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不思議な窓

これは ぼくが 窓から見た風景の話
それは どこかわからないけれど
おそらく ヨーロッパのある所

石畳の坂を上って行くとある
4階建てのアパート
階段を上がって 1番上の部屋がぼくの家
部屋の窓からは アパートの前の広場が見える
広場を囲むように建っている 周りのアパートが見える
広場で遊ぶ 近所の子どもたち
花の手入れをしながら それを見ているおばあさん
ぼくも一緒によく遊んだ
とても楽しかった

ぼくは小さな子どもだった
襟のついた白いシャツに半ズボン サスペンダーをつけていた
両親と祖父と一緒に暮らしていた

家族みんなで食事をするのがとて楽しみだった
小さいぼくはテーブルのいつもの椅子に座り
足をブラブラさせて食事が始まるのを待っていた
とても幸せな毎日だった

次に思い出すのは もう少し大きくなったぼく
学生になり 上の学校に進学するために家を離れる
最後の日 ぼくは窓から外を眺めていた
小さい頃走り回った広場は狭く感じられた

両親と会えなくなり 家からも遠く離れた学校の寄宿舎で
ぼくは暮らした
ホームシックになったぼくは 窓から夜の星を眺めた
勉強は大変だったけど かけがいのない友人に会うことができた

学校を卒業して 働くようになったぼくはやがて結婚した
大きな家には住めなかったけれど
初めて小さな命を抱いたあの日
祝福してくれるように 窓から朝日が差し込んでいた

それから何年か経ち
詳しいことはわからないけれど
ネズミが運んだのか?
飲み水が汚染される流行り病で ぼくの家族は天国に行ってしまった

そして ぼくは今 病室のベッドで横たわっている
窓の外から 日差しが降りそそぎ
カーテンが風に揺れている
もう外を見ることはできない
きっと外では花が咲いているだろう
鳥の声が聞こえる
ゆっくりと時間が流れている

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