Bebba』のローが聴いた民族ビートミュージックにびっくりさせられてから聴いています。サードアルバムの今作は、リスニング寄りになりました。とにかく、音の気持ちよさを理解しているなぁという印象で、多彩なリズム音のステレオ感が耳を刺激します。民族音楽のサンプリングは、時代をサンプリングするという概念と対になる場所をサンプリングするということだと考えます。私も、Falconの最初の音源として、UVI WORLD SUITEを手に入れましたが、主張が強いので使いこなせてはいません。


Lorenzo senni / scacco matto

Roland JP8080のSuper Sawを使った硬質なリスニングテクノです。今年はキックを使わず、エッジの利いた電子音でリズムを表現するという作品を耳にすることが多かったように感じます。リズム音のみならず、ピアノなどのいわゆる楽器音もほとんど出てこないアルバムですが、構造がPOPなのでシンプルな印象はありません。電子音は人間を思い起こさせないので、音楽そのものに入り込める気がしています。


Four tet / sixteen oceans

Fout tetは、ループ音楽の良さを見事に表現していると思います。反復しつつ飽きさせないというバランスがよく、それは細かく入っている音の効果が大きいと思います。TECHNOは、反復の中で時間の流れを感じるというところに面白さがあります。今作は少し時間の流れを止めるような曲もありますが、楽音とノイズの中間のような音で、反復を演出する技は、相変わらず心地良いです。


Caribou / suddenly 

歌をどこまで意識的に入れているのか、よく分かりませんが、インストとして聴いています。声が適度な装飾として機能しています。音の揺れ方が気持ちよく、突然の展開もあるので、のどかな気持ちになりかかるところで、動かされます。そういう計算の仕方が見事です。


Soela / Genuine Silk

ひとつひとつの音を味わうアルバムです。深い音の空間に、キックとハイハットの点が打たれる心地よさがあります。この手の楽曲はたくさんある気がしますが、このアルバムに心をつかまれました。音が適度に地味なのと、シンセの置き方が好きなんだと思います。


AUTECHRE / SIGN

メロディーやリズムという概念が伝統的なものであるということは理解しているつもりだが、この新作でも、まだ修行が足りないなぁと感じさせられました。記憶に残させないメロディーやリズムというか、ただ、その時間にだけ存在する音の塊を聴くという体験です。

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