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ロマンと、クリームソーダがある夏。

冷たい飲み物が喉をすうっと癒す。

あつい暑い夏を感じる、今日この頃。


ぐいっと、冷えたものをいただきたい。

そう思って、いつもの喫茶店に寄り道。


「アイスコーヒーください。」

冒険はしない。ホットかアイスか変わるくらい。サイズは1番小さなもの。

アイスもトッピングしたいところ。
けれど、どうしても保守的に出てしまう。
後から冷えるのが気がかりで。


吸い込まれるようにふわふわの席につく。

ふうっと一息。アイスコーヒーを流し込む。

読みかけの本を開いて、文字に浸る。

誰にも邪魔されない、私だけの時間。


コロンコロン。

グラスに大粒の氷が当たる音がした。

おめかしをした女性がひとり席につく。

小柄な体に、腰は少し曲がっている。

その手には、大きな大きなメロンソーダ。
まん丸アイスがちょんと乗ったもの。

慣れた手つきで長いさじをとり、
アイスを掬って口に運ぶ。

きゅうっと体が小さくなる。


この感覚を知っている。
彼女は”美味しい”と表現している。


続いて、ハジける緑の炭酸をすすすと吸い込む。

ふうっと力が抜けて、ソファに溶けていく。



「ああ、いいな。」

と思った。


シャリっとした食感の残るアイスに、
シュワシュワが巡るメロンソーダ。

それも大きなサイズ。

隣にいるのは、若い高校生でもなければ、わんぱくな坊やでもない。

人生を何周もされたであろう、年配のマダム。

そびえ立つラージサイズを物ともせず、美味しそうに向かい合う姿が爽快で。

「ああ、夏を楽しんでおられる。」

と思った。


一方、こちらは保守的なもので。

いつもの一杯をシステマティックに選んでいた。

そこには大した感情はなくて。


隣のソーダをチラッと見ると、もう残り少ない。

これからやってくる夏、気づけば過ぎ去る夏。

溶けてしまうアイスを、ソーダに任せて、まろやかにする。

刺激をちょうど良く中和させる。



そんなことを考えながら、残り半分になったアイスコーヒーを流し込み

本に栞を挟んで、カバンにしまう。

店内を後にして体が少し軽くなったのを感じて、

今年の夏はうんと楽しもう、と思った。




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