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マカロン少年体験記〜ファミレス編〜第16話

シリーズ構成ですが1話完結です。
こちらは調理の好きな高校1年生男子マカロンのファミリーレストランでの接客アルバイト体験記。
マカロンとその仲間たちのお話です。

<登場人物>
マカロン   ホールスタッフ
さくらもち  マカロンのクラスメイト
       ホールスタッフ
大福     キッチンスタッフ
ラスク店長
キッチンの開店準備スタッフ主婦

学校の懇談が終わると冬休みに入ります。
12月のシフトを出す前にラスク店長が
「クリスマスにデート行く子は休んでもいいよ。」
と言いました。
マカロンはもちろん出勤しています。
クリスマスディナーを食べに来られたお客様を席にご案内しています。

クリスマスディナーと言っても、ファミリーレストランにクリスマス特別メニューはありません。
強いていうなら、冬用の暖かメニューがあるくらいです。
それでも店内はにぎわっていました。

ベルで呼ばれてお客様の元に伺ったさくらもちは少し困惑していました。
テーブルでは向かい合わせに座っているカップルがテーブルの上で手を握り合っています。

「好きなもの食べていいよ。」
「どれにしよっかなー。たくさんあるから迷っちゃう。」
「あ、あのー、お決まりになったらもう一度こちらのベルを押していただけますか?」
さくらもちはテーブルに置かれているベルを差しました。
「いや、もう決まっているから。ちょっと待って。」
「えーどれにしよっかなー。迷っちゃう。」
あちこちで呼出のベルが鳴り、掲示板にはいくつも数字が並んでいます。
「だから、決まってから呼んでって言ったよね?」
幸せそうな人を見ると、心が捻くれてしまうさくらもちでした。

その頃キッチンでもてんてこまいです。
臼と杵で餅をつく人のように、息の合ったプレーで商品が次々と送り出されています。

あれをしながらこれをする、というのに慣れてきた大福ですが、目の前のことに精一杯なのは変わりありませんでした。

言い訳がましいのですが、冬季限定の鍋っぽいメニューは、キッチンのコンロの数が決まっているので、一度にたくさん注文が入ると、どうしても提供が遅れがちになってしまいます。
他のメニューが出る時にグツグツ煮立った状態で出せるようタイミングを見ながら作っています。

配膳スタッフも熱々の鍋を運んでいるのを見せて、注文がまだのお客様に「あれ、いいな」とおすすめメニューを食べてもらえるようにしています。
実際、注文伺いに行くと、隣席を見ながら
「あれと同じやつちょうだい」と言われる方もいらっしゃいます。
色々な戦略が動いています。

そして、新しい年を迎えます。
ラスク店長はここ何年かはいつも職場で新しい年を迎えていました。
ですが、働き方が変わり大晦日は店も休みになったので、久しぶりに家族と過ごせそうです。

さて、大晦日が休みだったので、キッチンの元旦の朝は機械の立ち上げなどバタバタしていました。
食材もいつもより多く納品されます。
学生たちは朝ゆっくりめのお昼前から出勤します。

朝イチの作業は主婦たちがしていました。
元旦朝11時オープンのファミリーレストラン駐車場には、初詣の帰りの方でしょうか?何台か車が停まっています。

オープン10分前に入店のチャイム音が聞こえてきました。
「いらっしゃいませ。」も聞こえてきます。
キッチンスタッフは焦ります。
まだ10分もあるのに。もっと仕込みしたいのに。
「ちょっと、なぜ開店前に入れるのよ。」
キッチンスタッフはホールスタッフに声をかけます。
「勝手に入って来たのよ。」
「勝手に入って来るわけないでしょ。鍵かかってるでしょ。」
「外の掃除行ったから開いてるのよ。」
ピンポーン!
ちょうどその時客席のベルがなりました。
「押すなー!!」
キッチンスタッフは叫びました。

キッチンに伝票が出てきました。
ホールスタッフは言いました。
「作るのは11時になってからでいいから、先に注文しとくって。」
今日も忙しくなりそうです。
            〜つづく〜

最後まで読んでくださりありがとうございました😊




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