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子どもの頃の話

 私は関東の田舎で生まれ育ちました。
 家族は8人と猫1匹。
 父母、父方の祖父母、兄が2人に妹が1人。

 実家は昔ながらの土地持ちで、裕福とまでは言いませんが、不自由のない暮らしをさせてもらいました。
 父は会社員をしながら、休日は稲作をする兼業農家で、母は採れたお米の精米や発送をしたりしながら専業主婦をしていました。
 
 昔ながらの家のしきたり等の窮屈さ、生きづらさ等はありつつも、穏やかに生活していたのですが、それが音をたてて崩れ始めました。
 私の18歳の誕生日でした。
 
 私はふて腐れていました。
 2ヶ月前、二十歳になる兄の誕生日は盛大にお祝いしたのに、私の誕生日はいつも通り変わらない日だったからです。
 
 兄は農家の長男で、大切に大切に育てられていました。不妊治療の末にできた子というのも大きかったのかもしれません。でもそんなことは私には関係なかったし、私は兄妹全員を同じように大切にして欲しいという気持ちがあったのだと思います。

 「なんでお兄ちゃんはちゃんとお祝いするのに、私はいつも通りなの!?」
母に当たり散らし、夕飯も食べずに部屋に引きこもっていました。
 夕飯は私の好きなちらし寿司とチョコケーキが準備されていました。
 
 次の日の朝、母が病院に運ばれたことを知りました。母は癌でした。



 自分で書いていても作り話のようだなと思います。作り話であって欲しいと10年近くたった今でも思います。
 
 
 母はあの頃どんなことを考えていたのだろう。
 私はどうすればよかったのだろう。
 時を戻せるのなら。
 どうにもならないことなのに、色々な言葉が今でも私の頭の中を巡っています。

 
 ママ、ごめんなさい
 今日もママに会いたいです


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