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マカロン少年体験記〜ファミレス編〜第13話

こちらは調理の好きな高校1年生男子マカロンのファミリーレストランでの接客アルバイト体験記。
マカロンとその仲間たちのお話です。
今回はパート主婦カステラのお話です。


アルバイトの帰り道コオロギの鳴き声が聞こえるようになりました。

コオロギはお客様と共にファミリーレストランに入って来ることもあります。人知れず入店し、どこかで鳴いています。
「あれ⁈コオロギが入ってきたのかしら?」
「もう秋なのね」
「秋のメニューが始まるのね」
コオロギには店の外に出て行ってもらわないといけないのですが、探しても見つかりません。

パート主婦のカステラは普段は深夜の時間に働いています。
夜、家で寝ていると夫のイビキがうるさくて眠れないので、夫が眠る頃出勤しています。

夜中のファミリーレストランはお客様の数は少ないですが、常連さんは多いです。
パソコンや本を持って来て勉強や仕事をしている人。
保育士さんでしょうか?2人で画用紙をたくさん出して切り抜いて何か作っています。
時間外にも頑張っているのですね。お疲れ様です。
そのような時は、食器を早めに下げて、テーブルが広く使えるようにします。
慌てたように入って来て
「とにかく人目につかない席にしてちょうだい」と言われる方もいます。
誰かに追われているのでしょうか?
個性的な常連さんが多いです。

常連さん、ではないのですが
たまに、誰もいないテーブルのベルが鳴ることがあります。
通路ではどのテーブルのベルが鳴ったのか掲示板に番号が出ます。
確かに番号は表示されています。
念のためスタッフ2人で見に行っても誰もいません。
周りの席にもお客様はいらっしゃいません。
電気系統の不具合だと思われます。

そのような席は番号が決まっています。
カステラの働く店では、そのような席が広い店内に2席ほどありました。ベルが鳴ると一応見に行きます。

カステラは幽霊は見たことがありません。
ですが、帰る前にトイレチェックに行った時は異常なく、お客様も帰ったのに、退勤しようとタイムカードの所にいましたら、突然トイレのドアがバタン‼︎と強く閉まった音が響いて、ドキドキしたことがあります。
そのような時は深く考えずにスルーします。

深夜はお客様は少ないですが、翌日の用意や油で汚れたキッチンの掃除など、通常業務と並行して幾つかの作業があります。

深夜にも、テイクアウトの注文や営業時間について電話がかかってくることがあります。
かかってきた電話にはなるべく早く出なければいけません。
一番困るのがイタズラ電話です。
無言電話や出ると切れてしまうもの。
あとは、女性スタッフが出ると
「お姉さん何色のパンツはいているの?」
というものです。
カステラは、そのよう電話の時は店長に代わってもらっていました。
店長が出ると無言で切れます。

同じような電話が何日も続くことがありました。
その日、退勤するまでの作業に追われていて、心に余裕のなかったカステラは、電話に出ると
「ねぇねぇお姉さん、何色のパンツはいているの?」
と言われたので
「あー私今日はいてないんですよねぇ」
と返しました。
相手は何やら慌てている様子
「パンツも買えないから時給のいいこんな時間に働いているんですよ」とカステラは言いました。
「本当にはいてないのか見に行くからな!」
と言われたので
「どうぞ」
と返しました。

その方が来店されたのかどうかわかりませんが、それ以後その電話がかかってくることはありませんでした。

時には相手が思ってもみないことを返すのもいいのかもしれません。

コオロギは今日も鳴いていました。
                                                      〜つづく〜


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