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ちるの日記vol.3 ”激辛流ヴェルディサポーター”の話

昨日のルヴァンカップは、現地に行かずにLeminoの配信を追っかけ再生した。そりゃカップ戦とはいえ負けは負け、悔しいのは間違いないけど、大幅にメンバーを入れ替えた中でも、今年のチームらしいリバウンドメンタリティを発揮したことは、今後に向けて明るい材料になると思う。齋藤功佑はいつも熱く、かつ楽しそうにサッカーをするな。綱島のパフォーマンスが”掴みつつある男”のそれで、見ていてワクワクする。深澤のあんなにきれいな左サイドからの折り返しは初めて見たかも。丈偉はやらかしてしまったけど、ミドルパスの球筋の美しさには惚れ惚れした。若き原石たちがJ1の荒波にもまれ、確かに輝きを増しつつある。この先彼らをどう磨きあげていくか、城福さんの手腕に期待。一方、山越の吹っ切れなさと、ベンチにも入れなかった慶人がとにかく心配。どちらも貴重なマルチロール、薄い選手層を支えてくれる頼もしい存在であってもらわなきゃ困るのだ。

「スタジアムでタオマフを盗まれてしまった」という悲しいポストを見た。かつてのヴェルディだったらちょっと考えにくい—だってあの頃スタジアムに来るようなやつらは少なくともMJS様のタオマフを全員持っていたからだ—出来事な気もするが、ポスト主の方にとっては、せっかくの観戦がさぞ落胆の思い出になってしまっただろう、と見ているだけのこっちまでどよんとした。

自分もこんな記事を過去に書いたくらいなので、

タオマフやリストバンドやフラッグは”たかが”応援グッズなんかじゃない、自分の戦友かのように思い出が詰まった代物なのだ、ということはよく知っている。仮に盗まれたなら、そうした行為をはたらいた人間は猛省すべきだし、もしどこかに行ってしまっただけなのなら、持ち主の方のもとに戻ることを切に願う。
「ヴェルディサポーターはみんないい人」って、甘い妄言であろうと僕は信じていたいので、盗みに限らず人として恥ずべき行為はスタジアムでは慎んでほしいし、自分も気をつけなきゃなって思った。

「同じサポだろうと、別に善人ばかりではない」って話で、思い出したことがあった。
ちょっと前、僕はツイッターのブロックリストを整理していた。僕は別にツイッターガチ勢ではないので、ブロックしてるアカウントはそんなに多くない。あからさまなスパムと移籍噂アカウントと情報商材系と選手botとカップルチャンネルやってるYoutuber全般と坊主とガレソと暇空茜くらいだ。まあまあおるな。選手botが特に苦手だった。

その中で、ふと目にとまったブロック済みアカウントがあった。アカウント名をここに記すのは控えるが、「激辛流ヴェルディサポーター」といえば、ピンとくるヴェルディサポは少なくないだろう。

もう10年近く前からだろうか。そのアカウントは、とにかく過激な言葉を使って、ヴェルディの選手や監督やフロント、そしてサポーターをのべつ幕なしに批判していた。たとえ内容自体は頷けなくはないものだったとしても(僕もどちらかというと斜に構えて批判的なものの見方をしがちな人間ではある)、思わず目をふさぎたくなるレベルの口汚さ、辛口と自称するのもおこがましい単なる暴言の数々に、僕はとにかく辟易してしまった。なにかを批判するときには、それなりのウィット(自戒を込めて言うが、本人にとって“ユーモア”だと思っているものが、かえって火に油を注ぐこともあるので、批判に添える際は注意せねばならない)を利かせる、もしくは返り討ちになってもよいと覚悟するくらいの真摯さが必要なのだと、反面教師にした存在だった。ヴェルディサポーターのアカウントはよっぽどなにかない限りブロックしたりしないけど、彼(彼女かもしれないが)はそういやずっとブロックリストに入ったままだった。

あれから月日は流れ、元号も平成から令和に変わり、ヴェルディもJ1にあがった。そんな今でもなお、このアカウントは狂ったようになにかを批判しているのだろうか。その存在すらすっかり忘れていた僕は、ほんの少しの懐かしさと好奇心にかられ、ブロックを解除し、彼のポストを見た。

彼は2021年以降、ほぼ投稿をやめていた。そりゃあれだけの汚言を吐き続ける行為、どこかでやめなきゃ本人の神経もすり減っていただろう。
ただ、よく見ると、ヴェルディがJ1昇格を決めたあのプレーオフの日、彼はおよそ1年ぶりにこんなことをつぶやいていた。


かつてのアカウントの姿からは想像もできないような、穏やかで、それでいて昇格に対する期待と不安を正直に吐露した文面に、僕は不覚にもちょっとほろりとしてしまった。彼にも人の心はあったのだな、いや、あの日あの試合終了の笛が鳴ったときは、感極まった全てのヴェルディサポーターが、妄言でもなんでもなく「善人」になった瞬間だったのかもなあなんて、数カ月前の記憶に思いを馳せた。

こんなアカウントから温かい気持ちをもらえる日が来るなんて思わなかった。長くサポをやっていると、こんな意外な形で感情を揺さぶられることがあるんだなあ。僕はちょっとした感慨に浸りながら、そのアカウントを再びブロックし、ツイッターを閉じた。


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