見出し画像

20年前、胃ガン手術無事成功した話

20年前、夫が突然胃ガンを告げられて入院したその後です。

入院して2週間、夫は検査検査検査。それとガンが見つかるきっかけとなった腰痛がひどくて、ベッドで寝ていると痛いしとてもつらかったようでした。腰痛は、背骨がずれているのが原因でガンとは関係ないということでしたが、それはそれで本当に痛そうで検査をしながら整形外科にも通って、大変でした。

検査の間は、6人部屋でいろんな方がおられました。皆さん、ガン患者だったと記憶しています。手術が成功してもうすぐ退院という方やこれから手術の方、いろいろでした。ずっとおばあさんが横に付き添っておられるおじいさん。耳が遠いようで挨拶してもあまり聞こえておられないようでしたが、夜中に勝手にタクシーに乗っておうちに帰ってしまうのだと聞きました。昼の間、ずっと奥さんが付き添っておられるのだけれど、やはり家に帰りたいようでいくら看護婦さんや奥さんが「退院するまで勝手に帰ったらあかんよ。」と言っても、何日かすると皆が寝てる間に病院の下まで降りて、外に出てタクシーをつかまえて家に帰ってしまうということでした。夫の手術の前に退院されたので「おうちに帰れてよかったね。」と夫と話していました。

私は当時、パート勤めで夕方まで仕事をしてそのまま病院へ。面会時間が終わったら病院の近くのスーパーで買い物をしてそこからバスに乗って自宅へ帰る、という日々でした。夕方病院からみる夕暮れが印象的でした。あまり高い建物のない京都の市中でその病院は高くそびえたっている大病院だったのです。

毎日毎日、ただ「きっと元気になるだろう」と思って日々を過ごしていただけでした。細かいことは覚えていないのですが、とてもつまらない出来事は覚えていたりします。検査して他には特に問題なかったので、予定通り手術となりました。夫の胃ガンはわかりにくいタイプで進行が早いタイプなので胃を2/3切除しなければならないということでした。手術は無事終わりほっとしました。

「麻酔が覚める時にいてほしい」

夫から手術前にお願いがあると言われた言葉でした。麻酔が覚めるのがいつになるか大体の時間はわかるけど、はっきりとはわからないのでベッドの横でただただ座って待っていました。お昼ご飯だったか、夜ご飯だったか忘れましたが、食べていなかったので買ってあったお弁当だったかお寿司セットみたいなものだったかを食べていました。夫はまだ目が覚めず寝ているようでした。手術後すぐでしたが、4人部屋だったかで手術前からよく話しかけてくる方が来られました。10数年前に胃ガンで手術して治ったけど、また胃ガンで入院。再手術するという年配の方でした。いくつぐらいだったのかも忘れましたが60代ぐらいだったでしょうか。私が食べているのを見て、「手術して食べられへんもんからしたら横でそんなもん食べられたら余計苦しくなるわ」と言われました。

そんな言葉をかけられるとは思ってもいなかったのと、当時の私は今ほど図太くもなかったので

「・・・」 何も言えずただうつむいていました。

麻酔が覚めたら横にいて欲しいと言われたから、いつ目が覚めるかわからないから、絶対に目が覚めた時に横にいたいから・・・

急いで食べているのに、と思うと涙が出てきました。涙を見られないように食べている振りをして下を向いていました。

ただ言いたかっただけなのでしょう。その人は、言うだけ言って私の反応など気にせずすぐに立ち去りました。ほんとうにただつまらない出来事でした。こんなつまらないことは、しつこく覚えているものだなと思います。

食べ終わってそれからもしばらくひたすら待っていると、やがて夫が目を覚ましました。側にいることができてよかった。ただそれだけでした。後から聞くと、夫は麻酔から覚める時が一番苦しかったそうです。水の中でずっともがいているような感じで目を覚ましたいのに動くことができず、本当に苦しくて死んだ方がましなんじゃないかと思うほど苦しかったそうです。

「手術は無事成功しました。」

内科部長の夫のガンを発見してくれた主治医の先生も手術を担当してくれた外科のかばさんみたいな先生も嬉しそうに告げにきてくれました。かばさんドクターは、すごく腕がいいそうで夫の手術の跡も後から膿んだりすることもなくすごくきれいなものでした。胃を切除しているので、すぐにはあまり食べることはできない。少しずつ分割摂取しなければいけないということでした。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?