長崎空港の話 ~壱岐に行きたかった話[2]~

 長崎空港は、長崎駅から2駅ほどの場所にある。
 さらに、長崎市の中心部からはバス1本でアクセス可能だ。

 嘘はついていない。

 私が住む福岡県最大の空港は、言わずもがな、福岡空港である。
この福岡空港、日本どころか世界でもトップクラスに都心部に近く、きわめて便利が良い。
 福岡市の中心駅にあたる博多駅からは地下鉄でたったの5分だ。市内最大の繁華街・天神からも10分で着く。地下鉄を降りてエスカレーターを上れば、手荷物検査場は目の前だ。条件が整えば、博多駅から7分程度で制限区域に到達できるし、降機から5分で地下鉄に乗れる。各方面へのバスも充実している。
 福岡の民は、この超絶便利な空港が当たり前だと思って育つので、各地に移住したり出かけたりした際に、空港から中心市街までの遠さに絶望する。リムジンバスで1時間など最早論外だと感じ、相当に都心に近く便利なはずの羽田空港でさえ、「東京駅まで遠いな」と思う始末だ。

 そんな福岡空港と長崎空港を、冗談半分で比較していて出てきたのが冒頭の話になる。

 福岡空港は、博多駅から2駅。地下鉄で2駅5分。
 長崎空港も、長崎駅から2駅。地下鉄でも在来線でもない。新幹線の2駅。(なおかつ駅から乗合タクシーを利用する必要がある)

 そういう話である。残念ながら、長崎空港は遠い。

 バス1本というのも、リムジンバスのことだ。40分~1時間ほどかかる。
 東京や関西の都市圏では馴染みが薄いかも知れないが、地方の空港は、アクセス鉄道があるのは稀で、大抵は中心市街まで唯一のアクセス手段として連絡バスが走っている。これをリムジンバスと呼ぶことが多い。そして残念なことに、ほとんどの空港は中心市街から遠い。
 だから、空港が多少遠くても、中心市街や中心駅からバス1本で行けるのは珍しいことではない。時間が掛かるのも珍しいことではないが。

 ちなみに、長崎駅から博多駅まで新幹線で1時間半くらいだから、自身の居住地と行先や時間帯、あるいは運賃のことを考えると、長崎県民であっても福岡空港を利用した方が良い場合もある。

 ただ、これは何も長崎空港が悪いわけじゃない。
 実際、多くの空港は中心市街から遠いし、それは正直、仕方がない。
 空港は土地が要る。長さ3kmもの滑走路を用意するには相当の敷地が必要で、それはもはや山中か海上にしか確保できそうにない。住宅地に近ければ騒音問題も発生する。ビルの高さ制限もかかる(空港が近い福岡市はかなりの範囲で高層ビルが建てられない)。
 そうした問題をクリアしようとすると、必然的に、空港は中心市街から遠くなってしまう。
 まあ、多少工夫の余地はあったにせよ。

 それに、その「不便さ」に、愛おしさを感じるわけだ。

 ともあれ、3月下旬の雨の日、私は長崎空港へと向かっていた。長崎市ではなく、空港の所在地・大村市へ。新幹線ではなく、特急から一風変わったローカル線に乗り換えて。

 ここを走っているやつが、ディーゼルカーというか、気動車とも電車とも呼べるような呼べないような、奇妙なイカ釣り漁船もどきなのだが、それはまたそのうち書くことにする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?